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『おなごが困っていたら助けなさい』という祖父ちゃんの遺言を守って助けまくったら大変なことになった  作者: マノイ
特殊な人達

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18. 家族を大切にするのじゃ

『家族を大切にするのじゃ』


 これも当然のことだよね。


 僕は祖父ちゃんっ子だけれど、祖父ちゃん以外の家族ももちろん大好きだ。


 亡くなった祖母ちゃん、父さん、母さん、そして『妹』


 僕を深く愛してくれる家族のことを僕は間違いなく一生大切にするだろう。 


 あれ、美来みくどうしたの。


 雷が怖くて眠れない?


 いいよ、一緒に寝ようか。




「旦那様!」

「何度も言うけれど、旦那じゃないよ」


 紅さんが登校するようになってから、僕の周りはとても賑やかになった。


 彼女は僕とは別のクラスだったのだけれど、休み時間の度に僕の所に来て騒ぎになるからだ。


「何度も来るの大変じゃない?」


 せめて短い休み時間の時は来なくて良いと思うのだけれど。


「むしろ授業中も旦那様にご奉仕したいです!」

「ちゃんと授業受けて」

「机の下でずっと奉仕します!」

「聞いてる?」

「上に乗る方が良いでしょうか」

「ちょっと黙ろうか」


 発言があまりにも危険すぎてハラハラしっぱなしだよ。


 ハラハラするのは発言だけじゃないけれど。


「旦那様、昼休みですよ。私を頂いちゃってください!」

「お弁当持って来ているから要らないよ」

「まずはこれをどうぞ!」

「要らないって言ってるでしょ!下着を脱ごうとしないで!」


 冗談で僕を揶揄っていると思うでしょ。


 でもね、迷いなくスカートの中に手を突っ込んで膝下まで降ろしちゃったんだ。


 困っちゃうよね。


 感情を殺して白目になる以外の選択肢が無かったよ。


「止めて!」

「…………その手が…………じゃなくて…………ダメ」


 僕にとって幸運だったのは、クラスメイトの女の子達が紅さんを止めてくれることだ。


 特に山瀬さんと草間さんが率先して止めに入る。


「協定は絶対だよ」

「不登校だったからそんなの知らないもん」

「…………嘘だ…………一年生の時は…………普通に登校してた」

「チッ」


 二人は僕と紅さんの間に入り、彼女の姿を僕の視界から隠して強制的にアレを直させた。


 ありがとう、助かったよ。


 人として大事なものを失いそうな予感があったからね。


「またやってるのね。いい加減にしなさい」


 おや、今度は関さんがやってきた。


 最近は知り合った女の子達が来てくれるので毎日が華やかだ。


「あれあれ、もしかして私に負けた関さんですか?」

「ぐっ……この女!」


 紅さんは全力で関さんを煽った。


 なんで!?


