迷い道
「こんな所かな? 後はー……」
丘から辺りを見渡す。街道が続いていているけど、隣町はまだまだ遠い。
少し脇道を逸れた所に坑道がある山が近くにある。
「折角だしついでに鉱山の方へ行ってみようか」
明日は鉱山で鉱石掘りの仕事をする事をする予定なのでついでに行くのは悪くない。
この前の騒動で魔物も大分駆逐されてしまっているから危険な事はまず無いだろう。
何か良さそうな鉱石でも事前に見つけれたら儲けものだ。
「良いですね」
シャロさんの了承は得たし、鉱山の方へと向かう。
道中でロードキャタピラーなどの雑魚魔物と遭遇したけれど、アッサリと仕留めて行く。
小型なのが多い。何だかんだ言って冒険者や兵士に討伐された後だからだろう。
コクーンクラスはまだ増えていないのか見かけない。
敵意がある個体も少なめだ。
安全なのは良い事なのかな?
そんな訳で割とピクニック感覚で歩いて行くと、鉱山の入り口が見えてきた。
コジュ鉱山だ。
ヘルロードキャタピラーはここの魔物の巣を根城にしていたんだっけ。
炭鉱夫達が荷車に掘りだした鉱石等を積みこんでいる。
「お? そこにいるのは肉屋コンビじゃないか」
武器屋に降ろしている炭鉱夫が俺達を見つけて声を掛けて来る。
あなた達も俺達を肉屋コンビと呼ぶのか。
それ、定着しているの?
「あの……勝手にチーム名が周知の事実にされているのは何か意味があるのですか?」
既に村では俺とシャロさんが二人でいると肉屋コンビと呼ぶような認識になっているのだろうか?
「ま、あの無愛想の所に上がり込んでいる二人と話していたら自然とな」
「嫌ではないですけど……複雑な心境ですね」
シャロさんも俺と同じ感覚なのだろう。
苦笑いをしてる。
「で、肉屋コンビがこんな所に何の用なんだ? 仕事は明日からだろ?」
「魔物がいない今の内に散策に来た……じゃダメですか?」
「いいや? 今の所は平和だし、危険たって魔物の巣でも突かねえと問題は無いしな」
そうだろうとは思った。
下見とばかりにこの辺りまでは来た事あるし。
で、俺は鉱山の方を見る。
切り崩した岩肌に無数の穴とレールが敷かれている。
鉱山前の看板には掘り進めている場所の地図が黒板で書かれているっぽい。
結構深い所まで掘られているみたいだなぁ。
確かここの鉱山で採れるのは銅と鉄、それと霊石と呼ばれる魔法効果のある鉱石だっけ?
後は聖水晶の鉱脈が走っていた気がする。
聖水晶が何に使うのかはフッと出て来ないけど、確かここは良質の鉄鉱石が採掘出来たはずだ。
「ま、鉱石以外何にも無いけど、ゆっくりしていけ」
「はーい」
シャロさんにだけ言う所にやはり可愛いは正義なんだろうなと実感させてくれるぜ。
明日の仕事のブラック具合をヒシヒシと感じる。
今の内にLvを上げておいた方が良いかもしれない。
「後はどうしましょうか? 帰ります?」
「んー……ついでに山の奥の方を少し行ってみようか」
今の俺達ならたぶん、大丈夫なはず。
なんとなくの知識で割と倒すのに良さそうな魔物が居た気がするんだ。
数も少ない今の内に戦って経験値を稼ぐのは悪くない。
「わかりました」
という訳で坑道から少し離れて山を登って行く。
地味に傾斜が厳しくて道が徐々にけもの道になってきた気がする。
山の上は岩肌が露出していて、険しい山を彷彿とさせる。
むやみに登ったら遭難しそう。
それなりに高い山みたいだ。
山頂は……雲が掛っていて見えないな。
「やはり魔物は少ないみたいですね」
「そうだね」
スパイクフッドと言う足が棘になっているネズミ型の魔物と、渓流地帯にマッドスラッグがいる位で魔物に遭遇する事は少ない。
良い感じの経験値にはなってくれている。
なんて感じに山道を歩いて行くと立て札があるのを発見。
「えー……っと、この先、迷い道あり」
迷い道って言うのは……迷いの森と表現したらわかるかな?
