アクセルスナイプ
「ふむ……この一件とシャロは関わりがある様だな」
「私もですか?」
「なんとなく予感染みた物はあるんだろ?」
店主の疑問にシャロさんは頷いた。
「さて、話を戻すか。そうだな……シャロを拾った時の事は話せるようだから答えるとしよう」
店主はそう言って説明を始めた。
肉屋の店主は商品の調達に坑道に住む魔物を退治に出かけていたそうだ。
元々、何か強力な存在と契約していた店主はある意味、導かれたのだとも言っている。
で、その契約相手に頼まれた通り、坑道の奥であの聖水晶のある洞窟へ辿り着いた。
そこで見たのは聖水晶の中に閉じ込められた少女だったそうだ。
「少女……?」
俺はシャロさんに目を向ける。
すると店主は頷いた。
「俺が近づくと聖水晶は砕け散り、シャルロット、お前が出てきた。息をしていて驚いたぞ」
「私が、あそこに……?」
「ああ、後はまるで駄賃かのように俺に持って行けとばかりにこの欠片とお前を預けられた」
それからはシャロさんの記憶通りって事か……。
「要するに招かれたって事だろう。俺も、お前等も、だ」
「な、なるほど……」
「俺から話せる事はこのくらいが限度だ。他に何かあるか?」
「……いえ」
そう言って店主は店のカウンターの方へと行ってしまった。
俺達はそれから少しの間、茫然とただ座っていることしか出来なかった。
シャロさんもエクスチェンジに関わる事件の関係者だと言う事。
そしてあの場所は俺の記憶とも深い関わりがある。
だけど真実には辿りつけない。
とても歯がゆい。
「店長は……私の事を頼まれたから、預かっていたのでしょうか?」
シャロさんが震える様な口調で俺に尋ねる。
安易に甘い事を言っても良い事は無い。
だけど、と思って俺はシャロさんの手を握る。
「身内でも無い人の面倒を見るのは容易い事じゃないよ。俺が野宿をしようとしている時もシャロさんの頼みを聞いてくれたし、無愛想だけど俺は楽しげにしている様に見えたよ」
シャロさんと良い雰囲気になりそうになると殺気を放っている様に見えたしね。
今も俺がシャロさんの手を握っていると遠くから殺気を武器の様に俺にぶつけて来てるし。
なんだかんだで親心みたいなモノを抱いているのかもしれない。
「不器用な人のはわかるでしょ?」
「はい……」
「本当はどうかは分からないけど、頼まれたからだけじゃないと。大切な家族とか、そんな感情がある様に俺は感じたよ」
「……」
シャロさんは若干、瞳に涙を浮かべて店主の方へと視線を向ける。
「ヒロさん、ありがとうございます」
そう、シャロさんは涙を流しながら礼を述べた。
「店長の話を纏めると……ヒロさんと私に何らかの接点があるって事で、良いのでしょうか?」
「おそらくね。とりあえず、俺はこれからも冒険者になる為にがんばろうと思ってるよ」
「私も、自身の謎を解くためには強くなるのが良いんだと確信しました。改めてよろしくお願いします」
「こちらこそ」
そんな訳で、その日の狩りは終わり、これからの方針が大分固まってきたのだった。
まあ、それから二週間くらいはシャロさんやマリウス達に冒険に誘われたり村で仕事をしていたりと目まぐるしく時間は過ぎて行った。
炭鉱での仕事は中々にハードだったけどさ。
手に入った鉱石を取引に使って皮鎧を強化してもらった。
内側に鉄板を敷いて貰って防御力を引きあげた感じだ。
で、シャロさんに作ってもらったダリアパープルマジックスパイダーの糸で作った布地を使用して魔法防御も引き上げ済み。
中々な鎧になったと思う。
既視感頼りで魔物を倒してサクサクとLvを上げている。
魔石である程度、お金を集めるのも重要だけど契約相手を強くして能力の底上げって言うのにも使えるので、半々の割合でガラコロンペンギンに献上し、能力の引き上げもした。
その成果がこれだ。
中藤洋 Lv15 コロンペンギン Lv17
装備品
ヘルロードスピア
???の剣
ヘルロードキャタピラーの皮鎧。
ガラコロンペンギン Lv17 25%
特性 水中適正(中) 船上戦闘技能 初級剣修練 ???の眷属
技能 スラッシュ ステップ ダッシュ アクアショット バッシュ アクセルスナイプ
アクセルスナイプは鋭い強力な突きを放つ技だ。
ペンギンで例えるならくちばしで突撃って感じかな?