「ププッ、そんなんで奨学金ゲット出来るのかな」

「くれないいいい!」

「イキるのは私に勝ってからにし・て・ね」

「キイイイイ!」


 なんと紅さんは期末テストで僕と関さんを押さえて学年一位になったのだ。

 だからどれだけ煽られても関さんは言い返せなかったのだと思う。


 う~ん、まさか紅さんがトラブルメイカーだったとは。


 スウェット姿の時と比べると見違えるほどの美少女なのに中身はとても残念だ。


 流石にそろそろお弁当を食べたいな。


 その僕の想いを汲んでくれたのか、山瀬さん達は紅さんを連れて僕の席から離れようとしていた。


 しかし今日の騒ぎはこれで終わらなかった。




「おにいちゃ~ん」




 美来が僕のクラスにやってくるなんて珍しいことがあるものだ。


 これまで高校では僕の所に来なかったのに。


 一歳年下の美来は、僕の自慢の妹だ。


 可愛い、優しい、頭が良い、兄に甘えてくれる。


 現実世界の妹は兄を汚物のようにしか見ていないなんて話を聞いたことがあるけれど、僕にとってはそっちの方が別世界の話だ。


「美来どうしたの?」


 突然教室にやってきて『おにいちゃ~ん』などと叫んだ美来は注目を浴びていた。


 先輩達から見られて居心地が悪いだろうと思い、僕は手招きして近くに来るように促した。


「「「やっぱり妹だったんじゃないか!」」」


 美来が教室内に入って来ると、女の子達が声を揃えて不思議なことを叫んだ。


 一体どういう意味なのだろうか。


 『協定』よりも意味が分からないぞ。


 僕が頭をひねっている間に、美来は何事も無かったかのように僕の元までやってきた。


「気にしない気にしない」

「美来がそう言うなら」


 突っ込まれた当の本人が全く気にしていない様子だったので、僕が何かを言う事では無いのだろう。


「それで何の用かな」

「お兄ちゃん、お弁当間違えてたよ」

「え?」


 そんな馬鹿なと思って鞄を開けると、確かにそこには妹のお弁当が入っていた。


 おかしいな。


 包みの色がブルーとピンクで間違えようが無いんだけど。


 それに今朝も間違いなく自分の弁当を手にした覚えがあるんだけど。


「はい、コレ」

「う、うん」


 釈然としないけれど実際に違っているのだから僕の勘違いかな。


 おっとお礼を言わないと。


「持って来てくれてありがとうね。美来」


 僕は美来をハグ・・して、右頬に軽く唇を押し付けた・・・・・・・


「!?」

「!?」

「!?」

「!?」


 美来もお返しに僕の右頬に軽く口づけしてくれる。


「な、なな、何してるの!」

「え?」


 山瀬さんは何を驚いているのだろうか。


 山瀬さんだけじゃない。


 他の皆も信じられないものを見たかのように驚愕した表情になっていた。


「何ってお礼を言っただけだよ」

「だけじゃないでしょ!?」


 だけだよね。

 他に何かしたっけ?


