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「迷惑だなんて、君がいなきゃ彼等もどうなっていた事か、むしろこっちが感謝したい気分だよ」

「……こっちは仕事だったんだし気にしなくて良いわよ。それでヒロは商人なのかしら?」

「元駆け出しの商人です。盗賊に身ぐるみを剥がされて無一文ですけどね。弱い所為でこんなになってしまって……良い機会なんで冒険者に転身するか考えてます」


 これは最近考えていた自らの経歴だ。

 商人がいきなり冒険者になりたいというのは無理じゃない理由だけど、疑問を持たれる。

 だから盗賊に身ぐるみを剥がされた経験から強さを得るって目的を持つようになった、という理由付けだ。


「そうなんだ?」

「中々筋が良いんじゃないの?」

「走って蜘蛛の巣に引っかけただけじゃねえか?」

「貴方ねぇ……」


 シェルテスがリリカの台詞にツッコミを入れて呆れられている。

 まあ、Lvが高ければどうとでもなる相手なのは確かか。


「元商人、しかもあまりLvが高くなかったみたいだし、無一文からの再出発なんでしょ? 近隣で契約しやすい相手を考えなさいよ」

「あー……なるほど。行って駆け出し……Lv10って所だったか。となると大健闘だった訳だ」


 ……今日Lvが付いて8ですと言ったら信じてくれるだろうか?

 無理だろうな。

 ここは無難に流しておこう。

 ……俺の装備品なんて解体用の包丁と私服だけだ。

 冒険者業って装備品と契約相手と体が資本みたいなもの。

 どれか一つでも突出していれば一目置かれるんだろうが、俺はその点で言えば全て足りない。

 それも数日の事だろうけどさ。


「まあ、そんな所です」

「見所あるんじゃない? 今度ミトラ達と一緒に魔物を狩りにでも行くのも良いかもよ?」

「リリカさん、さすがにそりゃあ無いんじゃないか?」

「そうっすね」


 うわ、否定しないんだ。下に見られてる。


「いやいや、彼は頼りになるかもしれない。ギルドに所属出来る最低Lvになったら推薦を出したいくらいだよ」


 マリウスがシェルテスとカークラットへ注意を促す。


「その前に装備品を整えないとね。そうそう、これが分け前だよ。代わりに素材を渡してほしい」


 そう言ってマリウスは俺に、銀貨25枚程くれた。

 かなり太っ腹だ! 未登録の見習い以下の俺にしっかりとくれるなんて……とても真面目な人格者なんだと思われる。


「ええ、既に分解済みです」


 俺はヘルロードキャタピラーの素材……甲殻や皮、トゲ等をアイテムボックスから取り出してテーブルに置く。

 それなりの量はあるけれど、五人で分けたらそこまで残らないか……。


「他に肉もありますよ」

「ふむ……個人的には均等に分配したい。君達も強くなりたい訳だし、ヘルロードキャタピラークラスの素材で良い物を作りたいからね」


 まあ……そうだよな。

 ここで俺が総取り! なんて真似をしたらガメツイし、賞金の半分もくれた訳だから素材くらいは山分けした方が良い。

 今後、彼等とも関わる可能性は高いし、ギルドへ所属する場合、推薦してもらえると助かる……はず。

 コネを作っておこう。


「良いですよ。均等にしましょう。余った部位はその時に決めればいいわけですし」

「話が早くて助かるよ」

「シェルテスやカークラットが活躍していたらどんだけ拗れた事か」


 リリカさんが何か愚痴ってる。

 そんなリリカさんを宥めるようにマリウスが苦笑いをしているぞ。

 ああ、確かに欲が深そうだもんね。この二人。


「取り分は重要だろ!」

「欲張り過ぎなのよ。まったく……」


 ミトラはその辺りの分別は出来るみたいだ。


「ま、さすがに今回の件はそこのヒロって奴がMVPだって分かってるぜ。分け前を貰えるだけあり難いってもんだ」

「君達ももう少し精進して、賞金首を駆逐できる程度の強さを得ないとね」

「支給品の武器じゃそろそろ限界ッスね」


 なんて雑談をしながら俺達は素材を均等に分けて行った。

 最終的には俺が若干良い物を貰えたかな?

 なんかシェルテスとカークラットがヘルロードキャタピラーの肉を嫌がったので多めに貰えたのは運が良かった。

 契約相手に献上すると、良い事があるのを知らないのかな?


