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聖水晶

「綺麗……」

「そうだね」


 この水晶、聖水晶じゃないかな?

 かなり高純度の魔力的磁場を感じる。

 清らかな気配に魔物は近寄れない聖域となっている。

 ここの泉……聖水としても使えるくらい、力が宿っている。

 この聖水晶の鉱脈を全部採掘したら一攫千金も夢じゃない。


「凄く大きな聖水晶……」


 シャロさんは泉の上に伸びる聖水晶に近づいて見上げる。

 するとシャロさんの接近を感知したかのように聖水晶が点滅を繰り返した。

 何か危険を察知したのか?


 こう言った聖域には危険な魔物が生息している危険性もある。

 呼び寄せているとしたら……と言う所で何か記憶がチラついて浮かぶ。

 ぼんやりと、誰だか分からない人物とシャロさんの様に一緒に……来た様な、そんな映像が浮かんだ。


 どんな姿か分からない。

 それでも俺は、何か心躍る出来事があったような、そんな記憶が流れ込んで来た。

 辺りを再確認……何か無いか見る。

 俺達が来た入り口以外にも道らしき物が何本もありそうに見える。


「う……ここ……」


 振りかえるシャロさんは軽く頭を抱えてうずくまった。


「だ、大丈夫?」

「大丈夫、です……ですけど、その……ここは来た覚えがあるみたいです。ぼんやりと店長が私を抱きかかえてくれた記憶が浮かんできました」

「……もしかして、ここで店長はシャロさんを見つけたのかもしれないね」

「かもしれません。それと……ここの水晶は採らずに、内緒に出来ないでしょうか?」


 俺はシャロさんの提案に頷く。

 何だろう。

 なんとなくだけどここは侵してはいけない場所なんだと感じる。

 こう、いつものデジャブがそう言っているんだ。


「うん。そうだね。幾ら俺達がお金に困っているからと言って、こんな幻想的な場所を壊して良い訳は無いよね」

「ありがとうございます。さあ……早く出ましょう」


 そう言って、外に出る。

 魔力的磁場に当てられたのか、少し頭痛がする。

 早めに帰るべきだろう。


 そう思って立ち去ろうとした時、足元から聖水晶が生え、淡く光って砕け散って三つ程、二つ欠片が残る。

 そして……一つの大きな聖水晶からは一振りの剣が出てきた。


 ???の剣 付与効果 ???


 なんの効果を持っているのか分からない。

 俺の魔力が足らない所為だろう。

 ただ……手に取ると不思議な感じで手に吸いつく。

 まるで持って行けと言うかのように。


 シャロさんと視線で合図すると、頷かれる。

 俺は欠片と剣を拾い……その場を後にしたのだった。



 俺とシャロさんはその後は無言で山を降りた。

 やがて村への帰り道でシャロさんは口を開く。


「凄く幻想的な場所でしたね」

「そう……だね」

「あそこは……何なのでしょうか」

「さあ……」


 俺の記憶にもある不可解な場所としか言いようがない。

 懐かしくもあり、不思議な場所。

 重要な場所なのはわかる。

 既視感も大切な場所なんだと伝えて来る。

 安易に踏み入れて良い場所じゃないのかもしれない。


「何か重要な場所なのかもしれないね」

「ですね」

「肉屋の店主に聞いてみようか?」

「はい……是非」


 とは言え、店主に聞く前に分かった事がある。

 まずは、あの場所に俺は行った事があるのかもしれない。

 次に誰か仲間と一緒に来た事があって、その時に何か起こっている。

 一体……あそこは何なのだろう。

 ふと山の方に目を向ける。

 人を寄せ付けないとばかりに山頂付近は雲が掛っている。

 けど、ぼんやりとだけど雲の先を知っている様な……そんな気がした。


 

