ヘルロードスピア
俺は海岸沿いへと足を運ぶ。
目当てはペンギン達の集落だ。
近づくと、俺の接近に気づいて契約しているガラコロンペンギンが近寄ってくる。
「キュ!」
「おっす」
挨拶をしてから海岸で座りこみ、ガラコロンペンギンと近い目線に立つ。
「昼間も言ったが助かった。感謝してるぞ」
「キュー!」
ペンギンの方も思ったよりも素早く進化と言うか成長かな? が出来て御満悦って様子。
「さて、昼間も礼は言ったが、実はやって貰いたい事があってな?」
「キュ?」
何? って様子でペンギンは首を傾げる。
契約したお陰で意志の疎通が大分出来るようになったのは収穫かな?
「まあ、お前も分かるだろ。しっかりと心構えをしておいてくれよ」
俺はそう注意してからアイテムボックスにあるヘルロードキャタピラーの肉を献上の枠内に入れた。
「キュ!?」
ビクっとガラコロンペンギンが痙攣し、腹部が膨れ上がり始めた。
うわ、その手の調整をした経験が無いのか。
アイテムボックスってのは魔物にとって魔力的胃袋みたいな物だ。
そこの献上部分と言うのは消化器官に該当する訳で、ここに高カロリーな物……魔石とかをぶちこむとその分、素早く契約相手は吸収して強くなる。
反映の度合いが早いって事だ。
だけど強い魔物の肉も魔石には多少劣るけど、近い効果がある。
俺がやった事はそう言う事。
ガラコロンペンギンからしてもヘルロードキャタピラーは格上の魔物だ。
その肉を吸収すればそれなりに能力や経験値の上昇が期待できる。
「キュ……ケプ」
お腹一杯って様子でガラコロンペンギンは声を出した。
そこはかとなく満足そうな顔。
人間相手に魚を恵んでもらっていた人懐っこいペンギンだからな……狩りが下手とか何かしらの理由で飢えていたのかもしれない。
「しっかり食べて強くなってくれよ」
「キュ!」
まかせろとばかりに俺に親指を立てるかのようにフリッパーを上げて応じる。
「キュプ……」
あ、堪え切れず吐きそう。
身に合わない高密度の素材を献上すると拒絶反応で吐いてしまう可能性もある。
大丈夫か?
ん……?
ペンギンの背中にある銀色の羽毛が光ってる?
「キュウウウ」
吐きそうになったのを堪え切り、ガラコロンペンギンの腹が少し小さくなった。
上手く取り込めたって事で良いな。
「じゃあ、また明日な」
「キュ!」
そんな訳で俺はペンギンと別れ、明日に備えて早めに物置きに戻って就寝したのだった。
酒場で食事をもっと気楽に出来るようになりたいな。
その為にも、今はお金を貯めるべき時か……。
翌朝、ちょっと心配になって朝早くに海岸に行くと、ペンギンはまだ満足そうな顔で寝ころんでいた。
俺の接近で目が覚めたのか俺に手を上げて挨拶をする。
「おはよう」
「キュウ!」
「大丈夫か?」
「キュウキュウ!」
あ、上手い事転がって立ちあがる。
お腹も大分縮んだ様に見えるのは、魔力的胃袋の使い方を大分分かってきたからかな?
だけど……なんか立ちあがると気持ち悪いのか口に手を当てている。
「大丈夫か?」
背中をさする。
すると……
「キュプウウウウ……」
ペンギンはヘルロードキャタピラーの肉では無く……一本の槍を吐きだした。
長い槍がペンギンの口から飛び出て来るのは何かの手品にしか見えない。
けど、コレは肉を吸収する工程で蓄積した物を吐きだしたのか、はたまたヘルロードキャタピラーが元々所持していた挙句吸収してアイテムボックスから無くなっていたのか、だな。
物によってはギルドに献上しなきゃいけない可能性はあるけど、少なくともヘルロードキャタピラーの賞金首情報の補足には無かったはず。
……武器に困っていたし、場合によっては使わせてもらおうかな。
出てきた槍を手にとって持ち上げる。地味に重い。
長さは2メートルくらい。
ヘルロードスピア(呪) 付与効果 炎熱 ??? ???
呪われてる! しかも魔力が足りないから鑑定が不十分だ!
