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『おなごが困っていたら助けなさい』という祖父ちゃんの遺言を守って助けまくったら大変なことになった  作者: マノイ
閑話(夏休み編)

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閑話 大変なことになった(有象無象編)

「椙山君、お話ししようよ」

「今日の放課後カラオケいこっ」

「私のお弁当味見してくれないかな」

「大切な話があるから校舎裏に来てください」

「こ、ここ、これ読んでくれませんか!」

「すぎーって何が趣味なの?」

「かずくんは……きゃー!かずくんって言っちゃった言っちゃった!」

「私の占いによるとキミはボクと一緒に遊ぶべきだ」

「子供は何人欲しい?」

「私とママ活しよ」


 なんだこれ。


 何の脈絡もなく、女の子達が僕の所に押し寄せて来たんだけど。


「あ、あの、みんな落ち着いて」


「きゃー!椙山君に話しかけられちゃった!」

「幸せぇ」

「絶頂」

「もっと声聞かせて!」

「いくら出せば良い?」

「耳が孕んだから責任取って下さい」


 うん、ダメだねこれ。


 収拾つかないや。


 山瀬さん達とのノーブ……特殊な水曜会の後、僕は女の子達に囲まれ続けていた。


 同じクラスだけではなく学校中から来ているのではと思えるくらいに女の子だらけで教室がキツキツになっている。


 まるで有名人にでもなったかのような気分だ。


 これほどの騒ぎだと流石に先生方に怒られそうだし、会長も困ってしまうだろう。


 どうすれば良いんだろう。


 せめてこうなった原因だけでも分かればなんとかなるかもしれないけれど、全く思い当たる節が無い。


「はいはい、それ以上続けると椙山くんに悪印象を与えちゃうよ」


 おお、山瀬さんが助けてくれた。


 ありがとう。


 本当にありがとう。


 でももうちょっと早く助けてくれても良かったんだよ。


 目線で助けを求めたの気付いてたよね。


「ぐっ……これが勝者の余裕か」

「羨ましい!」

「悪印象でも印象に残るならそれでも良いもん!」


 ダメだこりゃ。


 おっと、騒ぎで忘れるところだった。


 次は移動教室だから移動しないと。


「ごめんごめん。そろそろ予鈴が鳴るから移動するね」


 ほらほら、みんなも早く教室に帰った帰った。


 帰って、お願いだから。


 うぐぐ、仕方ないけれど人混みの中をかき分けていくしかないか。


「ああ、うん、着いて来るんだ。授業始まるまでに教室に戻るんだよ」


 女の子達の一部が教室を出た僕についてきて引き続き話しかけてくれる。


 仲良くしてくれるのは嬉しいけれど、素直に喜べないのは何故だろう。


 際どい話を連発する女の子達にどうにか当たり障りのない返事をして誤魔化しながら僕達は階段を登る。


「きゃっ!」

「危ない!」


 僕を中心とする輪の外側にいた女の子がバランスを崩して階段から落ちそうになっている。


 周りは女の子に囲まれていて移動は阻害されている。


 強引に突破してその女の子を助けに向かったら、他の女の子もまた危険な目に合わせてしまう。


 だから見ているしか出来ない。


 なんてことは当然ない。


 周囲がダメなら上から脱出すれば良いんだ。


 僕は全力で跳んで女の子達の頭上を越えて今にも倒れそうな女の子に手を差し伸べた。


「ホイ、気をつけなアカンで」


 しかしその前に検見川さんがその子の体を支えたため、僕の救出は空振りに終わった。


 良かった良かった。


 助かったならそれで良い。


「チッ」


 あれれ、おっかしいな。


 なんで助けられた女の子が舌打ちしてるのかな。

 検見川さんを睨んでるのかな。

 そこはお礼を言う所だと思うんだけれど。


「椙山クン、遅れるで」

