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『おなごが困っていたら助けなさい』という祖父ちゃんの遺言を守って助けまくったら大変なことになった  作者: マノイ
閑話(夏休み編)

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閑話 大変なことになった(コ〇ケ編)

「和也君、これどう思う?」

「凄く良いと思います……」

「やっぱりそう思う?」

「はい……」

「じゃあ、やろっか」

「……次回にしません?」

「鉄は熱いうちに打て、だよ」

「……………………はい」

「よーし徹夜だー!」

「なんで嬉しそうなんですか!」


 くそぅ、せっかく佐川先輩が無茶しないように僕が計画立てて進めてもらったのに!


 まさかギリギリで新しい話を思いつくなんて予想外だった。

 しかも無茶する価値がある程には面白いって思っちゃったし。

 これを狙って案を温めてたんじゃないよね。


 夏に開催される超大型イベント、同人誌即売会。

 文芸部の佐川先輩は当然このイベントに出店予定だ。


 僕はそこで売る漫画作りの手伝いをしていた。

 今回、その手伝いは僕だけではない。


「検見川さんと畑尾さんも……」

「もちろんキバるよ!」

「がんばりますぅ!」


 いつもの検見川さんと、漫画大好き畑尾さん。

 佐川先輩のジャンルは畑尾さんの好みとは違うけれど、同じ漫画好きということで手伝ってくれている。


「畑尾さんはお手伝いの経験あるの?」

「はい、友達の手伝いをしたことがあります」

「そうなんだ。今回はそっちの手伝いは良いの?」

「もちろんですぅ。こっちに参加するために向こうはマッハで終わらせたです」

「あはは……」


 自分から地獄に足を踏み入れなくても。


「椙山くんとお泊りですぅ」


 僕はこれからの作業をそんな平和に表現したいとは決して思わない。

 でも小さくガッツポーズをして意気込む姿が子供っぽくてちょと可愛い。


「頑張ろうね」


 思わずまた頭を撫でてしまった。


「こ、こっここっこっこここっこ」

「?」

「根性出しますぅ!」


 ああやっぱり分かってたのか。

 ここは戦場なのだと。


「さぁみんな、頑張ろう! 栄養ドリンクの準備は万端だよ!」


 祖父ちゃん、世の中にはまだまだ知らないことが沢山あるんだね。

 まさかあの地獄の特訓の時と同じくらい辛いことがこの世にあるなんて思わなかったよ。


――――――――


 修羅場については今回は省略する。

 ひたすら地味な絵で面白味が無いからね。


 そしてやってきたイベント当日。


「ありがとうございました!」


 僕は佐川先輩のブースで売り子をしていた。


「先輩、暑いんですけど」

「我慢してね」

「本当にコレ必要ですか?」

「当然。むしろそれ外したら騒ぎになって次回以降のイベント開催が危うくなるから絶対に外しちゃダメだからね」

「えぇ……」


 僕は今、顔全体を覆う仮面をつけている。

 何かの作品に出てくる仮面らしいけれど、灼熱かつ湿度が高い建物内での仮面は熱気が籠って不愉快極まりない。

 視界も悪いしお肌にも悪いし一刻も早く外したいが、それは絶対にダメだときつく言われていた。


「騒ぎになったらイベント出禁にさせられるから頼むよ」


 そう言われたら我慢せざるを得ない。

 イベントが始まる前にスタッフの人と真面目な顔で相談していたからきっと本当の事なんだろう。


「僕はこのイベントに初めて来ましたけど、かなり活気があるんですね」

「そうでしょうそうでしょう。この空気が好きなんだよ」

「分かる気がします」


 空気といっても香りの方じゃないよ。

 そっちはとても残念なことになっているから。


 佐川先輩の漫画は人気ジャンルとのことで、開場直後から多くの人が近くの通路を行きかっていて、買いに来てくれる人も結構多い。 


「二人は大丈夫ですかね」

「今ごろ汗だくになって動き回ってると思うよ」

「この暑さの中でですか、心配ですね」

