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【書籍発売中・コミカライズ連載開始】捨てられた第四王女は母国には戻らない WEB版  作者: 風見ゆうみ
第二部

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34  父と合流

 リディアスたちがいると思われる場所は、ハピパル王国とフラル王国、ドーラ王国の三国が接している場所だ。現在、フラル王国とドーラ王国が緊迫した状況でハピパル王国が間に入ろうとしているらしい。


 旅立って1日目の夜。宿屋と併設しているレストランで、私は食事をとりながらシロウズと話をしていた。


「フラル王国とドーラ王国は、戦争をしているわけではないのよね?」

「ああ。だが、緊張状態にある。そのためにハピパル王国が介入してるんだ。今回はリディアスの勉強のためにカーク様は付き添っているだけで、表に立っているのは東の辺境伯だから心配しなくていい」

「ありがとう。私もお父様がいるから心配はしていないの。今回の目的は、人様に邪魔にならずに噂の真偽を確かめることと、必要であれば薬を作るためよ」

「危ない場所に連れて行くつもりはないぞ」

 

 お母様に私を任されたシロウズは珍しく真剣な顔で言った。


「わかってるわ。さっきも言ったでしょう? 迷惑をかけに行くつもりじゃないの」

「それにしても、リディアスが浮気なんて絶対にありえないだろう。わざわざ確かめに行く必要はあるのか?」

「絶対って言うほうがありえないわ。リディアスはモテるもの。誘惑されたっておかしくないわ。それに、私は大して可愛いわけじゃないしね」

「嬢ちゃん。人は顔で判断するものじゃない。中身が大切なんだ」

「遠回しに人の顔をけなすのはやめてくれない?」


 別に怒っているわけではないけど、眉根を寄せて言うとシロウズは苦笑する。


「悪い、悪い。別にけなしたつもりはねぇんだ。まあ、確かめないと気が済まないというのはわかる。その代わり嬢ちゃんの気が済んだら、さっさと帰るぞ」

「もちろんよ。付いてきてくれてありがとう」


 お父様に会いたいとか、リディアスが浮気していないか見に行くなんて、私のワガママ以外何ものでもない。一応、公には薬を持ってきたという理由にするから、馬車にたくさん乗せてきた。

 誰も怪我をしていないのが一番だけど、万が一のために薬があるのは悪いことじゃないはず。


 そんな言い訳をしながら旅を続け、5日目の晩に私たちは目的地に着いたのだった。


 今日はセキュリティのしっかりした宿に泊まり、明日の朝からお父様に会いに行こうと考えていると、宿の人から私が着いたら連絡してほしいと、お父様から言付かっていると言われた。

 宿営地はこの宿からそう遠くないらしいので、私が着いたことを伝えてほしいとお願いすると、1時間も経たないうちに、お父様が宿にやって来てくれた。

 シイちゃんもお父様に会いたがっているため、ロビーではなく、私の部屋に来てもらってから再会を喜びあう。


「ミリル、シイ、驚いたが、お前たちに会えて嬉しいよ」

「お久しぶりです、お父様。体調を崩したりしていませんか?」

 

 仕事が終わったのか、ラフな格好のお父様に抱きつくと、シイちゃんも嬉しそうにお父様に向かって飛んだ。お父様がシイちゃんをキャッチすると、シイちゃんは『サミシカッタヨ』と言っているかのように、自分の体をこすりつける。

 

「リディアスも私も元気にしているよ。レイゼルたちにも変わりはないか?」

「お母様は手紙の返事がないことを気にしていました」 

「ああ、そうだった。すまない。バタバタしていて送れていなかった。先日返事をしたから、明日には届くだろう」


 お父様は私の頭を撫で、近くのソファに座ると笑顔のまま話を続ける。


「リディアスが浮気しているかどうかなんだが、それはない」

「リディアスのことを昔から知っている人は、みんなそう断言しますね」

「リディアスは子供の頃からミリルが好きだった。自分が婚約破棄されたあとに、お前に婚約者ができても密かに思い続けていた。そんな奴が両思いになったのに浮気なんてするはずがない」

「でも、お父様、エレスティーナ様は美人なんですよね? 自分のことを好きだと思ったら、そちらに気持ちが傾きませんか?」

 

 私とはまったく違うタイプの綺麗なお姉さんに声をかけられたら、リディアスはどんな気持ちになるんだろう。

 男の人の気持ちは、女の人と違うのかわからなくて聞いてみた。すると、お父様は笑う。


「リディアスが気の毒になってくるな。まあ、これ以上、私が何を言っても無駄だろう。明日、自分の目で確認しなさい」

「はーい!」

 

 いっぱい話したいことがあったのと、私の部屋にはベッドが二つあったため、宿の人に了承をもらいワガママを言って、今日はお父様に同じ部屋に泊まってもらうことにした。


「ミリルくらいの年頃の女性は父を嫌うと聞いたんだが、そうじゃなくて嬉しいよ」


 最初は困っていたお父様だったけれど、結局は折れてくれて、その日は遅い時間まで話をしたのだった。

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