「ああ、うん。みんなも階段で集まるのは危ないから気を付けてね」


 大事なかったし、予鈴が鳴ったので検見川さんの勧めに従い僕はそのまま目的の教室まで移動した。


――――――――


 騒ぎは放課後になっても終わらなかった。


 校内に残っていたら迷惑になると思って早めに学校を出たのだけれど、女の子達もついてくる。


 歩道を溢れんばかりの集団になってしまい、危険な状態だ。


「みんな車が来るから歩道を歩いて。それに他の人の邪魔になるから密集しないでね」


 なんて言っても解決されない。


 それどころか、僕に抱き着くレベルでくっついて更に密集しようとする始末。


 女の子の香りが……凄い……


 ってそうじゃないでしょ。


 これは流石に危なすぎるから何とかしないと。


 その『危ない』はどうやら交通の面以外でもあったようだ。


 人が密集していると何処からか現れる犯罪者。


「スリだ!」


 悪意を垂れ流しにしている不審な男がいたので気にしていたら女の子の鞄から財布をすり取った。


 僕はまた大きく跳躍してその男の元へと急いだが、追いついた時にはすでにお縄になっていた。


「オレの目が黒いうちは生徒達に危害は加えさせないぜ」

「椙山様のお手を煩わせるわけにはいきません」

「体力ある系のオタクをなめんなよ!」

「椙山先輩より先に問題解決してこれ以上増やしません!」


 会長達が男を取り押さえていたのだ。


 危ない事はしないで欲しいというのは僕の我儘だろうか。


 男が逆上して隠し持ってたナイフで斬りかかってくることだってあり得たのだから。


 でもこの騒ぎを作ったのは僕だと思うし、面と向かって注意は出来ない。


「すみません会長」

「キミは気にしなくて良いさ。これは私達が選んだことだから」

「その通りです。椙山様はいつも通りで構いません」

「そうそう、夏休みまでの辛抱だからさ」

「夏休みまでの?」


 夏休みまで一週間は切っている。


 でも本当にそれまで我慢すれば終わるのだろうか。


 夏休み中も、そして夏休みが明けてからも続くのではという不安がある。


「それじゃあオレ達はこいつを警察に引き渡すから、今日はこれでさよならだ。またな」

「あ、はい、さようなら」


 会長達はこの状況になった理由を知っていそうな雰囲気だ。


 それでいてその理由を僕には教えてくれなそうな予感。


 これはあの『協定』関連と同じ扱いっぽい。


 騒ぎに関して注意はされなかったし、学校側も黙認している状態なのかなぁ。


 考えても分からないや。


 とりあえず少しでも広くて安全な道を選んで帰ろうっと。


「はい、ここまで」


 家まで丁度半分を過ぎたあたりで、女の子達の動きがピタリと止まった。


「それじゃあ椙山くん、また明日」

「え、あ、うん、また明日」


 いつの間にか傍に居た山瀬さんがそう言って僕を送り出してくれる。


 騒ぎが終わるのは嬉しいけれど、綺麗に整列して僕を見送ってくれるのは何か怖いんだけど。


「それじゃあここからは一緒だね、おにいちゃん」

「美来?」


 そしてこれまたいつの間にか傍に居た美来が僕の所にやってきて腕をとった。


 背後の女の子達に向けて挑戦的な目つきを向けているけれど、そんなことして大丈夫かな。


 いじめられたりしないかな。


 お兄ちゃん心配だよ。


「おにいちゃん、帰ったらナニしよっか」

「ナニって……あれ、美来また下着つけてないでしょ」

「分かっちゃう?」

「もう、体に良くないよ」


 腕に伝わって来る柔らかい感触が意味することを僕は知っている。


 最近の夏は暑いけれど、年頃の女の子として良くないと思うんだ。


 それに暑いなら僕にくっつくのは止めた方が良いんじゃないかな。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん。今晩も一緒に寝よ」

