短編 オレの名前はアルバート
ノラ猫と、学生妊娠してしまった少女の話
猫視点。……こんな話、今まで腐るほど描かれたのだろう。ってくらい、ベタな展開。それでも自作品にストックしておきたかった。いいじゃん、こういう世界。1万文字完結作品。
矢久の家は、母親が猫大好きだったが、父親が嫌いだったのと実家は猫不可物件だったため、飼い猫は一匹たりともいなかった。
しかし、その分ノラ猫に餌をあげていたことで、ずっとずっと、猫が出入りしている家となっている。その数は今まで、五十匹は下らないではないだろうか。
いろんな猫がいた。一口に猫といっても、人間と同じく、個々に性格が違い、人生も違う。それぞれにいろいろなドラマがあり、大昔になるが『ゆきのまち幻想文学賞』に、壮絶な三日間を送って他界した一匹の子猫の話を送ったこともある。
そう、猫というのは矢久にとっては、それだけでドラマなのだ。
そんなノラ猫たちが何を考え、ドラマを形成していったのか……それを、創造できる限り綴りたかったのが本作の狙いであり、特にそこに大きな面白みを、私は求めなかった。
だからありきたり、ベタ。なんのひねりもない物語で誰かが反応してくれたためしもないが、かまわない。あいつらは限りなく純粋に自分の物語を紡ぎ、生きて死ぬまでを駆け抜けていったのだ。
そういう単純で純粋なドラマを、ベタでも自作品にストックしておきたかった。