「ただいま帰りました」

「ただいまです」


 肉屋に帰ると店番をしていた店主がチラッとこっちに視線を向ける。


「ああ……」


 相変わらず無愛想な反応だ。

 山での出来事が無ければ日常の一コマで片付けられたかもしれない。


「今日……山の迷い道まで出かけてきました」

「そうか」


 シャロさんの言葉に肉屋の店主は別に興味ないとばかりの反応を見せる。

 まあ、そこまで驚異となる魔物は今の所報告されていないからかもしれない。


「そこで……水晶の鉱脈と泉のある洞窟を発見しましたよ」


 と、シャロさんが呟いた直後、店主がクワっと目を見開いてこっちを見た。

 うわ! 何か迫力あって怖いな。

 証拠とばかりにシャロさんは水晶の欠片を取り出して見せる。


「……少しは話をすべきか」


 すると店主は普段の様子に戻って店の奥へ背を向けた。


「晩にでも話すのも良いが、焦らして雑な仕事をされちゃ叶わん。一旦店を閉めておけ」

「は、はい」


 俺達は店を一旦閉め、扉に閉店の看板を掛けておく。

 店主の方は一旦自室に戻っていたのか、家の奥のキッチンに新たに入ってきた所に俺達が鉢合わせする。


「まあ、お前等……座れ」


 言われるまま、椅子に腰かけると店長はテーブルに聖水晶の欠片をトンと置いて見せる。

 俺達が持っている物と全く同じ物だ。


「まさかこんなにも早くあそこに行くとはな……迷い道側からも行く事が出来るとは思っていたが……」

「ヒロさんが見つけたんです」


 店主が俺の方をギロっとみた。

 とりあえず苦笑いしておこうかな。


「迷い道側からも、と言う事は別の行き方があるんですよね?」


 俺の問いに店主は頷く。


「ああ、坑道と繋がっているダンジョン側からも行ける。凶悪な魔物の住処になっているから相当の腕前が無いと危ないがな。俺の見立てだと他にも似た様な場所があるんじゃないかとは思うがな」


 ふむふむ……そっちからも行く手段がある訳ね。

 俺自身も知らないのかよくわからない。

 おそらく店主はあの場所に関してシャロさんが質問する時の覚悟を持っていたんだろう。

 だけどそれは予定よりも早かったって事だな。


「シャロ、まずは何から聞きたい?」

「えっと……あの場所は一体何なんですか?」

「それは、無理だな。話せないし俺もそこまで詳しく知らない」


 話せない、と言う所に俺は心当たりがある。

 契約だ。何かしらの契約の所為で喋る事を封じている場合が存在する。

 それに近い何かがあるんだろう。


「ただ、少なくとも悪しき場所では無いのは、行ったお前がわかっているはずだ」

「……そうですか」


 何も話す気は無いと言ってる様な物だぞ。


「山の上にある場所と関わりのある、力の流れか何かだとは思いますが……」


 俺自身も疑問に思う言葉が、俺の口から零れる。

 店主が俺の方を見て目を細めた。


「何故、山頂に関わりがあると思った?」

「え? いや、なんとなくそうなんじゃないかなー? って」

「……まあ、その欠片を持っているって事はお前が悪い奴ではないと言うのは確かなんだろうがな」


 そう言いながら店主は俺を睨みつける。

 もはや隠している必要は、無いか。


「それは――」

「待て……俺の契約相手が知る必要がないと注意してきやがる。聞くと厄介な問題に巻き込まれるとさ」


 ったく、面倒な事をと店主が呟いている。


「お前が何を背負っているか俺は聞く気は無い。けれど、お前自身の秘密は安易に話して良い問題じゃないそうだ」

「は、はあ……」


 この肉屋、一体どんな存在と契約しているんだ?

 ここで注意してくるとか俺の内情を知っているとしか言いようがないぞ。


「ただ、お前の目的を達成するためには最低限、強さが必要だから十分に強くなれと言付けられたそうだ」

「それはどういう……」

「あ? 安易に話すと大切な瓶の中身をすり替えられる危険性があるって注意してきたが、どういう意味だ?」


 !?

 大切な瓶の中身をすり替えられる。

 これは俺にだけ伝わる様にした例えだ。

 瓶は器、中身は魂だとするならば俺の状態を差しているのは間違いない。


 エクスチェンジの事を知っている!?

 この事実を仲間や信頼できる人に話すな、と肉屋の店主が契約している相手が注意しているんだ。

 もしもあの危険なプログラムに反抗する存在が居た場合、開発者に該当する者が何をするのか考えるのは容易い。


 ある日、信頼できる仲間が見知らぬ他人とすり替わっていたら、どうしたら良い?

 手立てが出来るまでは安易に話して良い問題じゃないって事なんだろう。


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気になる点 第1節  振りかえるシャロさんは軽く頭を抱えてうずくまった。 →振り返ると →うずくまっていた  そう思って立ち去ろうとした時、足元から聖水晶が生え、淡く光って砕け散って三つ程、二つ欠…
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