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蜘蛛の巣

 地面に着いた部分で高速回転して弾き飛ばそうとしているヘルロードキャタピラーに向けて、息を切らしながら俺は意識を集中させてアクアショットを放って炎を纏わせない様にする。


「そうか! アクアブラスト!」


 リーダーの女性は俺が何を考えたいたのか見抜いて、ヘルロードキャタピラーが抜け出せない様にする手伝いをする。


 さて、俺がヘルロードキャタピラーが来るように誘導し、抑え込む事が出来たのには理由がある。

 俺がヘルロードキャタピラーが来るように誘導した場所は、ダリアパープルスパイダーが巣を張った場所だ。

 蜘蛛の糸と言うのは火とかで燃やさない限りは思ったよりも頑丈だ。


 そんな巣に突撃した訳だから、ヘルロードキャタピラーは思い切り糸が絡まってしまった。

 巣の主であるダリアパープルスパイダーは其処まで強くは無く、ヘルロードキャタピラーの気配で急いで頭上の木の上に隠れてしまっていた様だけど、巣にヘルロードキャタピラーが嵌って動けないとなれば話は別だろう。


 一か八かの賭けだったけど、上手く行った!

 本来は、嵌っても若干纏っている炎で糸が燃やされてしまうだろうけど、俺達が定期的に水を掛けて炎を消していた。

 しかもその道までの間にもベタベタの蜘蛛の糸がある。

 さらに藪やデコボコとした地面の所為で速度は思ったよりも出ない。


 草原のノリで突っ込んで来たのが運の尽き。

 しかもスパイク付きで地面を削り取りながらの突進、水気の多いこの森じゃ炎を纏えず逆効果ってね。

 高速回転して突っ込んだ瞬間には気付かなかっただろうけど、こうして動きが停まった所で、ヘルロードキャタピラーは理解しただろう。

 全身が蜘蛛の巣塗れになっている事を。


 これ幸いとばかりにダリアパープルスパイダーはヘルロードキャタピラーに蜘蛛の糸を拭きつける。


「ギュイイイイイイイイイ!?」


 思わぬ攻撃と自身が罠に掛けられていた事を悟ったヘルロードキャタピラーは丸まった体勢のまま呻き声をあげる。

 だが、その場で回転する事すら叶わず、もがけばもがく程、糸が強く絡まって行く。

 ここまで来ると、さすがに場違いな場所に生息する賞金首と化した危険な魔物でさえも手も足も出ない。

 懸命に抵抗し、時々びくびくと動くが戦闘の続行は不可能だ。


「後は――」


 俺はコクーン付きの折れた剣に付いたコクーンを引き抜いて丸まったヘルロードキャタピラーの腹の間へ滑り込ませる。


「ギュイイイイイイイイ!?」


 やっぱこれでも地味に硬いか。

 柔らかい腹部でも歯が其処まで入らない。

 ダリアパープルスパイダーも思わぬごちそうに俺達への意識を向けずにヘルロードキャタピラーに喰らいつく。


「今の内だよ!」


 俺の言葉にハッとなったリーダーの女性が我に返り、近づいてくる。

 屈強な男も同様だ。


「こんな手を想い付くとは……凄いわね」

「こりゃあ頭いい!」

「ええ……とは言え」


 女性がダリアパープルスパイダーに視線を向ける。

 確かに、ヘルロードキャタピラーを仕留める事が出来ても、今度はダリアパープルスパイダーとの戦闘に成るんじゃないかとは思うだろう。


「今の内に仕留める?」


 増援の殺気を感じとり、ダリアパープルスパイダーもこちらに意識を向ける。


「やめて欲しいな。運よく共闘した仲なんだしね」


 俺が間に入り、手話って訳じゃないけどまだ絶命していないヘルロードキャタピラーを指差す。

 獲物はやるけど、こっちに手を出すなら容赦しないと睨みを利かせる。

 契約をした影響で、多少は意思疎通に近い物を発せられる。

 相手が聞く気がある前提だけど。


 まあ、ダリアパープルスパイダーからしたらいきなり問題事を持ってきた厄介者だ。

 だけど同時に、極上の獲物を持ってきた相手でもある。

 状況次第では仕留めなきゃいけない。

 ここに居る人達なら余裕で仕留められる相手だ。

 ……Lvアップして進化したらまた別なのだろうけど、逃げる時間くらいは稼げるだろう。


