21.マナポーター、エルフの里の偵察依頼を受ける
僕たちがこの街にやって来て1週間ほどが経った頃だろうか。
僕とアリアは、今日も元気に冒険者として活動していた。
すっかり定位置となってしまったハズレ依頼置き場。
いつものようにクエストを探し始め――珍しい依頼を見つけて、思わず顔を見合わせた。
「この依頼、どう思う?」
「エルフの里の偵察依頼ですか。……いかにもヤバそうな依頼ですね?」
タイトルは『エルフの里の偵察依頼』。
依頼主は不明で、詳細情報も一文のみ。
「『実際にエルフの里を訪れて、何か異変があったら知らせて欲しい』て書いてあるけど……。何だろうね、この依頼?」
「達成条件が曖昧すぎますよね」
アリアも不思議そうに首を傾げる。
その癖――報酬は金貨30枚。
明らかに相場より高価だ。
旅費を考えても破格と言ってよい。
その癖、目的も依頼主も秘匿されている。
(ここにあるのは、誰も受ける人が居ないクエストなんだよね)
(妙な依頼を受ける訳にはいかない。アリアを危険なことには巻き込めないし……)
――これこそ"いわくつき"のクエストなのだろう。
僕はそっとその依頼を置いた。
「え、イシュアさん!? そのクエスト受けないんですか?」
慌てた様子でやってきた受付嬢。
「ごめんなさい。ちょっと僕の手には負えないクエストかもしれないので」
「え? ただエルフの里に行って『異常なし』て報告するだけのクエストですよね?」
(ええ……?)
(受付嬢の認識、それで良いの!?)
「依頼人から目的まで、すべてが秘匿されてる依頼です。冒険者たち全員が危険視したから、ハズレ依頼なんて扱いを受けてるんじゃないですか?」
僕の質問に、受付嬢はアチャーと頭を抑えた。
「イシュアさん……ここだけの話ですよ?」
アーニャさんは周囲に人がいないのを確認すると、声をひそめて話し始めた。
「その依頼、ギルマスからなんです」
「ど、どういうことですか?」
「処理に困ったハズレ依頼を処理しているイシュアさんには、随分と助けられていますから。ギルマスもひどく感動して、ぜひとも特別恩賞を渡したいなんて話が出たんですよ」
「と、特別恩賞だなんてとんでもないです! そんな気を遣って頂かなくても、僕もアリアも今の仕事に満足してますよ?」
慌てて否定する。
特別恩賞と言えば、ギルドに特別な貢献をした者に贈られる品物だ。
いくら何でも身の丈に合わない。
「――予想通りの返事でした。そこがイシュアさんの良いところなんですけどね」
「さっきの話と依頼は、どんな関係があるんですか?」
「特別恩賞は渡せない、となったらギルマスが言い出したんですよ。めちゃくちゃ美味しい依頼を"ハズレ依頼"として置いておいたらどうかって」
ギルドマスターが、特別恩賞の代わりに美味しいクエストを用意した。
そして、それを僕が受けるであろうハズレ依頼に潜ばせた。
――受付嬢の話をまとめると、そういうことらしい。
「ほんとうに見てくるだけで構いませんから。ギルマスの顔を立てると思って! ちょっとした観光だと思って、エルフの里への旅を楽しんで来て下さい」
そう言って受付嬢は、手を合わせて頼み込む。
「先輩! ここ最近は、ずっとクエスト漬けでした。たまには羽を伸ばしましょうよ!」
思えばクエストが楽しすぎて、ついつい依頼を受けすぎていた。
僕だけならともかく、アリアまで付き合わせている――こういう機会に思いっ切り羽を伸ばすのも良いかもしれない。
「事情は分かりました。そういうことなら……是非とも受けさせてください」
僕がそう答えると、アリアはヨシッ! とガッツポーズ。
「先輩、先輩! 私、世界樹が見てみたいです。エルフの里にあるんですよね?」
「こら、アリア。あくまでクエストで行くんだぞ?」
「はーい! あ、先輩先輩! ユニコーンも見てみたいです!」
ニコニコと上機嫌なアリアを見て、僕までつられて笑顔になる。
そうして僕たちはエルフの里に向かうことになった。
◆◇◆◇◆
「危険なクエストを受けてしまったイシュアさんをお助けして、信頼を勝ち取ろう大作戦。今日もスタートなの~!」
イシュアたちを、こ~っそりと見守る者たちがいた。
勇者・リリアンと剣聖・ディアナの2名である。
「な、なあリリアン? あの2人が危ない目に遭う場面が、ちっとも想像できないんだけど……」
「――今日もスタートなの~!!」
「やっぱり勇気を出して、ちゃんとイシュアさんにお願いするべきだよ」
「そ、そ、そ、そんなこと出来る訳がないじゃん!」
この一週間でリリアンは……隠れるスキルだけが上達していた。
イシュアの視線に入りそうになったら、それを第六感で察知。
神速で物陰に隠れられるのだ――誰得スキルである。
「という訳で、エルフの里の周りにいる賞金首クエスト取ってくるね」
とてとてと走り出したリリアンがとってきたのは、
「『Aランク賞金首・オーガキング・変異種の討伐』ね。相手に取って不足無し――良いんじゃないか?」
「うん、私たちなら楽勝だよ~」
リリアンが何の気負いもなく受注したそれは、ギルドに貼られた多数あるクエストの中でも最高難易度の1つだった。
受付嬢が何の躊躇いもなくリリアンに任せたことからも、ギルドの彼女たち勇者パーティへの信頼の高さが伺える。
否、それだけでなく――
(めっちゃ微笑ましいものを見るような目で見られてる……)
鼻歌まじりにスキップするリリアンを、ディアナはため息まじりに見る。
このまま放っておいたら、延々とステルス能力だけを磨くことになりかねない。
(――そろそろ背中を押してやらないとな)
内心で呟くディアナだった。
二章スタートです。
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