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39. 新生・勇者パーティ誕生!

 どうして、こんなことになったのだろう。

 目の前の惨状を前に、僕は頭を抱えていた。

 同じテーブルには――酔っぱらいが3人。


(店員さん!?)

(いくら打ち上げだからって、気を遣ってお酒なんて持ってこなくて良かったんだよ!?)


 店員さんは「今日はうちのおごりだよ!」と、とても良い笑顔を浮かべていた。



 そして気がついた時には、手遅れだった。

 リリアンとアリアは笑顔で、ごくごくと届いた飲み物を飲み干し――


「先輩、先輩! このジュース美味しいですよ?」

「アリア、それお酒〜!」


「うわ〜ん! またやらかしたの〜……」

「リリアン〜!? 誰だ、ウーロンハイなんて持ってきたの!?」


 一瞬で出来上がってしまった。


 それだけではない。


「良かったなあ、リリアン! ほんとうに、ほんとうに……どうなることかと――!!」


 ディアナが、ひどく上機嫌にリリアンの背中をバシバシ叩く。

 頼みの綱のディアナまでもがお酒を口にしてしまい(まさかディアナまで酒に弱いと思わず、僕は特に止めなかったのだ)――テーブルに、さらなる混沌が訪れた。



(ど、どうすんのこれ!?)


 収拾が付かない。

 ――そんなときだった。


「「イシュア様!!」」


 元・パーティーメンバーが、偶然にも食堂を訪れたのは。

 まるで救世主のように感じられた。




(情けないにも程があるけど、あとで必ずお礼はするから……!)


 「ミーティア、リディル! 元・パーティメンバーを助けると思って! どうかこの惨状を打開するために、力を貸して――!!」


 困惑に目を丸くするふたり。

 それでも嫌な顔せず引き受けてくれたので、2人はまさしく天使のような心を持っているのだろう。



「すぴぃ、すぴぃ」

「うっぷ、気持ち悪い……」

「えへへ、先輩がふたり居ます~♪」


 彼女らの力を借りて、僕たちはどうにか無事に宿に戻るのだった。




◆◇◆◇◆


「「是非とも私達を、イシュア様のパーティーに入れて下さい!!」」


 宿に戻り、酔っぱらいを寝かしつける。

 ようやく落ち着いた頃、僕はミーティアとリディルに、そんなことを頼まれていた。



「魔導剣士に賢者だよ? ふたりなら、どんなパーティからでもお呼びがかかるよ。それなのに、どうして僕と?」


「イシュア様は、元・勇者パーティーの実質的なリーダーッス。確信したッスよ、イシュア様は、やがて歴史に名を残す人になるって」


 自信満々に言い切るミーティア。


「うみゅう。イシュア様のマナは、ぽかぽかして気持ちいい」


 リディルはそう言って、ふにゃりと表情を緩める。



(リリアンに続いて、このふたりも……)

(最近、どうにも僕のことを、過大評価する人が多いような気がするね?)



「そう言われても、このパーティのリーダーは僕じゃない。ついさっき結成したんだけど、リーダーはリリアンだからね」


「え? リリアンって、イフリータを倒した勇者・リリアン!?」

「うん、勇者のリリアンさん。エルフの里の異変を解決――ユグドラシルを蘇生したときに、ちょっとした縁があってさ」



 当然、ふたりはリリアンのことを知っていた。

 四天王を一度退けたリリアンは、勇者の中でも有名なのだ。


「ユグドラシルを蘇生!?」

「アカン、イシュア様がどんどん先に行ってしまう……」


 ふたりは口をあんぐりと開けた。



「ウチらでは、実力不足ッスね……」

「そんなこと無いよ。あのパーティーでは、何度助けられたことか」


 寂しそうに言うふたりに、僕は慌てて声をかける。

 アランの無茶にどうにか対応できたのは、ふたりの協力も大きかった。


「ふたりが居るなら心強いよ。リリアンさんが起きたら、是非ともって頼んでみるよ」


 新たに結成された勇者パーティ。

 この2人は、間違いなく心強い味方になるはずだ。



「ふたりともクエスト終わったばかりなんだよね? こんな時間までごめんね」


「他ならぬイシュア様のためッス。駆けつけられて良かったッス!」

「みー、気にしない。……でもアリアには、きちんと釘を指しとく」


 そんなありがたいことを言うふたり。

 アリアを介抱したリディルは、恨めしそうにそんなことを口にした。



(ふたりとも冒険者として元気にやってるみたい)

(ほんとうに良かったよ!)


 変わらぬ様子に安心した。

 ふたりが別室に向かうのを見送り、僕もそのまま眠りに落ちるのだった。




◆◇◆◇◆


「ふえ? このふたりをパーティメンバーに?」

「うん。元いたパーティのメンバーなんだ。実力は僕が――」


「イシュアさんが言うなら間違いない。是非ともお願いするの!」


(そんなアッサリ決めて良いの!?)


 説得するための材料を、一晩かけて考えたのは何だったのか。

 そう思うほどアッサリと、リリアンはふたりのパーティ入りを認めるのだった。




「良かった! ミーティアもリディルも、改めてよろしく。リリアンさんの判断に感謝――」

「う〜」


 そこで、もじもじと何かを言いたそうなリリアン。



(なんだろう)

(やっぱり不満はあるのかな……?)

 

「リリアンさん、パーティは最初が肝心だよ。言いたいことは、はっきりと言うべきだよ」

「なら――!」



 リリアンは意を決したようにこちらを向き、


「呼び捨てにして欲しいの。ミーティアとリディルにアリアも。みんなずるいの――!」


 恥ずかしそうに、そんなことを小声で言った。



「い、良いの?」

「もちろん! 是非是非、私のことも呼び捨てでお願いします!」


 そんなにワクワクした顔でお願いされたら、断るなんて選択肢は存在しなかった。



「改めてよろしく、リリアン! ……僕のことも、呼び捨てで良いよ?」

「ひゃいっ! イシュアさん! ……イシュアさん。――――イシュア?」


 上目遣いでリリアン。


(そ、そんな恥ずかしそうに、何度も呼ばないで?)

(なんか僕まで、恥ずかしくなってきちゃうじゃん……)



「イシュアさん、もし良かったら後で新しい武器を一緒に――」


(しかも「さん」付けに戻った〜!?)




 そんなやり取りをしていると、


「先輩先輩! さっそく今日の依頼を受けに行きましょう?」


 どうしたのだろう。

 何故かアリアが、僕の腕をむんずと掴んだ。

 そうして、スタスタと歩き出すではないか。



「ま、待つの〜! 今日はイシュアさんと、買い物に行く予定なの〜!」

「え、初耳だよ……?」


「そんな抜けがけ、許しません! ……じゃなくて、パーティ組んだばかりですし、連携を取る練習をするのも大切です!」


 そんなやり取りとともに。

 僕たちは、クエストを受けに冒険者ギルドに向かうのだった。

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