「キ、キキ、キスしてたでしょ!」

「うん、したね」


 お礼の一部であるし、別に変な事じゃないよね。


 一体みんなが何を不思議に思っているのが分からなかったけれど、草間さんがその理由を教えてくれた。


「…………妹と…………キスは…………おかしい!」


 ああ、なるほど。


 普段からやり慣れているから気付くのに時間がかかっちゃった。


「おかしくないよ。海外の映画やドラマで家族でハグして頬にキスするやつあるでしょ。あれだよあれ」


 ここは日本だから普通に見えないのも当然だね。


「美来は小さい頃から海外ドラマが好きで真似してるんだよ」


 僕もそれに付き合っているうちに、それが自然なことになってしまっていた。


「海外ドラマ……それじゃあ妹さんと、その、付き合ってるわけじゃないんだよね」

「何言ってるの!?家族だよ!?」


 妹と付き合うだなんて、それこそ創作物の中だけのお話だよ。


 変な事言うなぁ。


「そ、そうだよね……」


 微妙に納得していない雰囲気なんだけれど、解せぬ。


「ねぇおにいちゃん。美来もう行くね」

「ああ、うん」


 そんな周囲の状況は全く気にならないのか、美来はマイペースだった。


 美来が戻るなら最後にいつものをやらないと。


 僕はもう一度ハグをして別れを惜しむキスをした。


「美来、愛してる」

「私も愛してるよ、おにいちゃん」


 美来は笑顔で僕のクラスから去っていった。


 すると、いつの間にかクラスの女の子達の雰囲気がまたしても剣呑な感じになり、再び山瀬さんが僕に変なことを聞いて来た。


「なんでまたやってるの!?しかも、あ、ああ、愛してるなんて!?」

「別れのハグで挨拶みたいなものだよ。ほら、『またね』みたいな感じ。その時にお互いに愛情を伝え合いたいって妹から言われてて」

「何それ!?」

「家族でも愛情はちゃんと口に出して伝えないとダメだって言われてさ。確かにそうだよね」


 日本では家族から直接『愛してる』と言われることは少ないかもしれない。

 でも美来は海外ドラマが大好きなのでその手のシーンを見ていて憧れていた。


 僕も愛情を口にして伝えることは悪いことでは無いと思ったので、妹の要望を叶え続けている。

 おかげで僕達はケンカらしいケンカをほとんどしたことが無いくらいに仲が良い。


「そうだけど、そうじゃない!」

「えぇ」


 禅問答かな。

 山瀬さんの言う事は難しいなぁ。


「ねぇ椙山くん、本当に妹さんと付き合ってないんだよね」

「当たり前じゃないか」


 ありえないよ。


 きっぱりと断言したからか山瀬さんから追加の追及は無かった。


 でも草間さんが別の質問をしてきた。


「…………お風呂は…………一緒に入る?」

「ないない。美来は女の子だよ。ありえないよ」

「…………異性として…………認識はしてる」

「当たり前じゃないか」


 妹は家族であり、同時に異性でもあるんだ。

 センシティブなことはちゃんと気を使ってあげないと美来が嫌がるだろう。


 ああでも、お風呂と言えば時々背中を流してくれるかな。


 何故かこれは言ってはいけない気がするから口にはしないけれど。


「旦那様、少々よろしいでしょうか」

「旦那じゃないけど何かな」


 ここで、これまで事の成り行きを見ているだけだった紅さんが口を開いた。


「もしかして妹さんはかなり甘えたがりでしょうか?」

「そうなんだよ。高校一年生とは思えないくらいにベタベタしてくれるんだ。兄としては嬉しいけれど自立出来るかどうか少し不安かな」

「具体的な話を聞かせて頂けませんか?」

「うん、いいよ」


 夜中に理由をつけて僕のベッドに潜り込んでくるし、すぐにハグしたがるし、毎日のように『あ~ん』をねだって来るし、僕のシャツを着たがるし、腕をとって抱き締めるし、僕の太ももの上に頭を乗せるし……


 こうやって口にするとかなりの甘えん坊さんだな。


「やっぱり妹さんおかし」

「山瀬さん待って」


 紅さんは女の子達を連れて僕から離れたところに移動した。


「妹さんの狙いは今の関係がおかしい事だと私達に指摘させることかも」

「どういうこと?」

「仮にだけど、妹さんとの今の関係が年頃の兄妹として不適切だと旦那様に理解してもらったとする」

「うん」

「でも旦那様はきっと妹さんからの『意図的な甘え』を拒否することが出来ない」

「…………間違いない」

「するとどうなるか。旦那様はこれまで何も考えずにハグやキスをしてきたのに、それが『イケナイコト』であると知りながらも続けることになる」

「そうか、それを慣れさせてしまえば……!」


 う~ん、一体何を話しているのだろうか。

 というかもうお昼食べ始めて良いよね。


「家族として見ている妹を恋人対象となりうる異性の女性として意識してもらうのは並大抵のことではない。だから旦那様のその常識という壁を突破するために、まずは『イケナイカンケイ』に慣れさせる」

「そのために敢えて私達の前に姿を見せて、指摘させようとしたって言うのか!?」

「…………確かに…………そのくらいは…………しそうな…………策士に見えた」

「そんなぁ。妹さんまでもがライバルだなんて」


 盛り上がってるなぁ。


 もぐもぐ。


 おお、今日のポテサラ良い感じだ。


「でもだからと言ってあんなのは無視出来ないよ!」

「…………家族だから…………協定は無意味…………ぐぬぬ」

「協定を変えますか?私達がもっと積極的に行動して椙山君に普通の恋愛を意識させて妹さんの事を考えさせないようにするとか」

「それは危険かな。ただでさえ危ういバランスの上に奇跡的に成り立っているような状況なのに」


 紅さんは風変わりな性格をしているから心配だったけれど、みんなと仲良くなれたようで安心したよ。


 仲良くワイワイしている姿はお昼ご飯の最高のおかずになるね。


――――――――


「さ~て、どうなるかな」


 狙い通りになろうが失敗しようがどちらでも構わない。


 家族として毎日一緒に居られるという私の優位に変わりはないのだから。


 彼女達が協定なんて馬鹿げたことでけん制し合っている間にお兄ちゃんをゲットして見せる。


『美来は僕が守る!』


 幼い頃に誘拐犯から身を挺して助けたくれたお兄ちゃん。


 あの時庇ってくれた小さな背中を、私は絶対に忘れない。

ついに『妹』登場!


『姉』はいません。ごめんなさい。


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