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『おなごが困っていたら助けなさい』という祖父ちゃんの遺言を守って助けまくったら大変なことになった  作者: マノイ
特殊な人達

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16. 突然のトラブルにも臨機応変に対応出来るおのこになりなさい

『突然のトラブルにも臨機応変に対応出来るおのこになりなさい』


 トラックに轢かれても異世界転生は出来ないから狙うな。


 祖父ちゃんは現代のサブカルにも妙に詳しかったけれど、どこでその情報を仕入れていたんだろう。


 まさかスマホでネット小説を読んでいたのかな。


 対トラックの訓練をかなりやらされたけれど役立つ日が来るのだろうか。


 それとも今回の女の子を助けられたのは、この訓練で瞬発力が鍛えられたからなのだろうか。




 あれ、シャープペンの芯が無い。


 シャープペンに装着されている方では無くて、筆箱の中に入っているはずのストックの方だ。


 何処で無くしたのか思い出せない。


 仕方ない、後で休み時間に購買に買いに行こう。


 でも山瀬さん達に芯が無いことを勘付かれないようにしないと。


 だって僕が文房具を切らしていると何故かみんなが貢いでくるんだもん。


 しかもその姿が異常なんだ。


 この前なんか山瀬さんが新品の芯ケースをくれようとしたから流石に遠慮したんだけれど、そうしたら芯の大半を取り出して両手でバキって折ったんだよ!?


『新品じゃなくてこれだけしか残ってないから貰ってね』


 そして残りをくれたんだけれど、あの時はあまりの迫力に押されて何も言えずに貰うしか無かった。


 だから今回はそのような異常事態にならないようにこっそりと教室を抜け出して購買に行かないと。


 難しいようなら今日は諦めて帰りにコンビニで買うことも視野に入れないと。


 と思っていたけれど、案外簡単に教室を抜け出せた。


 祖父ちゃんに倣った隠密行動の効果があったのかな。


 それとも芯ケースそのものを紛失したのは初めてのパターンだからかな。


 そもそも芯などを切らしたタイミングを悟られること自体が異常な事なんだけれど、それはきっと考えてはダメなのだろう。


 そういえば購買に行くのって二年生になってから初めてな気がする。


――――――――


「和也君いる!?」


 突然、佐川先輩がうちのクラスにやってきた。

 警戒モード発動。


 椙山くんと一対一にならないようにすかさず私が声をかけた。


「佐川先輩どうしました?」

「山瀬さん、和也君は何処に行ったの!?」

「え、椙山くんならさっきまで席に……あれ、いない」

「ウソ!手遅れだったの!?」


 そんな馬鹿な。

 いつも椙山くんばかり見ている私が見失うなんて。


 そうだ、草間さんは、他のクラスの女子は。


 ダメだ。


 みんな椙山くんがいつ教室を出て行ったのかすら分からないみたい。


 トイレかな。


 ううん、嫌な予感がする。


 佐川先輩の『手遅れ』の意味も気になるし。


「佐川先輩は椙山くんに何の用だったのですか?」

「昨日和也くんが文芸部の部室に手伝いに来てくれたの」


 なんですって!

 羨ましい!


 まさか自分で誘ったわけじゃ無いよね。

 それは協定違反だよ。


「そんな目で見ないで。和也くんが自分から来てくれたの。本当だから信じて!」

「…………まぁ良いです。それで?」

「さっき部室でお昼ご飯を食べていたら、コレを見つけたのよ」

「シャー芯ケースですか。まさか!」

「間違いなく和也君のものよ……」


 ということは、和也君の筆箱にはシャー芯ケースが無い。

 もし和也君がそのことに気が付いて購買に行ったとしたら……


「緊急事態よ!」


 椙山くんを止めに購買へ全力ダッシュ。

 お願い間に合って。

 もしくは他の誰かが止めて。


 あの人・・・には絶対に会わせてはならないの!