「毎晩一緒に寝ているような言い方はしないで」


 何故ならば背後からとてつもない圧を感じるから。


「待って美来ちゃん!」


 呼ばれたのは僕じゃないから振り向かなくて良いよね。


 みんなの顔を今は見たくない気分なんだ。


「待たなーい」

「今日みんなで一緒にお泊りしようよ」


 誘ってくれたのは山瀬さんだ。


 女の子のパジャマパーティー


 良いね、実に良い。


「え~やだ~」


 それなのに美来はそれを拒否してしまった。


 これは良くない。


「良いじゃん、美来。行ってきなよ」

「おにいちゃん!?」


 美来がみんなと仲良くなるきっかけになるかもしれない。

 それは兄としてとても喜ばしいことだ。


「せっかくみんなと仲良くなるチャンスなんだ。行ってきなよ」

「美来は別におにいちゃんがいれば」

「そういうのはダメ。友達は大切にしなきゃ」

「うう……」


 夏休み前ということで授業は自習が多くて宿題の類も出ていない。

 しかも夏休みになったらこういう新しい誘いは中々来ないだろう。

 これは友達を増やす絶好のチャンスなんだ。


「はいけってーい。それじゃあこっちこっち」

「え、まだ決めてないし、ちょっと引っ張らないで、あ、ダメ、おにいちゃん助けて!」

「楽しんでくるんだよ」

「おにいちゃ~ん!」


 美来の体を引き摺るように連れ去った女の子達の目が据わっている気がするが気のせいかな。


 まぁ僕と違って美来は社交的だから大丈夫だろう。


 これをきっかけに僕以外とも良く遊ぶようになると嬉しいな。


――――――――


 翌日になると、騒ぎの内容が少し変わっていた。


「あの、前から椙山君とお話がしたくて」

「ありがとう。嬉しいよ」

「そ、そそ、その、もしよければ私と付き合っ……」

「はい、時間でーす。次の方~」

「いやぁああああもうちょっとだけもうちょっとだけで良いからああああ!」

「邪魔になるからどいてくださ~い」

「どんなペナルティになろうとも、椙山君を私がぐふっ」

「…………ようやく…………静かになった」


 え、今膝蹴りしなかった?

 大丈夫なの?


「すぎやまく~ん。会いたかったよ~」

「誰ですか!?」


 心配なんてしている暇など無い。

 次の女の子が僕のところにやってきたからだ。


 僕の目の前には女の子が一人。

 そしてその後ろには大量の女の子達が列をなしている。


 僕は一人一人と順番にお話をするんだけれど、その時間は驚きの一人当たり十秒間。

 その時間が過ぎるとどうなるのかと言うと。


「はい、時間でーす!」

「いやああああ!もっと、もっとちょうだーーい!」

「…………さっさと…………消えろ…………クソビッチ」


 傍にいる山吹先生と草間さんが女の子を強制的に僕の前から移動させてしまうんだ。


 というか、先生何やってるんすか!


 いや、先生に関するツッコミどころはそれだけではない。


「一度キミとはじっくりと話をしてみたかったんだ。良かったら放課後物理準備室に来てくれたまえ」

「和也君のクラスの担任だったらよかったのに」

「ねぇ和也くん、年上は好き?」


 なんで他の先生も並んでるの!?

 用があるなら普通に呼んで下さいよ。


 しかも教頭先生まで!?


「はい、時間でーす!」

「学生が私に指図するのかい?」

「椙ハラで教育委員会に通報しますよ」

「ぐっ……最近のガキはこざかしい知恵ばかりつけやがって」


 あの、教頭先生、教育者として物凄い問題発言なのでは。


 そして椙ハラって何!?


「ねぇ椙山さん。もっと購買に遊びに来てよ」

「購買のお姉さん!?」


 もちろんドジっ子佐々音さんとは別の人だ。


 なにこれ、もしかして学校中の女の子が並んでるの。


「…………お金とったら…………儲かりそう」


 絶対に止めてよね。


 僕そう言う商売のこと知ってるんだから。


 『握手会』って言うんでしょ!


 僕は女の子と普通に仲良くなりたいんだああああ!

助けられなかった(強制)

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