契約完了
このコロンペンギンは弱いからこそ、序列が低いのだろうと思う。
人間と個人契約をし、その人間が経験値を得ることで相乗的に強さを得る事が出来る。
破棄はいつでも出来る訳だからやっていて損では無い取引を持ちかけている。
但し、好き勝手やって破ったら罰せられるし、最悪、契約相手が責任を取って殺しに来るけどな。
他に従属契約とかある。
こっちは……家畜とかになった魔物だな。
魔物側から好きに解除する権利がない。但し……その分、力の反映とかいろんな部分で劣る。
他にも色々とあるけれど、今は普通の契約を行おうとしている。
「じゃあやるぞ」
「キュウ!」
俺の頼みを聞き受けたとばかりにコロンペンギンは頷いてフリッパーを前に出す。
俺は契約用のカードをコロンペンギンに掲げて強く握りしめる。
するとカードに封じられた魔法が解き放たれ、コロンペンギンと俺を光る紐で繋ぎ、俺の視界に僅かな砂嵐と共に項目が出現してくる。
コロンペンギン Lv5 と契約をしますか?
はい いいえ
俺は迷わず「はい」を選択してから、次の項目を選ぶ。
契約内容の確認と取引だ。
例えば献上する経験値の比率、契約期間等、数を上げればキリは無い。
二重に項目が出ていて、経験値の比率をどうするかコロンペンギンとアイコンで決め会う事になる。
「経験値配給……今の所、お前以外と契約している相手はいない。契約相手が増えたら半分で良いな?」
他の魔物と契約した時、俺が手に入れた経験値をどう供給するかと言う問題だ。
「キュ!」
コロンペンギンは頷いた。まあ、妥当な取引だと思ってくれているのだろう。
魔物側からしたら何もしなくても経験値が入る訳だしな。
ちなみに、逆に魔物側が人間に供給する事も……出来なく無いけど、反映され辛い。
人間から魔物へ10の経験値が流せるとして、逆は大きく契約設定して、同じ量を送っても1しか届かないそうだ。
人間が得る経験値と魔物が得る経験値が違うって話だった様な気がする。
で、色々と契約項目で……安物だからそこまで設定出来ないか。
「ダメージ共有はどれくらいに設定する?」
「キュ」
ダメージ共有と言う怪我とかを一部、契約相手に肩代わりして貰う物もある。
痛みの軽減や治療速度に影響が出るので悪い手じゃない物だ。
致命傷に至る攻撃を受けた際に肩代わりして貰い命を繋ぐ事も出来る。
で、コロンペンギンはダメージ共有の項目を受けて自身で受け持つのを8、契約相手2を指定した。
まあ、妥当か。
ちなみに契約相手にダメージを10とかには出来ない。契約相手への最高値は5だ。
もちろん0は可能。
そんな感じで設定を終えると契約カードにコロンペンギンのイラストが浮かんでから消えた。
契約が完了したって事だ。
それと同時に俺の能力値が視界に浮かび上がる。
中藤洋 Lv1 コロンペンギン Lv5
で、能力値が表示される訳だが……まあ、契約相手が契約相手なので、かなり大雑把な物だ。
力、敏捷、魔力の三項目しかない。
力は単純に腕力、それと耐久力、生命力とかをまとめた物だ。
敏捷は身のこなし、目の良さ等
魔力は魔法力や知力だな。
大雑把過ぎて細かい物が見れないのには大きな理由がある。
相応に契約相手が弱い所為で、ステータスを細かく確認出来ないのだ。
これはしょうがない。
俺自身がLvを上げるか、コロンペンギンが強くなるかで精度を上げるしかないだろう。
ちなみに魔力の項目が上がる事で精度が上昇する。
もちろん、上げた後は力が体に染みついて契約解除してもLvが下がると言う事は無い。
で、重要な事なんだが……やっぱ俺のLvが1なのは元より、俺自身の身体能力が低い。
何か魔法とかを自力で使える訳でもないし、心得がある訳じゃない。
若干……魔力が高め程度で、これは知力とかが反映されているだけに過ぎないだろう。
既視感の所為か、それとも日本人としての知識のお陰かは不明だ。
俺、というか中藤洋の才能という可能性もある。
ここにコロンペンギンが持つ能力値がボーナスとして付与される。
そのお陰で敏捷が多めになった。
これで動きが良くなるだろう。
Ⅰ コロンペンギン Lv5 5%
特性 水中適正(中) ???の眷属
技能 スラッシュ
Ⅰは……カード部分の上位部位に表示される数字だ。
確か意味は可能性。
未熟だけど成長をするって意味だったはずだ。
これは強さとか関係が無い。
ある程度Lvが上がった後とかに関わる要素って事で覚えておけば良い。
しかもコロンペンギンが進化とかすると数字が変わる。
水中適正(中)と言うのは文字通り水中での動きに左右される。
プールの中でゴーグルとかを無しで目を開けた事があるだろうか?