「慣れてるから大丈夫よ」


 検見川さんは佐川先輩が欲しい本を買いに、畑尾さんは自分の趣味の本を買いに行っている。


「和也君も見て回ってきたら?」

「良いんですか?」

「うん、お願いされてたでしょ」

「それじゃあお言葉に甘えて」


 見て回ると言っても僕は特に本が買いたいわけではないから雰囲気を味わうのがメインだ。

 それともう一つ、ある女の子達からイベントに来たら絶対に寄って欲しいとお願いされていたのでそちらへ向かうことにした。


「この辺りっぽいな。へぇ~面白い」


 そこはコスプレエリアだ。

 様々な工夫を凝らしたコスプレイヤーさん達が至る所で写真を撮られている。 


「みんな楽しそう」


 本を買う人達の中には必死だったり真剣な表情の人も多かったけれど、ここでは誰もが笑顔でコスプレを楽しんでいた。

 邪な雰囲気のカメラマンもいるけれど、それはまぁ本の方も同じだ。

 僕はこっちの雰囲気の方が好きかな。


 ちなみに検見川さんにメイド服で参加してみたらどうかと打診してみたけれど断られちゃった。


『アタイがご奉仕するのは椙山クンだけや』


 なんて照れていたけれど、あなたカフェで働いてますよね。

 スカートを少し持ち上げてたけれど深い意味は無いと信じたい。


 メイド服じゃなくても似合いそうなのに勿体ない。

 でもよく考えたら知り合いの女の子はみんなコスプレ似合いそう。


「う~ん、何処にいるのかな」


 肝心の女の子達を探すけれど見当たらない。

 休憩中とかなのかな。


「もしかしてあそこだったりして、まさかね」


 気になったのはひときわ大きな人だかりが出来ている場所だ。

 輪の外からだとレイヤーさんの姿が見えないくらいに人が集まっている。


 違うとは思ったけれど念のため近づいてみたら、そこが正解の場所だった。


「凄い人気。でもそうか、これなら納得だ」


 そこにいたのは二人の妖精。

 比喩ではなく、妖精のコスプレをした二人の女の子だ。


 何の作品のキャラクターなのかは知らないけれど、場違いと思えるくらいに可愛らしい。

 透明な羽と植物を意識したらしき緑と黄色の薄手の衣装。

 プロがデザインしたからか、細部に至るまで出来が良すぎる。


 そしてそれらが二人の素の可愛らしさを際立てていた。


「でもこれだとお話は出来ないかな」


 どうやら二人は順番に写真を撮られているらしい。

 色々なポーズをお願いされて決めているが、どれもとても似合っていて僕も撮りたくなってしまう。

 邪魔をするのも悪いかと思い僕はひとまずその場を離れようとしたけれど、二人は僕のことに気が付いたようだ。


 まぁ珍妙な仮面をつけているから目立つもんね。


「一旦撮影は」

「ストップします」


 そう言って八乙女姉妹は僕の方へとやってきた。


「変な仮面」

「おもしろい」


 そういって悪戯顔でクスクス笑う姿は本当に妖精のようだった。


「とても似合ってるよ。凄い可愛くてドキドキしちゃった」


 コスプレなんだから素直に評価した方が嬉しいだろうと思い、僕は遠慮なく思ったことを伝えた。


「殺し文句」

「ずるい」


 なんでそこで照れちゃうの。

 コスプレだから見られて可愛いって言われるのはむしろ普通だと思うんだけど。


「なんだよあいつ」

「チクショウ、女の顔になってる」

「くそ、あんなキモイ仮面野郎如きに俺達の妖精さんが!」


 おっと、二人を独り占めする形でヘイトを溜めてしまったようだ。

 ここは早めに切り上げようか。


「仮面」

「とって」


 周囲の反応を見て遠慮しようとしたら、八乙女姉妹が仮面を外すように言って来た。


「え、でもこれ絶対に外さないようにって先輩に言われてるんだけど」

「一瞬だけだから」

「大丈夫」


 そうなのかな。

 でも八乙女姉妹のお願いなら断れないか。


 僕はそっと仮面を外した。


「なんだあのイケメンは!?」

「妖精とイケメン、悔しいが絵になりすぎる……」

「俺達にチャンスは無いと言うのか。神はなんて残酷なんだ!」


