表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/33

ムーンライオ

 そんな感じで街道の一角から途中で曲がり、暇さえあると薬草摘みにやってきた草原へと足を運んだ。

 もう目を瞑ってでも歩けそうな場所ではあるけれど、魔物を警戒して進んでいたので未踏破地域が存在する。

 ダブグレイロードキャタピラーの餌場近隣だ。

 ここを突っ切り、心当たりのある場所を目指す。


 ガサガサと目当ての地域に足を運び、確認する。

 まだ、早速ダブグレイロードキャタピラーを三匹程発見した。

 既に縄張りに入っているはずなので、俺を発見したら襲いかかってくるはず。

 というか、既に俺の足音に気づいているようで敵意を見せている。


「ギイイイ!」


 一匹がさっそく丸まって俺に突進してくる。

 その速度は始めて戦った時の半分くらいにまで遅く見えた。


「おっと」


 避けると同時に手頃な木の棒を素早くタイヤの車軸部分に例えると分かりやすいかな? 真ん中に差し込む。


「ギ!?」

「おおおおー」


 木の棒を軸にぐるぐると回っていて、ダブグレイロードキャタピラー自身が驚いてる。


「おりゃあああ!」


 そのまま流れるように、突進してきた一匹に叩きつける。


「「ギイイイ!」」


 二匹とも衝撃で吹っ飛び腹を見せて悶絶を始めているようだ。

 すかさず解体用の包丁で息の根を止め、最後の一匹と相対する。

 ダブグレイロードキャタピラーは弱い方の魔物だ。契約なしの俺だって殺せる。

 とはいえ、三匹一度に相手をするのは骨が折れる相手だったけどさ。


「む!?」


 残った一匹が丸まって、その場で高速回転を始めた。

 ……戦い馴れているのか潜在的に強力な個体だろう。


 アレはダブグレイロードキャタピラーの必殺攻撃の準備だ。

 高速で回転して速度を上げたまま、高速で相手に突撃する大技。

 格上の魔物でさえも仕留める事が出来る技で、ダブグレイロードコクーンは必ず放ってくる厄介な攻撃だ。

 遮蔽物は無し、ぶつけ合う物も無いので突進してくるダブグレイロードキャタピラー一匹を相手にする方が骨が折れる。


 さて、試しに技でも使ってみるか。

 スラッシュを意識すると、攻撃の予備動作が頭に浮かんでくる。

 これをなぞる事で力が引き出せる。

 もちろん、ある程度ファジーにアシストもしてくれる。

 叫ぶ事でも放てたはず。


 いつでも放てるように解体用中古包丁を両手で持ち、ダブグレイロードキャタピラーが突進してくるのを待つ。

 下手に近付くと返って危ない。

 少しばかり距離がある方が対処がしやすいはずだ。


「ギィイイ!」


 火花を散らしながらダブグレイロードキャタピラーは俺に突撃してきた。

 契約で能力が上昇しているはずの俺でも対処が遅れそうな速度の一撃だった。

 契約なしだったらそそくさと逃げただろうなぁ。

 ジグザグに逃げたり、遮蔽物があればどうにかなるんだけど。

 身をかがませて紙一重で避けながら……技を放った。


「スラッシュ!」


 大きく横一文字にする攻撃スキルだ。コロンペンギンが地上に居る時、フリッパーを振る動作が頭に浮かぶ。

 ぶっちゃけ、アレが反映されてるのかな……。

 解体用の中古包丁の刀身が僅かに光り、ズブッとダブグレイロードキャタピラーの外郭を切り裂く手ごたえが伝わってくる。


「ギィ――!?」


 真っ二つに切断され、ダブグレイロードキャタピラーは驚愕の声を上げながら絶命した。


「ふう……」


 よし、上手く行った。包丁でも使える攻撃みたいだな。

 ブンと解体用の包丁を振るって体液を飛ばし辺りを確認。

 敵影は無い。少なくとも増援は無いようだ。


「しかし……」


 契約一つでここまで戦闘が楽になるのか。

 既視感でわかっていた事とはいえ、実感すると変化に驚く。

 今までの俺ならもう少し手こずったはずだ。


「さてと」


 俺はダブグレイロードキャタピラーの死骸に触れながらアイテムボックスに入れる指示をする。

 フッとダブグレイロードキャタピラーは消えてアイテムボックスに収まった。

 経験値を確認。

 後一匹倒せばLv2になりそうだな。


「最低Lv3になるくらいまでは粘りたかったけど……まあ、どうにかなるか」


 解体用の包丁の耐久にもよるけど。

 中古品だし、切れ味悪いもんなぁ。

 騙し騙しでどうにかするしかない。

 折れない程度にがんばらないと……うん、刃こぼれが怖い。

 余計な出費は避けたいんだけどな。


 そんな警戒をしながら草原内の未踏破地域を重点的に回る。

 体が軽い気がする。

 こう言う時こそ思わぬ被害を受ける可能性があるんだけどさ。

 格下の魔物しかいなさそうな所で偉そうにとも内心思う。

 とはいえ、金も何も無いんだからしょうがない。


 ああ、少々脱線するが、このアイテムボックスは異空間にあると言うよりも自身が別の何処かで背負っているに近い。

 日を当てちゃいけない薬草とかを何もせずにぶちこんだたら一発アウトだ。


「さて、試し切りはこれくらいにしてっと……行くか」


 俺は草原の奥へと走り抜ける。

 ダリアスパイダーと遭遇した森の近くを横切り、更に草原の奥へ奥へと走りつつ周囲を出来る限り警戒しながら走る。

 やがて3時間程走った所で山に到着。岩山だ。

 だが、ここも俺の目的地ではなく、道なりに迂回する。

 ん?


