2 家族への報告
その日の夕食時、家族全員が揃ったところで、私は学園で嫌がらせを受けていることを報告した。
自分が誰かに嫌われていることを伝えるのは、告げ口したと思われるよりも嫌な気分になって少しだけ後悔したけど、一人で悩んでいても時間の無駄よね。
すると、お父様は眉間のシワを深くして尋ねてくる。
「ミリルにそんなくだらない真似をするのは、どこのどいつだ」
「クラスメイトです」
はっきり答えると、なぜかお母様が吹き出した。
何か変なことを言ってしまったかしら。
「いや、そういうことが聞きたいんじゃないって」
斜向かいに座るリディアスは呆れた顔で私に説明する。
「どこの家の人間がミリルをいじめているのか、ってことだよ」
「ああ、そういうことね。それは失礼しました」
納得して頷き、お父様に問題の相手は侯爵令嬢だということを告げた。
ハピパル王国内では辺境伯家と侯爵家は同等の立場の家柄だと言われている。だが、どちらかといえば、国の要となる辺境を守っている辺境伯のほうが上だとされている。それをわかっているはずだから、普通なら私に馬鹿なことをしてこないはずなのだけど、嫉妬心が勝ってしまっているのだと思う。
「ミリルと同じクラスの侯爵家と言えば、フェルスタッペ家か。どうしてやろうか」
「あの、お父様!」
食事の途中なので、はしたないことはわかっていたけれど、私は立ち上がって宣言する。
「リディアスとの婚約を解消しない限り、このような人はいくらでも湧いてくると思います。これくらい一人で何とかしたいので、私に任せていただけませんか!」
「そうかもしれないが……」
渋るお父様に、私は強い口調で尋ねる。
「お父様は私とリディアスは婚約を解消したほうが良いと思いますか? そうすればこの悩みは解決するんですけど!」
「おい!」
焦った顔で私を見つめるリディアスに微笑みかける。
「大丈夫よ。私、この家に来てだいぶ強くなったんだから! それに、私にはシイちゃんも付いているしね」
食事をするわけではないが、家族の一員としてテーブルの上に置かれていたシイちゃんは、任せてと言わんばかりにきらりと光った。
「本当に大丈夫なんだな?」
「はい。ただ、嫌がらせがエスカレートした時は相談にのってもらえませんか?」
親が出てこないことで、相手が調子に乗る可能性がある。令嬢同士の喧嘩で済ませられなくなった時に、どうして今まで教えてくれなかったのかと責められたくもない。
「わかった。だが、あまりにも舐めた態度を取るならすぐに言いなさい」
「承知いたしました」
なんだろう。今までモヤモヤしていた気持ちがなくなった気がする。
誰かに相談したり話すことって大事なことなのね。




