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一攫千金

「ふむ……とりあえず取り分をどうするかは置いておこう。早めに村に帰る方が良いだろうね。あ、もちろん、俺はいらないから」


 増援で来た人物がそう念を押す。


「そうね」

「異論はねえよ」

「とはいえ」


 俺は助かった事を理解してドッと疲れから尻餅を突く。


「はー……やばかったー……」


 どうにか生き残ったって感覚に支配される。

 敵の強さ的に本気でやばかった。


「そんな軽装でよくもまあこれだけの相手をしたもんだ」


 ヘルロードキャタピラーの死体を確認しながら雑談交じりに言われた。

 確かにこんな装備でヘルロードキャタピラーと戦うのは無謀だ。

 事情が無ければ戦ったりなんて絶対しなかっただろう。


「Lvが高いんじゃねえっすか?」

「え? この人って最近素材屋とか道具屋の手伝いをしている人じゃない? そんな強く見えないけど」

「そういやそうだな。なんかチョロチョロしてたのを覚えてる」

「そんな強くは見えないんだがな……」

「どっちにしてもこの人ががんばったお陰で村の人が助かった訳だし、私達も楽が出来たんだから良いと思うべきじゃない?」

「まあなー」


 各々適当な事を話している。

 一応あっちは俺の事を知ってはいるみたいだ。

 疲れていて億劫だけど、とりあえずは分け前の話をしておこう。


「魔物は俺が頂いて良いよね? もちろん、ヘルロードキャタピラーの方はみんなで分けましょう」

「貴方が倒した魔物でしょ?」


 と、冒険者の……女性が俺の顔をマジマジと見ながら眉を寄せて首を傾げる。


「あなた……どこかで会った事無い?」


 そう言われても、知らない人だ。

 まあ最近は村で行動していたので、チラッと見た事はあるかもしれないけど。


「え? そりゃあ最近、近くの村を拠点にしてますから」

「んー……そうなのかしら?」

「賞金も山分けにするべきだろう。君が倒した様な物なんだ。代わりにポイントを彼女達に譲ってくれると助かる」


 増援で来た青年がそう説明する。

 これは賞金首の討伐ポイントって事だな。

 冒険者としての格みたいな物に関わっているはず。

 今の所、俺には不要な代物だからお金の方が嬉しい。


「ポイントの件は承知しました」

「今回の件は……緊急処置という事でギルドに報告しておく。君にも良い様に取り繕ってもらうから」

「助かります」


 こうして俺達はヘルロードキャタピラーの死骸を運び、草原の方へ向かった所で、更なる増援を呼んだ者と合流した。


「お? どうなったッスか? マリウスの足が早くて置いてかれてしまったッス!」

「彼のお陰で運良く倒せたよ」

「スゲーッス! 分け前はくれるッスか?」

「もちろん……俺がもらう賞金分から君に分けるよ。この獲物は彼等の手柄だからね」

「そうね。私達が来た時には既に終わっていたわ」


 リーダーっぽい青年は仲間達への配慮がしっかりしている様だ。

 戦闘能力も大事だが、こういう所が上手い方がパーティーは長続きする……らしい。

 彼の場合……既視感曰く、どうやら配慮だけではなく、結構強いみたいだ。

 どう強いのかはわからんが。


「助かったッス! 今日は御馳走が食えるッスね!」

「じゃあ……とりあえず、ここで解体しておきますか?」

「君は肉屋の所で働いているんだよね? 報告用の魔石はこっちが持って行くよ。他の素材は後で受け取りに行くから、任せても良いかな? こっちはまだ仕事があるんだ」

「次は炭鉱の方に出現した魔物の殲滅ね。貴方は安全な所へ帰った方が良いわよ」

「ったく、さっさと村に帰りたいぜ」

「わかりました。じゃあ後で渡しますね」


 そう言うと冒険者達は炭鉱があるという方向へ去っていく。

 って訳で俺は破損したキャタピラーとコクーン、ヘルロードキャタピラーの死体をアイテムボックスに入れて、村へと戻ったのだった。


 ちなみにLvが8まで上がり、ガラコロンペンギンの方はもうLv8になっていた。


 中藤洋 Lv8 ガラコロンペンギン Lv8


 ガラコロンペンギン Lv8 10%

 特性 水中適正(中) 船上戦闘技能 ???の眷属

 技能 スラッシュ ステップ ダッシュ アクアショット バッシュ


 コイツ、上がり早いな……まあ、俺が倒した相手が大分経験値を持っていたからなのかもしれない。

 同じコクーンでも進化寸前ともなると馬鹿にならない経験値を持っているって事で片付けられるか。


 村に戻ると荷車を引いていた商人と炭鉱夫が出迎えてくれた。後……シャロさんも居る。

 冒険者も騒ぎを聞きつけて、掃討に出かけて行くようだ。

 そんなにも大量発生しているのだろうか?


