短編 積み重なる魂
絶望の中で希望という後悔を吐く女の物語
俺って、つまり今こういう状態にいるよなっていうものを、すべて比喩にして物語化した9000文字短編。作中暴君が登場するが、それは"現実"の象徴だ。
不条理に理由などはない。しかし面倒なことに、その不条理を受け止めながら生き続ける人間には、不条理に堪えうる"理由"がいるのだ。でなければ押しつぶされてしまう。
諦めたら死ぬ。手を止めたら死ぬ。次の一歩を踏み出すには、生き抜くこと。それしかない。
その結果見えてくるものに希望などはないかもしれない。だけど、俺たちはヤケを起こしたらお終いなのだ。
後悔よりも大切なもの何か。失えないものは何か。
まぁ、そんな作品。
何度か言った気もするけど、つくづく、今でしか描けない作品だと思う。
というか、同じ筆者でも、今描きたい作品は、きっと今しか描けないものだ。
人間は立場で生きるものである。立場が変われば、ものの見方が変わる。
例えば自分が裁判官になって殺人事件を取り扱うとして、最愛の者が被害者だった時と、逆に加害者だった時、まったく同じ哲学で裁判ができるだろうか。
私はできないと思う。少なくとも私は。
価値観は、立場によって変わるのだ。人間は立場で生きている。そして立場というものは、一定の周期を持って変わっていくものだ。卒業や就職、転勤、転職、昇進、結婚、出産、事故事件、別離、etc....
なので、今描ける作品が二年後三年後描けるとは限らない。その時の慣性はその時にしかないものなのだ。
だから、描きたいものがあるけど描かないというほど、もったいないことはない。
自分に描きたい衝動があるならその衝動がある間に描くべきなのだと思う。だって描けないよ?その作品。数年後には。
作品の話とは関係ないけど、だから、今自分がこの作品を残せたことは、よかったことだと思うんだ。