コレはー……多分、肉とかの素材を変換した際に生成される変化物だな。
運が良いのか悪いのか。
最近、運が良すぎて恐ろしく感じてきた。
何処かで悪くなりそう。
「キュウ……キュウ……」
「あー、これは俺が預かっておくか?」
「キュ!」
良いみたいだな。
売っても良さそうだけど……どの程度の性能だっけかな?
呪われている品だからなぁ。
とりあえず、持って軽く振ってみる。
「は!」
……特に違和感とかは無い。
使っていると体が動かない時があるとかの呪いか?
既視感から出てくる知識だと、ヘルロードスピアの呪い効果は装備時火傷状態だったはず。
ジワリジワリと肌が焼けて行くんだったっけ?
他に昆虫類への与えるダメージ減少だったかな?
うーん……俺の記憶違いかな? 上手く使いこなすには火傷耐性が必要だ。
要するに発熱して火傷してる感じ。
しかも全身からジワジワと。
軽く持っているけどそんな症状が無い。
……よくわからないけど、呪いの効果が出ていないなら使える時は使っておくかな。
仮にも賞金首を倒した時に手に入った品だ。
良い武器が手に入るまでの繋ぎには良いかもしれない。
そこまで強い武器では無いはずだけどさ。
それでも包丁なんかよりも遥かに上の武器だ。
「ありがとうな」
「キュウ!」
そんな訳で俺は若干不安であるが武器を手に入れたのだった。
本日の解体仕事も武器屋に行って打ち合わせだ。
そこに鉱夫と一緒にいた商人が武器屋で出迎えてくれる。
「じゃあさっそくどんな武具を作る?」
「武器に関しては運よく確保出来ました」
俺はヘルロードスピアを取り出して見せる。
しかし当然ながらあまり良い顔はされなかった。
「あー……大丈夫なのかそれ? 呪われてんぞ。呪いの解除も出来なくは無いが、その武器の場合は呪いとセットみたいだな……解除すると劣化した槍になっちまいそうだ」
「そうですね、呪いに関しては今の所は感じ無いので運用して行こうと思います……呪いは契約相手のお陰で無力化出来ているのかもしれません」
「どんな奴と契約してんだお前」
何か呆れられてしまった。
だって振りまわしても特に呪いの効果らしき物が感じられないんだから良いじゃないか。
呪いを克服するとか手立てが無い訳じゃない。
本来はそうやって使いこなす武器だ。
「長所は火属性を持ってる所か」
「まあ……そうですね」
俺からしたら破格の性能な訳だ。
しばらくはこれ一本でどうにかなるだろう。
更に能力を引き上げる方法が無い訳じゃないけど、呪われた装備品を何時までも使うのは問題があるから早めに乗りかえるのが良いだろう。
ガラコロンペンギンの適性に合わせると剣が良いかな?
「んじゃ防具に力を注ぐか」
「よろしくお願いします」
「どう言った用途を視野に入れている?」
「全身鎧とかではなく動きやすさとの兼ね合いが出来る奴で良いです。その方がコストも抑えられるでしょうし」
今まで溜めた金銭を合わせて提出しながら全体の作りを依頼する。。
「十分だ。はいよ」
お釣りとして銀貨10枚を返してくれた。
結構オマケして貰ったと思う。
それから武器屋は俺の目の前でテキパキと注文した防具の製作をしてくれた。
おそらく製作系の技能を無数に持つ魔物と契約しているのだろう。
動きが尋常じゃない。
「加工しやすいように下処理してくれてっからこっちも直ぐに作れるぜ」
大元は皮鎧をベースに皮の部分をヘルロードキャタピラーの皮に張り替えるだけだ。
そして俺は前日の解体を行った際に肉屋にあった品で下準備をしておいた。
本来はもう少し皮とかを寝かせた方が良いけれど、そこは無理をお願いして頼んだ形だ。
どうせしばらくの繋ぎのつもりなので問題は無いし、冒険者生活をしている間に素材も馴染むはず。
あんまり良い方法じゃないんだけどさ。
ヘルロードキャタピラーの皮鎧 付与効果 炎熱耐性 素材未熟
おお……思っていたよりも良い。
素材未熟は熟成が足りないって奴だ。
守ってくれる箇所は少ないけど、今までの服よりも頼りになるだろう。
これまでの苦労を考えると、やっと努力が報われた様な気がしてならない。
最低限の土壌は確保出来た。
後は本格的にLvを上げて活動範囲を拡大させて行くつもりだ。
もちろん、売れる物は売って装備を更にグレードアップさせていきたい。




