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62.マナポーター、スタンピードの調査に向かう

「それにしてもスタンピードの発生か。しかもアランが逃げてすぐ、跡形もなくモンスターが撤退したと――気になるね……」


 ある日の冒険者ギルドでのこと。

 僕たちはテーブルに座り、遅めの朝食を食べながら今後の方針を話し合っていた。


 アメディア領での問題を解決した特別恩賞として、大きな報酬が与えられていた。

 そのためクエストを受けなくとも当分の間お金に困ることは無い。

 それでも何もせずにノービッシュにとどまるという選択肢はなかった。



「やっぱり先輩も気になりますよね?」

「うん、明らかに怪しいもん。知能を持ったモンスターが、大規模な群れを率いているなら――それほど怖いことは無いよ」



「イシュアがそう言うなら決まりなの! 少し調査してみるの!」


 リリアンが手をパーンとたたき、無邪気な笑みで告げた。

 リーダーから信頼されているのは嬉しいが、ここまでアッサリと僕の言うことで行動が決まって大丈夫なのかなと不安になる。

 そんな話を聞きつけ、受付嬢がこちらにやって来て、


「スタンピードの調査は必要だと思っていたのですが、どうしようかずっと困っていました。イシュアさんたちが引き受けてくださるなら安心です!」


 そんなことを言い出した。



(僕たちなら……?)

(リリアン率いる勇者パーティなら安心――そう言うことだよね?)


 ちょっとした引っかかり。

 しかしリリアンは、何も気にした様子もなくニコニコと笑みを浮かべていた。


 そうして僕たちは、スタンピード発生の調査に向かうことになった。




◆◇◆◇◆


「お久しぶりです! イシュアさんにリリアンさんも。すっかり英雄になってしまいましたね――!」


 スタンピードの調査をしたいと決めた僕たちに、受付嬢は紹介したい人がいると口にした。

 待ち合わせ場所に現れたのは見覚えのある顔。

 アメディア領のハーベスト村の自警団のリーダー(チェスターと名乗った)だった。



「スタンピードに巻き込まれて、頼みの綱の勇者は逃亡。お疲れ様でした……」

「せっかく捕らえたのに……。取り逃がしてしまって申し訳ありません」


 自警団のリーダーであるチェスターは、勇者を取り逃したことに責任を感じているようだった。

 彼は何も悪くない。



「そんな追い詰められた状況なら、勇者を頼るのは当たり前です。まさか仲間に斬りかかって、自分だけは逃げるなんて……」

「勇者として、あり得ないの。次に会ったら……容赦しないの!」


 勇者に(いきどお)っているのは、何も僕だけではない。

 同じく勇者であるリリアンこそ、アランの行動は許せないものなのだろう。



「今日は道案内よろしくお願いします」

「場所はよく覚えている。任せてくれ」


 頭を軽く下げる僕たちに、チェスターは力こぶを作って見せた。

 そうして僕たちは、スタンピードが目撃された地点に向かうことになる。




◆◇◆◇◆


 チェスターの手配した馬車で移動すること半日。


「ここだ」

「え、こんな人通りが多い場所でですか?」


 馬車を止めたチェスターの言葉に驚いたのは、僕だけではない。

 ここはモンスターの発生しやすい森の中や、瘴気の濃い魔界に隣接した土地ではない。



「ああ。最初に見た時は何が起きているのかと目を疑ったよ」


 他の領地に向かうために比較的整備された道だ。

 モンスターの群れはおろか、小型のモンスターの発生すら珍しい。

 それこそ危険なモンスターが発見されれば、クエストが発令されて、すぐにでも討伐隊が編成されるからだ。



「現地を見ただけじゃ分からないね。でもこれだけ人通りが多ければ、他にも目撃した人がいるかもしれないね」

「早速、聞き込み調査なの!」


 リリアンが、えいえいおーと気合を入れた。


 そうして現地で聞き込みを続けること数時間。

 僕たちは、その日この辺りを通りかかったという行商人を見つけることに成功した。



「あー、その日のことはよく覚えているよ……」


 アメディア領まで雑貨品を売りに行った帰り道のこと。

 行商人は顔を青くしながら、その時を振り返った。

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