 あの人凄いな、血の涙を流しているけどあれもコスプレなのかな。

 おっと、本当にすぐ騒ぎになりそうな雰囲気になっちゃった。

 仮面を装着しないと。


「これで」

「大丈夫」


 さっきまでは八乙女姉妹に向けた視線だらけだったけれど、僕に対する視線もかなり増えた。

 また、八乙女姉妹と話をしていることに対する不平不満も消えたようだ。


「もう少し」

「お話しよ」


 せっかくの八乙女姉妹の渾身のコスプレだ。

 僕もこれで帰るのは寂しかったから丁度良い。


 周囲の人には悪いけれど、もうしばらく二人とお話をさせてもらうことにした。


――――――――


「今度は三人きりで」

「この衣装を堪能して」


 なんて言葉を最後に、僕はコスプレエリアを後にした。

 『堪能して』の言い方が色気を感じたけれど気のせいだろう。


「思ったより時間かかったな」


 混雑で移動が制限されていることもあり、考えていた時間よりも長くブースを離れてしまった。

 先輩も休憩したいだろうから急いでブースに戻る。


「せんぱ……あれ?」


 先輩のブースには一人の男性がいて本を試し読みしていた。

 それだけなら何もおかしくはない普通の状況だ。


 しかしその男の雰囲気がどうにも怪しかった。

 悪意を垂れ流しており、ページを全然めくらず、視線が不自然に机の上に向けられていた。


 まさか泥棒か何か?

 でもお金を入れてある箱は机の下に隠してあるからスリ取るのは出来ないだろう。


 まぁいいや。

 僕が悪い事なんかさせない。


 僕がブースの所に辿り着く直前、男は持っていた本を手に逃げ出した。


「ちょっと待って!」


 先輩が叫んで男に手を伸ばすが、机を乗り越えて通路に出た頃には男は人ごみに紛れてしまっていた。


 万引き?ってこの場合もそう言うのかな?


「先輩、僕に任せて下さい」

「和也君、戻って来てたんだ!」


 人が多かろうが人ごみに隠れようが僕には大して意味がない。

 例え見えない場所に居ても気配で分かるからね。

 僕は人の波をスムーズにかき分け、その男の元へと素早く移動して肩を掴んだ。


「いでででで!」

「ちゃんとお金を払って下さいね」

「分かった、払う。払うから。ほらよ」


 妙に素直だな。


 この感覚は!


 悪意はまだ消えていなかった。

 そしてそれはこの男だけではなく背後からも感じられた。


「先輩!」

「え?」


 先輩の方を振り向いたら別の男が机の下に手を伸ばしてお金を奪い取ろうとしていた。


 そうか、こいつらペアの窃盗犯だ。

 一人が本を堂々と盗んで注意をひいて、その間に金を盗むつもりか。


「ほいよ」

「ぎゃああああ!」


 最初の男に『お仕置き』をして地面に転がし、もう一人の窃盗犯の元に駆け寄りそちらも捕縛する。


「速!?」

「はい大人しくしててね」

「ぎゃああああ!」


 人が多いから簡単に逃げられるとでも思っていたのかな。

 甘い甘い。

 残念ながら例え僕がこの場に居なかったとしても、その箱に触れた時点で地の底まで追いかけられるちょっとした仕組みになってるんだ。


「和也君……」

「はい、先輩」

「うん、ありがとう」


 しおらしくなっちゃった。

 怖くなっちゃったのかな。


 今回のことでイベントを嫌いにならないと良いけど。


「めっちゃ格好良かった」

「え?」

「えへへ」

「あの、先輩?」


 どうやらその心配は無さそうだけれど、別の心配が出て来た。

 この後、悪い人達をスタッフに引き取ってもらって色々と説明しなきゃならないんですよ。

 だから腕を離して欲しいんだけどなぁ。


「私も和也君の格好良い姿を見られた。幸せ」


 でも僕、奇怪な仮面をつけてるんだけれど格好良く見えるのかな。

検見川さんと畑尾さんがあまり関わってませんが、二人は本編で結構良い思いをしてるので……

畑尾さんのBL欲望駄々洩れのシーンとか入れたかった気もしますが。

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