――――――――


 うちの学校の購買は昼休みにご飯を売って無いからいつもお客が少ない。


 それでも皆無というわけではなくて、昼休みに通りかかるとお客がいるのを目にしたことがある。


 でも運良く今日は誰も居なかったのですぐに買えそうだ。


 あれ、でも店員さんがいないぞ。


「あの~誰かいませんか?」

「はわわ、ごめんなさい」


 カウンターから声を掛けたら、ぴょこんという言葉が似合う感じで女の人が立ち上がった。

 背が低くて童顔で僕らと同年代かあるいは年下にも見えるけれど、店員さんなので年上のはず。


「はわわ、この学校にこんなイケメンさんが居たんですね」

「あはは、ありがとうございます」


 お世辞だろうけれどこんなにも可愛らしい女の子に褒められて嬉しいな。

 商売上手だな。


「えっとごめんなさい。急ぎでしょうか。そうでなければ少しだけ待ってもらえませんか?」

「はい、良いですよ」


 店員さんはそう言うとまたカウンターの下に姿を消した。

 何をしているのだろうか。


 興味本位で覗いてみたら、店員さんはびしょ濡れになった床を拭いていた。

 そばに蓋の開いた空のペットボトルが落ちていたから、倒して零してしまったのだろう。

 一リットルのペットボトルだからか床が結構酷いことになっている。


「手伝いましょうか?」

「はわわ、生徒さんのお手は借りられないですよ」

「気にしないでください。一緒に掃除した方が早く終わりますし」

「お気持ちだけで……きゃあっ!」


 店員さんは濡れた床で滑ってしまい、後ろに積まれていた商品が入っているらしき段ボールにぶつかってしまった。


「危ない!」


 店員さんの上に段ボールが落ちてくる。

 僕は慌ててカウンターを飛び越えて崩れた全ての段ボールを頭と手を使い支えた。


「間に合って良かったです」

「はわわ、ごめんなさい!」


 間一髪といったところだろうか。

 祖父ちゃんの特訓のおかげで体がすぐに動いたよ。


「あのあの、すぐに直しますね」

「あ、ダメです。動かないで」

「え?」


 店員さんは僕が支えている段ボールをどかそうと手を伸ばしたけれど、嫌な予感しかしない。


「きゃあっ!」

「ぐふ」


 立ち上がった店員さんはまたしても滑って僕の無防備なお腹に頭突きをした。

 しかも体重が乗った一撃だ。


 女の子だから軽いけど、かなり痛い。

 もう少し下だったら大惨事だった。


「はわわ、ごめんなさい!ごめんなさい!」


 僕はなんとか耐えて段ボールを支え続けた。


 よし、後はゆっくりと動かして段ボールを元の位置に……


「邪魔にならないように私はカウンターの外に出てますね」

「だからダメですって!」

「え……きゃあっ!」


 ほらぁ、動いたらダメなんだって。

 またしても店員さんは滑って、今度は後ろの棚にぶつかってしまった。


 棚の上には新品のペン類が沢山乗っていて、それらが床に落ちようとしていた。


「ぬおおおお!」


 僕は急いで段ボールを元の場所に戻し、棚から落ちようとしている無数のペンに手を伸ばした。


 その数は数十本。


 床は水浸しなのでこのまま落ちたら売れなくなるだろう。


「間に合え!」


 祖父ちゃん直伝。


 椙心流現代武術奥義、『千手観音』


「てりゃてりゃてりゃてりゃてりゃてりゃてりゃああああ!」


 あまりの高速の手さばき故、腕が千本あるように見えるという。

 千本なんて大げさなと思われるかもしれないけれど、祖父ちゃんが放った時は本当にそのくらい見えた。


 今の僕だと数百本ってレベルかな。

 まだまだ精進しないと。


「これで最後!」


 どうにかギリギリですべてのペンを救出完了だ。


 僕はそれらを棚の上に置いて、店員さんに手を伸ばした。


「はわわ、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「落ち着いて下さい」


 また慌てて滑ったら危険だ。

 僕は店員さんを抱えて・・・カウンターの外に連れ出した。


「お、おひ、お姫様!」

「ごめんなさい、こんな格好恥ずかしいですよね。直ぐ降ろしますね」

「そんなことありません!」

「そうですか?」


 店員さんは名残惜しそうな感じだったけれど、服が濡れていて僕の制服にまでしみ込んでくるので降ろさせてもらった。


「はわわ、ごめんなさい!制服が濡れちゃったです!」

「待って動かないで下さい。そのままで良いですから」

「でも拭かないと」

「ハンカチで拭けば大丈夫ですから」