「では行くぞ!」

「はい!」


 なんか身なりの良さそうな奴とその仲間っぽい奴が松明片手に山の方へと向かって行くのが目に入った。

 夜間に山に入るのか? 物騒だな。


 確か……この山は鉱山なんだったか。

 鉱夫達は既に帰宅している時間帯だろう。

 冒険者が夜間に魔物を退治しようって判断かな?

 まあ、相手をする必要は無い。


 そう思い俺は道が消えそうな所を進み、山から逸れた大樹の森へと入り、息を殺しながら目的地へと向かう。


「お? これは運が良いな。ウン故に」


 うん、我ながらつまらないな。

 というのも大樹の森に入った所で大型の魔物、オリーブアングリーティラノが用を足している所に遭遇したのだ。


「ギャオオオ……オオウ」


 草葉の陰に潜伏しオリーブアングリーティラノが立ち去るのを息を潜めて待つ。

 しばらく鼻を鳴らして周囲を警戒していたオリーブアングリーティラノは新たな獲物の匂いを感じ取ったのか、俺とは反対方向に走って行ってしまった。


 本気で俺の運が良いな。

 最悪、適当な所で帰るかも視野に入れていたのに。

 俺はオリーブアングリーティラノの排泄物に近寄り……体に塗りたくる。

 正直臭いが、この匂いが付いている限り、ある程度無茶が効く。


「よし! 再出発だ!」


 道中、俺よりも遥かに各上の魔物、クリムレッドマジックリザードやイエローバーストウルフなんかと遭遇しかける。

 が、奴等は俺を視認する前にバッとその場を離れて行った。

 俺が確認できたのは視認した際の名前と思い出せる魔物の情報だな。


 さて、なんで俺よりも強力な魔物共が逃げていくのかは誰の目にも明らかだろう。

 そう、言うまでもなく、オリーブアングリーティラノの排泄物が原因だ。

 月明かりがあるとは言え、この大樹の森の中でも上位に君臨する魔物の匂いが近づいて来るんだ。

 まともな生物であれば、例え魔物でもむやみやたら接近したいなんて思わないだろう。


 そんな訳で俺は匂いで狙われない様にしながら大樹の森の奥深く……魔力的地場の強い所で開けた場所を見る。

 うえ……さっき出会ったオリーブアングリーティラノが月明かりの中で寝てやがる。

 その湧き近くに……高額で取引されているムーンライオが生えていた。


「グルルルルル……」


 ……落ち付け。相手は寝ている。

 いや、アレは寝たフリだ。

 ムーンライオに群がる獲物を求めて待っているんだ。

 見つかったら一瞬でオリーブグリーンティラノの胃袋に一直線だ。


 が……諦めるのは非常に惜しい。

 どうにか出来ないか……?


 そのまま俺は潜伏してオリーブグリーンティラノに変化が起こらないか待つ。

 1時間……2時間……くっそ、どんだけ待ち伏せしてんだ。

 近寄る奴なんていないだろ。

 とは思いつつムーンライオの誘発成分を考えるとバカに出来ない。


「グウウ」


 ん? オリーブグリーンティラノが立ち上がって少し離れた所にある、すぐに駆けつけられる木々の間の方へと悠々と歩いて行く。

 チャンス! 獲物が来ないから奇襲用に潜伏する気みたいだ。

 極力物音を立てない様にムーンライオに近寄ってスラッシュで三本かすめ取り、そのまま逃げる。


「ギャオ!?」


 あ、見ていたムーンライオが減って居た事に気付いた声をオリーブグリーンティラノが上げている。

 しかし、既にその頃俺は辛うじて木々の影に潜む事が出来たので発見されていない。

 けれどオリーブグリーンティラノは匂いを頼りにムーンライオを取った相手の捜索を始めた。

 残念ながら同族の匂いだぞ?

 まあ、すぐに気付くだろうが。


 俺はもう一匹のオリーブグリーンティラノが向かったであろう方角へ急いで駆け出す。

 匂いを辿る様にオリーブグリーンティラノが俺の後方を鼻を鳴らしながら追い掛けて来る。

 絶対に目視で見つかる訳にはいかない。


 どこか川を突っ切る事が出来ればオリーブグリーンティラノの匂いでの追跡は振り切れるが、今度は別の格上の魔物に襲われる。

 悩ましいな。


 なんて思っていると後方に居たオリーブグリーンティラノの気配が大きく反れていく。

 それからすぐに……。


「「ギャオオオオオオオオオオオオオ!」」


 という大きな二つの咆哮が聞こえてきた。

 よし! 匂いの主とどこかで匂いが交差した様だ。

 このまま離脱するぞ!

 そんな訳で俺は朝日が昇りかけた時間の中でどうにか……大樹の森を出る事が出来たのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
気になる点  そんな感じで街道の一角から途中で曲がり、暇さえあると薬草摘みにやってきた草原へと足を運んだ。 →暇さえあれば  まだ、早速ダブグレイロードキャタピラーを三匹程発見した。 →(まだ、 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