「生きて帰って来たか! 良かった!」

「賞金首が出たと聞いて心配したんだぞ!」

「心配したんですよ!」


 シャロさんが俺の手を握り、全身を見渡す。


「怪我とかは……無いみたいですね」

「ちょっと危なかったけど……どうにかなりました」


 かなりの軽装だったし、増援が駆けつけなかったら危なかったのは確かだなぁ。

 とはいえ、死ぬ程やばかったです、なんてバカ正直に言うのは得策じゃない。

 いや、プライドとかじゃなくて、後々冒険者業をする予定だからね。


「話を聞いた時、ゾッとしたんですからね! 昨日も夕方からいなかったですし!」

「ご、ごめんね」


 シャロさんの心配する態度に思わず謝ってしまった。

 単純に嬉しいけど、ここまで心配してくれていると思うと、少しばかり意識してしまいそうになる。


「ホント、アンタのお陰で助かった! この礼は何をすれば良いだろうか」

「こっちも素材や経験値目当てに便乗した物ですしー……大丈夫ですよ」


 少なくとも、ここ数日の一日で稼げる金銭よりは収入になる。

 素材としても妥協できる範囲だ。

 ヘルロードキャタピラーの外殻クラスなら、それなりの値で売れる。

 素材の分け前から考えると……胸当て位には出来るけど、加工費とか考えると売って身の丈にあった物を買うのが妥当か。

 しかもムーンライオまで確保しているから当面の金銭に余裕がある。


「命あっての物だねなんですからね。気を付けて下さい」

「分かってるって、大丈夫だと思ったからこうして帰って来れた訳だしね」


 怪我も無いから大丈夫とシャロさんに見せる。

 シャロさんはそんな俺の態度を見て、若干溜息を漏らした。

 呆れられちゃったかな?


「これくらいをなんとでも無いと思わないと冒険者になんてなれませんよね……わかりました」


 おや? 理解されてしまった?

 理解が良くて助かるなー。


「いやいや、こっちは命を救ってもらったのもあるが魔物を引き連れて擦りつけ掛けた。何か力にならなきゃ示しが付かん」


 あー……確かに。

 命惜しさに魔物を軽装の商人っぽい奴に擦りつけて生き残ったんじゃ体裁が悪いって事か。

 俺が折れた剣を返す。

 そういや炭鉱夫と商人の組み合わせなんだよな?


「鉱夫でしたよね?」

「ああ」

「で、武器屋に出入りしていた商人……」

「知り合いでな。武器の発注と鉱石の調達指示に来たんだ」


 これは良い感じに恩を着せれたかもしれない!


「じゃあお金を工面するので、装備品を安く売ってくれませんか?」

「それなら朝飯前だが……」

「金に関しては宛てがあるので良い物を確保して頂けると嬉しいです」


 俺の頼みに商人の方は笑顔で頷いてくれた。


「わかったがー……」


 なんか俺を上から下まで見られる。


「防具か?」

「金が無かったんですがね。一発当てられる物が手に入ったので」


 何にしても先立つ物は必要な訳で、軌道に乗るまではフリーターみたいな生活を余儀なくされる。

 冒険者達だって駆け出しだったり、未熟な冒険者は村や町の雑務で日銭を稼いでいるはずなのだ。


 金が無ければ宿にも泊まれないし、安全な場所とはいえ、野宿は当たり前……だったよな?

 それこそ、魔物の素材を繋ぎ合わせて皮の鎧とかを作るのが精一杯。

 いや……この際、服に縫い付けるだけでもマシかもしれない。

 服の方も安くは無いし。

 商人だってこのご時世、鎧くらい着込んでいる。


 とはいえ、ここで請求するのはどうかと思う。

 防具も重要だけど今は効率良く戦う術だ。

 ガラコロンペンギンと契約してある程度戦える。


 ならば安物の防具を揃えるよりも良い武器を探すべきだ。

 その時の所持金で良い物を買おう。

 賞金も山分けしてくれると約束したし。


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気になる点 「これくらいをなんとでも無いと思わないと冒険者になんてなれませんよね……わかりました」 →これくらいなんでもないと
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