短編 風は未来へ
出産と、成長の物語。
嫁が、上の娘を産む時、矢久の家にはいろいろなドラマがありました。
それから数年が経ち、いろいろな想いがつまった先に生まれた娘に、とうとう幼稚園に通う日がやってきました。
あの日の、雲一つなかった青空と、病院から生還し再び肩を並べて歩き始めた嫁を思い出し、立派に地面に立って通園バスを待つ娘と、彼女を待ち受ける未知の日々を想像し……。
不安と、慟哭と、感動と、涙がごっちゃになって伝う頬を、いつもいつも優しい風がなでていた。その風が家族にとって永遠のものでありますように……。
そんな想いを、残しておこうと描き起こした。自分、作家なんで。
1万文字の短い想いだけれども、いつか見直した時、その風の匂いを思い出せたらと思う。今はテレくさすぎて、読むこともできない。
恥はかき捨て?ということで、一つ純文学のコンテストに出したが落選。もう満足。
きっともう、誰にも、嫁にも娘にも見せることのない作品。
こういうのって、娘が大人になって、私がコロっと死んだりなんかした時、ふっと見つけたら、号泣してくれるだろうか。
俺たちは一生懸命、親になるために笑って泣いた。そんな感情など知る由もない娘は今、小学生となって、ナマイキ盛りに日々を生きている。
この娘がこれからどんなドラマを繰り広げていくのか。……風は未来へとやわらかく……。