 店員さんがカウンターの方に戻ろうとしたから慌てて止めた。

 タオルか何かを持っているのかもしれないけれど、取りに行ってまた滑る未来しか見えなかったからだ。


「はわわ、お客さんにこんなに迷惑をかけてしまうなんて。やっぱり・・・・私はダメダメです……」


 動きが止まったのは良いけれど、今度は落ち込んでしまった。

 これだけ失敗が連鎖したら気に病むのも当然だろう。


「失敗なんて誰にでもありますよ。気にしないでください」

「ありがとうございます……」


 う~ん、このフォローだけだと効果が無いみたい。

 『やっぱり』って言っているところから想像するに、これまでも沢山失敗して自信が無くなっているのかも。


「まずは一緒に床を掃除しましょう」

「一緒に、ですか?」

「はい」

「生徒さんのお手を煩わせるわけには」

「あはは、今更じゃないですか」

「はわわ」


 それにこのままだと同じことが起こりかねないからね。


「落ち着いてリラックスしてゆっくりと作業しましょう」

「落ち着いて、ですか?」

「はい、失敗しないコツは冷静に作業することですから」

「冷静に……」


 これは祖父ちゃんの教えでもある。


『和也、いかなる場合も冷静であることを忘れてはならんぞ』


 そして文字通り、この言葉の意味を体に叩き込まれた。


 訓練の時にフェイントや言葉攻めで動揺させられて徹底的にボコボコにされたんだ。


 祖父ちゃん容赦なかったけれど、そのおかげでどんな時にも冷静に行動出来るようようになった。


「でもだからって冷静にならなきゃって思ったらダメですよ」

「え?」

「そう考えると逆に焦っちゃうんですよ。経験ありませんか?」

「はわわ。ありますあります!」


 そしてまた失敗を重ねる悪循環に陥ってしまう。

 きっとこの店員さんはずっとそれを繰り返して来たのだろう。


「だからこまめに深呼吸してゆっくりと作業しましょう」

「はわわ、ゆっくりですか」

「そうです。ゆっくり丁寧に時間をかけて作業して、慣れてきたらスピードをあげれば良いんです」

「でもそれだと遅いって怒られちゃいます」

「そんなの怒らせておきましょうよ」

「はわわ」


 祖父ちゃんだったら速攻で見捨てるね。

 もちろん怒った人の方を。


「もしも怒られてクビになったら、ここに連絡すれば店員さんの助けになってくれますよ」

「名刺ですか……この会社は!?」


 僕の祖父ちゃんが経営していた会社の一つだ。


 今は祖父ちゃんの部下だった方が祖父ちゃんの志と一緒に引き継いでいる。


 この会社は真面目で誠実だけれども使えないと世間に烙印を押された人達を拾い上げ、世界最高峰の人材へと育て上げる。


 僕から店員さんのことを推薦しておこうっと。


「はわわ、どうして私にここまでしてくださるんですか?」

「こんなに可愛らしい人が困っているんだから当然のことですよ」 

「はわわ!」


 本当の事は失礼になるから言えないんだよね。


『和也、ドジっ子は世界の宝じゃ。見つけたらワシに教えなさい』


 店員さんが祖父ちゃんの好みにドストライクだったなんて。


 祖父ちゃんの影響を受けている僕も、その、嫌いじゃないけれど。


「あの……お客さんのお名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」

「うん。僕は椙山和也。よろしくね」

「はわわ、私は今年からこちらで働くことになりました佐々音ささね 京香きょうかです。末永く・・・よろしくお願いします」


 それから僕らは一緒に片づけをした。

 佐々音さんはもう滑らなかったけれど、顔が赤くなっていたので体調を崩していないか心配だ。


「ウソ!遅かった!」

「絶対にこうなると思ったからガードしてたのに!」

「…………がっくし」


 片づけが終わったタイミングでクラスメイトの女の子達と佐川先輩が慌ててやってきた。

 購買で欲しい物でもあったのかな?

今回はまさかの購買のお姉さん。


なお、リラックス云々はケースバイケースですが細かく書くと長くなるので端折りました。


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― 新着の感想 ―
[一言] この会社は真面目で誠実だけれども使えないと世間に烙印を押された人達を拾い上げ、世界最高峰の人材へと育て上げる。とありますが、どうせ女性限定でしょう?
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