「ヒロはしばらくこの村にいるのかい?」

「ええ、ある程度、下地と言うか強くなったら移動しようとは思っていますけど……」

「じゃあ気が向いたら声掛けてよ。一緒に狩りに行ってみましょ」


 ここでがっつくのも悪くないが、やはり装備をそろえないといけないな。

 少なくとも冒険者と名乗れる格好にならないと彼女達と肩を並べるのは辛い。

 冒険者や兵士達からすれば今の俺と一緒に行動したいとは思わないだろう。


「近日中にある程度装備は揃いますけど……それからなら」


 マリウス達と話をし始めた所で席から離れて二人で雑談していた炭鉱夫と商人を指差す。

 すると二人揃って手を振っていた。


「悪くないかもしれない。この子達もまだ駆け出しみたいなもんだし」

「いやいや、もう少しで中堅だろ。賞金首を倒せたんだぜ」


 シェルテスの言葉にマリウスとリリカ、ミトラが半眼で見てから肘をテーブルに乗せて顎に手を乗せる。

 完全に呆れているって感じだ。


「ちょっと自己評価高くない?」

「アレはヒロの作戦でしょ? しかも貴方達……」

「……」


 あ、自覚はあるみたいだ。

 どうやら彼等も経験は浅い方みたいだ。

 自己評価云々は他人なのでわからないが、中堅ではないらしい。


「君達は駆け出しから少し出た程度だよ。むしろ君達より、ヒロの方が頼りになるかもしれないよ」

「さすがにそこまでは……」


 彼等は何だかんだ言ってLvは俺よりも高いはずだ。

 今日は運が良かったから生き残れた物だし、いつも上手く行くと自惚れたら死を招く。


「油断は死を招く……気を付けないとね」

「えっと、太刀筋とかを拝見させて頂いていたのですけど、マリウス達とミトラ達は一体どんな関係なんですか?」

「んー……先輩と後輩って言うのが一番近いかな? 僕がリーダーとして彼等に適した依頼を斡旋して、この辺りで鍛えているんだ」

「そうよ。先輩冒険者って事よ」

「正直な所で言えばマリウスは私達よりも遥かに強いわね。ヘルロードキャタピラーも彼が居ればもっと簡単に討伐出来たと思うわ」

「しょうがないよ。炭鉱近隣で大量に湧いた魔物の本隊を相手にして、君達にはヒロの救出を命じていたんだし……まさか姿を消していた親玉がそっちに行っていたなんて思いもしないよ」


 悪い偶然が重なって俺の方に賞金首が来てしまったって事だったのか。

 もう少し時間稼ぎをしていればマリウスがやって来て、どうにか出来た……まあ、結果的に俺の分け前が増えたのだから良いとしよう。

 ってな感じで雑談をしていると食事を食べ終わる。


「では、そろそろ帰りますね」

「ん? もう? お酒飲んで行かないの?」


 そこで炭鉱夫と商人が間に入ってきた。

 俺が帰るのを察して挨拶に来たようだ。


「武具の件はどうするんだ?」

「そうですね……せっかく手に入った素材があるので……」


 ヘルロードキャタピラーの素材を提出する。


「これを使って何か作れませんか?」

「ふむ……ヘルロードキャタピラーの素材か……ちょっと背伸びした物だが、悪くは無いな」

「わかった。皮の鎧に縫いつければ下手な鎧よりも強靭になるぞ。棘の方も上手く使えば武器になる」

「ま、最悪武器はオマケしてやれば良いだろ」

「ああ……後で金を持ってきてくれ。それから考えようじゃないか」

「いえ、出来る限り良い物でお願いします」


 商人にしか見えない角度でアイテムボックスから金貨を1枚出して見せる。


「これは……わかった。言う通りにしよう」

「個人的には武器が良いですが、細かい打ち合わせは明日にしましょう」

「良い武具が作れそうだ」

「?」


 マリウス達が揃って疑問符を浮かべている。


「それで……マリウス達は?」

「そっちの仕事もあるけど、君達は参加していなかったね」


 マリウスはミトラ達を見て尋ねる。

 リリカとミトラが頷いて、他二人が続いた。


「明日は近隣の魔物退治をする予定よ」

「そうだったね。無茶をしない様にね」

「わかってるわ」 


 マリウスはミトラ達に確認した後、俺の方を向いた。


「手伝いとはいえ、がんばって」

「応援してる」

「ありがとうございます。それじゃ」

「じゃあねー」


 そんなこんなで酒場で食事を終え、みんなに手を振り、酒場を出る。

 しっかりと分配して分け前をもらえた……後の事は俺個人の所有物って事で良い。


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