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短編 蝉の咆哮

 未来の自分に、「もう、小説には未来はない」と言われた話。


 自分をモチーフに主人公を立てると、作家志望の矢久からは作家が生まれる。

『あの空に繋がるまで』『蝉の咆哮』『~あの日から~』『女髪の手のひら』と、作家志望の主人公が出る自作品は結構ある。このうち、『~あの日から~』を除いてすべて、作家になりたくてもなれない男を描いている部分、筆者本人の今を窺わせる(泣)。


 未来の自分という不思議要素が入っているものの、純文学側の作品なのかなとか勝手に思ったため、そちら側のコンテストに提出した原稿三十枚の作品。

 落選したものの、その後カクヨムに投稿してみたら大絶賛された。

 これ、あれだよね。カクヨムに限らずweb小説サイトにいる読者って作家を目指す人たちも多いから、気持ちが分かるんだろうね。

 散々感激されたので、「じゃあこれまだなんかのコンテストに使えないの?」と思ったが、原稿三十枚というのは、流用ができづらい分量で、あの作品は削る広げるという類の話ではないので諦めた。


 本作の主人公には嫁がいる。

 私にも嫁がいる。

 嫁がさ……いつまでもうだつの上がらない私をどのような気持ちで見ているのか。

 それは、実際本人には聞きづらいことで、何もいわずに見守ってくれていることそれだけで、申し訳なくもありがたいことなのだと思う。

 そんな嫁が、どんなことを考えているのか……勝手に推し量って、作品になっている。その結論は独りよがりなのかもしれないけど、せめて、そういう風に考えてくれている彼女にいつか恩返しを。ちゃんと俺が立派になって、嫁が望むことをさせてやりたい……と思えるなら、独りよがりも悪くないんじゃないだろうか。

 大切なのは、俺が諦めないこと、それだけだ。たとえ「もう、小説に未来がな」くても。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませていただいて、胸がしめつけられた物語でした。 これは、とても響いて良かったですけど、気持ち的にキツいものはありましたね(^_^;) [一言] 頑張ってくださいね! このお話を思い起…
[一言] 自分の就職した業界が斜陽産業だと知ったとき。 自分の勤めているお店が閉店になると知ったとき。 モチベーションが下がりまくって、まるでやる気がなくなる人と、最後まで務めを果たす人がいます。 …
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