若干ぼんやりした視界の挙句、目が痛くなるだろ? アレが無くなってクリアな視界、しかも目も痛くないとしたらどうだ?
水の中でもかなり息が続くし、ある程度、泳ぐ事が出来れば溺れる心配は無い。
???の眷属? なんだこれ?
あーもしかしたらガラコロンキングペンギンの眷属って意味かも。
俺自身のLvや能力が低い所為で認識出来ていないんだな。
スラッシュは剣の技だったはずだ。
解体用の中古包丁でも出来たかな? 肉屋の厨房でついでに研いでいたので切れ味が増している。
%は契約相手とのリンク率だ。
契約相手の力を使う度に上昇して行き、能力値が上昇する。
発動に一定値以上のリンク率が必要な技能もある。
ちなみに信頼度的な要素があって力を使わなくても%を上げる方法はある。
相手の信用を得ることで、より力を貸してくれるようになったりするんだ。
集団契約だとこの%の上がりが悪い。もちろん、従属させて強引に契約している場合も同様だ。
前者の場合は数が多過ぎて相手を覚えきれない。
後者の場合は強引に契約されている訳だし、嫌な主人を信用なんてしないだろ?
まあ、俺と契約したコロンペンギンの力じゃ強引に%を上げるのは難しいかな。
個人契約で、友好を深めて行けば自然と上がって行くか。
「契約完了」
「キュウ!」
で、視界の項目で道具ウィンドウを開く。
んー……やっぱりそんなに多くは預けられないか。
これはアイテムボックスとして、任意の物を魔法で異次元の倉庫に預ける事が出来る能力だ。
魔物の強さで預けられる量が決まる。
俺自身しか引き出せない所と、共有ボックスとしての項目がある。
遠くに離れていたとしても手に入れた魚を共有ボックスに入れておけば、いつでもコロンペンギンが引き出せる訳だ。
但し、遠過ぎると魔力を相応に消費するし、離れ過ぎていると取り出せなかったりもする。
ちなみに……契約相手であるこのコロンペンギンが死んだ場合、預けていた物はコロンペンギンの近くに散らばる。離れ過ぎていた場合は何処かへ消えてしまうんだったっけ?
十分に注意しないといけない。
それとまあ、魔力を含んだ品等をここに入れておくと、能力値にボーナスが掛ったりする。
このアイテムボックスの正体は魔物の魔力的胃袋だ。現に道具を取り出さずに消化する事も出来る。
項目内の紫色の部分が魔力的餌にする場所だ。
ここに物を入れておくと消化されてしまう。
「じゃあ、余裕があったら魚を預けるからな」
「キュ!」
手渡しで欲しいと言っている気がした。
契約すると言葉が通じなくても何を伝えたいか少しだけわかる様になる。
後は……その魔物と同族は基本的には友好関係となるはずだけど……このコロンペンギンは序列が低いっぽいから頼りには出来ないか。
契約完了でコロンペンギンが喜びの鳴き声を上げる。
「ああ、これからよろしくな」
とは言っても、力をもらうだけで一緒に冒険するという訳じゃないけど。
「それじゃ俺はこれから少しばかりLv上げに行ってくるから、またな」
「キュウウ」
思ったよりもアッサリとコロンペンギンが了承してくれたお陰で俺はとりあえず契約を終えたのだった。
さて、俺がコロンペンギンを選んだのには大きな理由がある。
まず近隣の手頃な魔物の中でコロンペンギンが割と優秀な分類に入る。
以前にも考えたが、コロンペンギンはダブグレイロードキャタピラーよりも弱い。
が、それは地上での話だ。
水中でのコロンペンギンは地球側のペンギンと同じく、動きが早い。
その部分が反映されているのか、契約時に人間側に掛る加護で特出しているのは敏捷なのだ。
人間側の能力よりも優れた部分が加護として授かる。
俺自身の力が強い場合、力が強くて足も速い万能戦士になれたかもしれない。
まあ、俺が人よりも腕力に優れる様な巨漢だったなら、大いに性能を引き出せたんだろう。
当然ながら俺は人並みと言うか……一般人並みなのでそんな事は無いけどさ。
それでも敏捷が上がっているので悪い話じゃない。
ともあれ、これでダブグレイロードキャタピラーの転がり攻撃を見切って避けるまでも無い反射速度で動けるようになったはずだ。
試し切りを兼ねて……いや、ここで一発、俺の知識で浮かぶ荒業を行う事にしよう。
運が良ければどうにかなるはずだ。
アイテムボックス内には肉屋からもらった強めの魔物の端材を入れてドーピングを施しておいた。
俺とコロンペンギンの双方、僅かに能力値が上昇している。
低Lvではこの僅かな差が大きいはず。




