28 お茶会……ではなく、薬草茶会 ②
帰りの馬車の中でシイちゃんに相談し、家に着くとすぐ、お母様に今日のことを報告した。
「レイティン殿下に渡した薬のせいで、作っているのはコニファーではなく、ミリルだと気づいたのかもしれないわね」
「簡単に薬を渡しすぎたのでしょうか」
「その可能性もあるわね。だけど、あなたも薬師だから、薬を持っていてもおかしくないわ。とにかく、今さらそのことを悔やんでも意味がないと思うの。これからのことを考えましょう」
事情があったとはいえ、みんなに嘘をついているのは確かだ。どうせなら、このまま嘘を通し続けたい。誰かを傷つける嘘ではないし、もし、この嘘がバレてしまえば、私はともかく、コニファー先生が責められるかもしれない。そんなのは絶対に嫌!
シイちゃんが神様にお願いしてくれると言っていたから、コニファー先生に迷惑をかけない……と思っていたけど、考えたら見学の許可をもらわないといけないのよね。
きっと、コニファー先生の作業場を見たがるだろうし、薬草作りをするなら、先生の作業場でのことになる。
「気になったのだけれど、ミリルは例外として、シイは王家の人間以外に力を使ってもいいの?」
お母様に尋ねられたシイちゃんは、コロコロ転がって答える。
『イママデハダメダッタケド、ミリルトナカヨクナッテカラハ、ミリルヲマモルタメニヒツヨウナコトナラ、チカラヲツカッテモヨクナッタンダ』
「それで私たちと会話してくれているのね」
『ウン。セイゲンガイッパイアルンダケド、ミリルハトクベツ。ソレニ、シイハ、パパモママモ、リディアスモスキ。オウジョウカラデタラ、イッパイダイジナヒトデキタ。ココニイラレルアイダハ、シイハ、オウケノイシジャナクテ、ダイジナヒトタチヲマモルイシニナル』
シイちゃんは紙の上で飛び跳ねて、決意を表してくれた。
「ありがとう、シイちゃん」
「シイ、ありがとう」
私とお母様に撫でられたシイちゃんは、嬉しそうにキラキラ輝いた。
話し終えたあとは部屋に戻り、コニファー先生宛に手紙を書いて、フットマンに届けてもらった。フットマンがコニファー先生からの返事を受け取って帰ってきてくれたので、早速、確認してみると、こう書かれていた。
『できれば、私も嘘だとバレたくないわ。あなたに打つ手があるようだから、見学会は開くことにしましょう。ただ、作業場はかなり狭いということだけ伝えておいてちょうだい』
いくら薬師が儲けているといっても、貴族ほどの生活ができるわけではない。だから、作業場が小さくても当たり前だ。文句を言うようなら中止にすればいい。
あと、問題なのは私が生み出してしまう変わった薬たちを、どうやってコニファー先生に生み出してもらうかだ。
もう、ここはシイちゃんに頼るしかないか。
「シイちゃん、また助けてもらってもいい?」
机の上に鎮座しているシイちゃんに尋ねる。すると、シイちゃんは『マカセテ』と言わんばかりに体を上下に揺らしたのだった。