魔法使いとかが地域に魔法を施したりして侵入者を遠ざける仕掛けが施されている。
空間がねじれているのか、正しい道順で行かないと入口に戻ってきてしまう。
不用意な冒険者等の侵入を遮っているんだろう。
確か……村近隣にある狩り場の一つだっけ、ここは。
割と安全だった様な気がする。
「あ、人がいますね」
武具を固めた四人組が迷い道へと歩いて行く姿が見えた。
「まあ、上手く使えば迷い道も良い狩り場になるんだよね」
「そうでしたね」
元々魔力的磁場が濃い場所に設置されるからか、もしくは空間が歪んでいる所為か迷い道は魔物の出現頻度が高くなる。
間違った道でも魔物目当ての者達にとってはダンジョンよりも効率的な場所なんだ。
もちろん……ダンジョンに到着してしまう可能性はゼロじゃないけど、しっかりとした道筋を歩いていても一定の強さや資格、装備品が無いと辿りつけない様にしてあったりする。
俺達の前にある迷い道は、国が支給するアクセサリーか何かが無いと辿りつけないんじゃないかな?
ここの迷い道は……うん。
少しばかり背伸びになるかもしれないけど、シャロさんが居ればどうにかなる。
ピエロクロウとオパールオニオンって魔物……後はロードキャタピラーとコクーンが出て来るはず。
前者二匹は魔法に弱めで、火に弱い。後者は雑魚になりつつある。
「じゃあ挑んでみようか。帰り時間を考えたらあんまり居られないけど」
「はい」
シャロさんに確認を取って俺達は迷い道に足を運んで行った。
霧が濃い山道って感じなのは変わらない。
ただ、定期的に三差路や十字路にぶつかる。
これが迷い道って奴だ。
後は何度か外に出たっけ。
まあ、道中は読み通り苦戦は無かった。
ピエロクロウとオパールオニオンも楽に処理で来たし。
「今夜は豪勢な食事に出来そうだね」
「えっと……そうですね」
肉屋で支給される食事や酒場でのメニューにある食材が混じっているからか、シャロさんの返事が若干曖昧だ。
良いじゃん。食料調達は重要だよ。
まあ、二人揃って解体が出来るからこそなんだけどね。
冒険者なら最低限、捌き方くらいは理解しているはずなのにやりたがらない人もそこそこいる。
俺とシャロさんは揃って肉屋で仕事をしている訳で、苦もなくやってる感じ。
……魔物退治をしてLv上げに来てるはずなのに食い物目当てに探索してないか?
ヤバイ、生半可にサバイバルが出来る二人だから目的を失いかねない。
まあ、俺だけかもしれないけど。
「後何回か外に出たら帰りましょう」
「そうだね」
と、話をした所でフッと何か心当たりが浮かんでくる。
「こっちに行ってみよう」
「え? わかりましたけど……どうしたんですか?」
「なんとなくね。ダンジョンの方に行っちゃったらすぐに帰れば良いよね」
シャロさんが首を傾げながら俺の後を着いて来る。
三差路を右……十字路を直進……次の三差路を左……左……真直ぐ、右……。
「?」
「で、ここで来た道を戻って……」
シャロさんが首を傾げる中、俺は……謎の洞窟の入口を発見した。
見張りの住む山小屋等も無い。
「ここってダンジョンですか?」
「わからない。けど、まずは報告しないとダメかな?」
「おそらくは……ですが……ここ……」
未発見のダンジョンを見つけて報告した場合、実績として残り、更に報奨金等がもらえる。
もちろん既存のダンジョンの新たな侵入口である可能性もある。
その場合も後ほど報告しなきゃいけない。
報告すれば相応に報酬があるのでどっちにしても美味しい。
まあ、危険な魔物が出たり罠等の仕掛けが発動しちゃう事があるので不用意に入るのも危ないんだけど……。
何だろう。
俺はこの先に何があるのか知っている様な気がする。
ここはダンジョンではない。
「あ、ヒロさん」
シャロさんの注意を無視する形で入り口へと入る。
「……」
シャロさんは文句を言わずに俺の後をついて来た。
そんな訳で洞窟へと入った訳だけど……。
洞窟の中だって言うのに明るい。
明かりの方に目を向けると絶句してしまう。
「わぁ……」
思わずシャロさんも声を漏らしてしまった。
そう……俺達の目の前には幻想的な光り輝く水晶が壁びっしりに露出して輝いていたからだ。
しかも地下水も湧きだしているのか、水晶の下には泉が出来ている。