大分強くなってきたなぁ……。
シャロさんはLv14まで上がったらしい。
ダリアパープルスパイダーの方は十分に高いのでLv上昇はあまりしていないそうだけど。
「思ったよりも上がりが早いですね」
「そう、だね」
俺の既視感違いだろうか? 手に入る経験値が多くて成長が早い。
俺自身が原因かガラコロンペンギンの???の眷属という謎特性のお陰か上がりが早いと感じる。
そろそろ少しは背伸びすべきかな?
夕方、浜辺でガラコロンペンギンに餌やりをしに行った。
「キュッキュー!」
俺がメキメキとLvが上がるのに合わせてコロンペンギンも強くなり、自然と狩りが上手くなって仲間内での狩猟でも頭角を現している感じだ。
コロニー内での今までの様に輪からはみ出す感じでは無くなっているみたいだ。
「キュー!」
とはいえ、顔を合わせると親しげに近づいてくるのは変わらない。
人間を怖がらない性格だもんな。
「キュッキュー!」
なんか踊りを最近覚えたのかステップをしながらくるくると回転してる。
ポーチでもプレゼントするか?
「キュー!」
「はいはい」
「おや? そこに居るのは……ヒロ」
声の方角に振り向くと、そこにはマリウスとリリカさんが近づいて来る。
ガラコロンペンギンは人の気配を察して、海へと行ってしまった。
「シャルロットさんと一緒の冒険は順調らしいね。噂を聞くよ」
「はい。マリウスさん達は?」
「マリウスで良いよ。僕は漁村から離れた遠洋の小島にある島のダンジョンの調査と見回り……入口の警備もしてる所だね」
「妙な冒険者とかに注意しないと行けない仕事ね。身の程知らずでダンジョンに挑んで帰ってこない子多いのよ」
ダンジョンの見張りをしてるのか……不相応な挑戦者が入らないように見張るのも仕事なんだよね。
「噂じゃムーンライオを一人で採って来たんだって? 凄いな。僕でも採取するのは厳しいと言うのに……」
「ええ……」
俺とマリウスとの間に微妙な空気が流れた様な気はする。
「いろんな意味で逞しいわよね。目に見えて成長しているのが分かるわ」
「これくらいしないと早く装備を揃える事が出来ませんからね」
「ははは、お金を溜める事は大事かもしれないけど、僕達冒険者は体が資本なんだから無理はあんまりしない方が良いよ?」
「寝る場所が無い訳じゃないですし、睡眠時間は十分確保してますから無茶には入りませんよ」
「そう言いたい訳じゃ無く……あんまり無茶は感心しないってことさ」
「あはは……返す言葉も無いですね」
うん。知識を元に何処かの動画みたいな金稼ぎをしてしまった。
装備も潤沢に成りつつある。
「冒険者の保護下に無くて、それだけ出来れば十分だよ。見た所……ヒロは見込みがありそうだからね。金や装備を僕が出してあげようか?」
「いや、さすがにそこまで甘える訳には行きませんよ」
「そう? 個人的には君をスカウトしたいのだけどなーあの子達と仲良く出来そうだし、成長が目覚ましく見えるんだ。与えた金銭の分だけ伸びる様な……ね」
マリウスがあの子達と呼ぶのはきっとミトラ達の事だろう。
うーん……マリウスの保護下に入るメリットを考えてみよう。
悪い話では無い。
マリウスの指示を受けながら冒険者としてミトラ達と活動して行くのだろう。
効率良く強くなれる。
だけど……強くなる半面、マリウスの指示に従って行動しなきゃ行けなくなるリスクが付きまとう。
つまり自由に行動しづらい。
いつかは自分探しをしなくちゃいけない身としては、自由行動が出来ないのはきついか。
なんて考えていると、マリウスは苦笑しながら俺が困らない様にと言った様子で軽く肩を叩く。
「マリウスは随分とヒロを買っているのね」
「そりゃあね。リリカもそう思わない? 纏う空気が他の子と随分と違うじゃないか」
「……否定はしないわ。けど、マリウスの方が有能だって私は信じている」
「えーっと」
惚気をするなら他所でお願いしたい。
「そんな難しい顔をしないで……リリカ、ヒロが困ってるじゃないか」
「はいはい」
「は、はあ……」
見た所、俺よりも同年代にしか見えないのに、大人な人物に見えてしまうなぁ。
「あの子達もしばらくはこの村近隣で行動するから、気軽に誘ってやって欲しい。僕の話を受けるかはそれからでも良いんじゃないかな?」
「そ、そうですね」
「じゃ、僕はそろそろ宿に戻るかな。無茶をしない様に、頑張って」
と、言ってマリウスは行ってしまった。
なんて話をして、その日は雑談をしつつ過ぎて行った。
まさか翌日……あんな出来事に遭遇するなんて、夢にも思わなかった。




