論功行賞
少し短めになってしまいました。
天正5年 近江国
善郎は紀州征伐を成功させ、近江国の自分の領地にある屋敷に帰って来てきた。それを妻の小雪が出迎える。
「あなた様、おかえりなさいませ。ご無事なによりです」
微笑んで出迎える小雪に善郎は、
「あぁ、ただいま」とこちらも微笑んで返す。
善郎が座った、正面に小雪は正座し改まって話す。
「あなた様にお伝えしたいことがあります」
「伝えたいこと?」
「子ができました」「本当か!」
善郎は飛ぶように喜んだ。善郎と小雪にとってはじめての子どもだからだ。
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屋敷で二人の時間を過ごした翌日、善郎は主である織田信長がいる安土城に向かいました。安土城に着くと評定の間に通された。そこに信長が少し遅れてやってきた。
「善郎!紀州征伐、大義であった」「はっ、有難きお言葉にございます」
「今回の褒美として、紀伊国一国をそなたに与え、紀伊守の位も与える」
その信長の言葉に善郎は驚いた。六万石の領主から二十四万石の国持ち大名に出世するからである。
「その上で、雑賀衆もそなたの配下として与える。うまく使え」
「はっ!」
論功行賞が終わり、次に信長は本願寺に対する新たな方針を示す。それは九鬼水軍に信長が作らせていた鉄甲船と善郎が降伏させた雑賀水軍を動員し、以前失敗した本願寺の海上封鎖を再び実行しようというものだった。
海上封鎖を実行するのは一年後、その命を受け善郎は小雪と家臣たちを連れ紀伊に入り、鷺森御坊を仮住まいにした。その後、善郎の元に鈴木孫一を始めとした雑賀衆や紀伊国国人が鷺森御坊に挨拶にやってきた。
しかし挨拶に代理を出して直接こない国人も少なくない。これはまだ織田に心から従っていない証であった。
「こればかりは今はまだ仕方ないが、これが長く続けば問題だ」
善郎は来年に向けて準備をしながら、紀伊国人に対しての慰撫を行ってくい。