 賞金首でも無いし、追い掛けて来ても逃げられる可能性は高い。

 ヘルロードキャタピラーみたいな早さが売りの魔物になられない限りは。

 俺の意志を汲み取ったのか、ダリアパープルスパイダーは俺達から意識を逸らし、ヘルロードキャタピラーへの攻撃を再開する。


「戦う気は、今の所無さそうだ。ササっとこっちもおこぼれをもらうとしよう!」

「凄いな。君は中々の腕前を持っている様だね」


 あくまで既視感で進んでいるだけだし、咄嗟の思い付きだけど。

 そんな訳で俺達は、動けないヘルロードキャタピラーへ、各々攻撃をする。


「弱いのはここ」


 外殻に噛みつくダリアパープルスパイダーに折れた剣で、腹部を指示する。

 俺の意図を察したのか、ダリアパープルスパイダーは若干噛みつき辛そうだけど、ヘルロードキャタピラーの腹部近くを噛みつく。


「よっしゃ! 俺達賞金首を仕留めたぜ!」

「勝ったのは彼で、私達は手伝っただけよ? 冒険者や兵士……では無さそうだけどね」

「ええ……まあ」


 後は……と、弱ってきたヘルロードキャタピラーの頭目掛けて、増援のリーダーと屈強な男が各々武器を振りかぶる。

 それでも……致命傷に至らないか。

 ジワリジワリと仕留めて行くしかないのはもどかしいな。


「みんな! 無事か?」


 そこで肩で息をした男性……好青年っぽい人物とその相棒っぽい女性がやってくる。


「これは……凄いな。もう倒す寸前じゃないか」

「動きを封じる事は出来たのですが、私達じゃ倒しきれず時間が掛ってる所です」


 リーダーだと思っていた女性が敬語で好青年っぽい人物に事情を説明している。

 好青年っぽい人物は俺を見た後、一礼する。


「僕が手伝っても良いかい?」

「はい。少しでも早く戦いを終わらせたいので」

「わかった」


 青年は腰に下げた剣を引き抜いたかと思うと素早く切りつける。

 スパンと、良い音と軌跡が俺には見えた。


「ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイ――……」


 そんあ絶叫を上げてヘルロードキャタピラーは力尽きた。

 おお、俺達が仕留めるのに時間が掛るのを一瞬か。

 Lvが高いんだろうなぁ。


 パラパラと辺りに……ヘルロードキャタピラーが所持していた物が散らばる。

 契約時のアイテムボックス内にある物だ。

 俺のLvが上がる音が聞こえる。

 大量の魔素を辺りにばら撒いたみたいだ。


 この魔素はどんな理屈だったかよくわからないけれど、絶命時に傷つけた相手へと移る性質を持つ。

 魔素って言うのは経験値なのはわかるだろう。


 もちろん、他にもいろんな理由で魔素は得られるけど……メキメキとダリアパープルスパイダーの方から音が響く。

 大量の経験値を得て進化するだろう。

 強くなったら何をするかわからない。


 ダリアパープルスパイダーは絶命したヘルロードキャタピラーに引っ付いていた糸を噛み千切り、同様にヘルロードキャタピラーの胴体を噛み千切る……そして半分程、ヘルロードキャタピラーの体を分解して俺達の前に降ろした。

 そうして残りの半分を引き摺って行く。

 獲物は半分ことでも言う気かな?


「懐が深い相手で助かった」


 まあ、こっちは多分に迷惑を掛けたし、獲物は半分くれるだけ儲け物かな。

 増援のみんなに俺は礼を述べる。


「えーっと……ご協力感謝します」


 俺だけだとヘルロードキャタピラーの炎は消しきる事は出来なかっただろう。

 それから辺りに散らばったヘルロードキャタピラーが所持していた物を確認。

 うーん……キャンプ用具とかが大半で、使用済み……腐ってる物もあるみたいだ。

 魔物の素材もあるみたいだけど、随分と劣化しているし目立つ物は無い。

 ゴミばかりかな。


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気になる点  リーダーの女性は俺が何を考えたいたのか見抜いて、ヘルロードキャタピラーが抜け出せない様にする手伝いをする。 →考えていた
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