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【書籍発売中・コミカライズ連載開始】捨てられた第四王女は母国には戻らない WEB版  作者: 風見ゆうみ
第一部

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49 追いかけてきた元両親

 応対してくれたお母様は私が戻ってくるまで、ジャルヌ家で待てばどうかと言ってくれたみたいなんだけど、二人はそれを拒否して、私を追いかけると言い出したそうだ。


 そのことを教えてくれたのは、早馬で追いかけて来てくれたお兄様だった。

 お兄様は幼い頃から、長距離の乗馬ができるように訓練している。だから、馬は替えつつも、日中はほとんど休憩することもなく来てくれたから、馬車で移動していた私たちに追いついたのだ。

 城下町に入るには検問があり、そこで身元を確認してもらっている間に上手く合流することができた。

 国王陛下に謁見できるのは明日の朝のため、夕食後、私が泊まる部屋でお父様と一緒にお兄様から詳しい話を聞くことになった。


「フラル王国の国王陛下は、母さんにいくらでも金は払うからミリルを返せと言っていましたよ」

「そんな話をレイゼルにしたのか」


 お父様が呆れた顔で言うと、お兄様は苦笑して頷く。


「母さんはそれを聞いてミリルとは血が繋がっていないけれど、自分の娘だと答えました。いくら積まれても娘を売ることはしませんってつっぱねていました。あと、自分の娘を売買する親なんて親とは呼べませんって言ってた」

「冷静に答えていたか?」

「はい。まあ、ムッとした顔はしていましたけどね」


 たとえ向こうが信じられない発言をしたとはいえ、相手は王家だから無礼な態度を取れば、不敬にあたるので罰を与えろだとかくだらないことを言いかねない。お母様もそれをわかっていて、何とか怒りを抑えてくれたんでしょう。

 最悪の場合は、シイちゃんが何とかしてくれたかもしれないけど、回避できるトラブルなら自分たちで避けたほうが良いもの。


「帰ったら、お母様にお礼を言わなくちゃ」


 今までは謝らなくちゃと思っていたけれど、今は違う。私を娘にしてくれてありがとうという感謝を伝えたかった。


「そういえば、フラル王国の王妃陛下はかなり老けたように見えたな」


 お兄様が呟くように言った。

 王妃陛下は美容に気を遣っていたから、一気に老けたのなら、シイちゃんの仕業かもしれない。あの人にとって、老化は一番辛いことですものね。


 次の日、ハピパル王国の国王陛下に謁見して事情を説明したところ、お父様に協力してくださることと、私のお願いも聞いてくださることになった。私の願いを聞いてもらうため、私たちはフラル王国の両陛下がやって来るまで、城下に留まることになった。

 元家族のせいで、お父様の仕事を滞らせるはめになってしまった。領民に迷惑がかからないように、お父様の代わりに働いてくれている、お父様の側近たちにも迷惑をかけている。それに、私もお兄様も王都に来るために学園を長期間で休むことになってしまった。色々と迷惑料を請求したいところだと考えていた時、フラル王国の両陛下が検問所にたどり着いたという連絡があった。

 関係各所に連絡を入れたあと、私はお父様たちと一緒に検問所に向かった。

 馬車から降りると、フラル王国の国王陛下の怒鳴り声が聞こえてきた。


「いつまで待たせるつもりだ! 私はフラル王国の国王だぞ! 確認なんていらんだろう!」

「申し訳ございませんが、もう少しだけお待ちください」

「もう少しもう少しって言って、どれくらい経ったと思っているんだ! かなりの時間を待たされているんだぞ!」


 検問所の職員に詰め寄っているフラル王国の国王陛下に話しかける。


「フラル王国の国王陛下にご挨拶申し上げます」

「ミー! ……あ、いや、ミリルか。お前を捜していたんだ」

「お会いできて光栄です」


 国王陛下はミーリルと言いかけたみたいだけど、ここではまずいと気が付いて止めたようだった。光栄だなんて思っていないけれど、社交辞令でカーテシーをした私に王妃陛下らしき人が笑顔で近づいてくる。


「ミリル、あなたに話があるの。ここではなんだから場所を変えましょう」


 王妃陛下らしき人は私が子供の時には一度も見せなかった笑みを浮かべていた。その顔には多くの皴が刻まれ、まるで老婆のように見える。

 目の前にいる老婆はフラル王国の王妃陛下なのよね?

 お兄様が持ってくれているシイちゃんが入ったポーチに目を向けると、シイちゃんが頷くようにポーチを光らせた。

 ディング陛下は私たちにも同席するようにとのことだったので「体調が悪くなった」などと言って、何とかして帰ろうとする二人を、無理やり王城まで案内した。

 

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