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『おなごが困っていたら助けなさい』という祖父ちゃんの遺言を守って助けまくったら大変なことになった  作者: マノイ
先輩後輩編

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11. おのこたるものおなごの願いは全力で叶えるのじゃ

『おのこたるものおなごの願いは全力で叶えるのじゃ』


 だがそれは貢ぐのとは違うから勘違いしてはならない。


 祖父ちゃんは特に後半部分を強い口調で何度も何度も繰り返した。


 まるで自分に言い聞かせるかのように。


 それはそれとして、僕も女の子の願いは極力叶えたいと思っている。


 それで女の子が喜んでくれるのなら僕も嬉しいからだ。


 でも、その、ちょっとこれは……あの……祖父ちゃん助けて! 




「次の期末試験こそは私が勝つわ」

「今回ばかりは負けちゃうかもなぁ」

「そんなこと言って、また今度もトップ狙ってるんでしょう」

「もちろん狙って頑張るけど、暗記マスターした関さんに勝てるかなぁ」


 そんな他愛も無い話をしていたある日の放課後。

 僕の元に思いもかけない女の子()がやってきた。


「ちょっといい?」

「ちょっといい?」

「何かな、え?」


 声が二人分重なっているから変だなと思ったら女の子が二人居た。

 全く同じ抑揚で同じテンポで話したから重なっているように感じたんだ。


「そんな……まさか……」


 女の子達を見て関さんが驚いているけど、驚いているのは僕もだよ。


「ええと、八乙女さん、ですよね?」

「うん」

「うん」


 僕の学校には可愛い女の子や綺麗な女の子、いわゆる美少女が多い。

 例えば傍に居る関さんや同じクラスの山瀬さんに草間さん。

 他にもこれまで僕が知り合った女の子達など、多くの美少女が通っている。


 その中でも知名度が高いのが八乙女姉妹だ。

 美人でスタイルが良いのは当然として、それとは別に大きな特徴がある。


「私が姉の麻衣まい

「私が妹の芽衣めい

「よろしく」

「よろしく」


 二人は何から何まで瓜二つなのだ。


 見た目で言えば顔立ちや体つきだけでなく背の高さから髪の毛のウェーブのかけ具合まで完全に一致。

 更には話し方や時々小さく首を右にかしげる癖まで同じであり、どちらがどちらなのか判別がとても難しい。


 それでいて彼女達は双子ではないから驚きだ。


 姉は三年生で先輩。

 妹は一年生で後輩。


 二年も歳が離れているにも関わらずそっくりというのはあまりにも信じ難く、その見た目の麗しさも相まって有名人となっていた。


 そんな女の子達が僕に何の用だろうか。


「あなたにお願いがある」

「あなたにお願いがある」


 ユニゾンなのが基本なんだね。


「うん、いい……」

「ちょっと待ってくださるかしら」


 僕が快諾しようと思ったら関さんが止めに入った。


「なに」

「なに」

「それは協定破りよ」


 でました謎単語の協定。

 条件やら協定やら、誰に聞いても意味を教えてくれないんだよ。


「知ってる」

「でもこれはあなたにも喜ばしいこと」

「どういうことかしら?」


 おお、ユニゾンじゃない場合もあるんだ。


「待って、お姉」

「分かってる」

「え、なに、きゃあっ!」


 八乙女姉妹は何故か関さんの全身をペタペタと触り始め……ええ、胸をも、も、揉んでる!?


「いや、止めっ、んっ、そんな、椙山君の前でなんて」


 頬を赤らめて色っぽい声を出す関さんを僕は見てられなかった。


 そんな僕や関さんの反応などどこ吹く風で、八乙女姉妹はお腹や腰を含む全身を丹念に触り続けた。


「合格」

「合格」


 満足した八乙女姉妹は謎の合格宣言をする。


「はうぅ……って合格!?ほんと!?」


 立ち眩みしそうだった関さんが一転して大喜びしている。

 関さんが喜ぶ合格って勉強関連……じゃないよね、流石に。


「次はあなた」

「次はあなた」

「僕?」


 まさか僕も体をまさぐられちゃうの!?


「ちょっと待って!」

「…………手出しさせない」


 慌てた僕を守ってくれたのは山瀬さんと草間さんだった。

 しかし彼女達もまた関さんと同じ道を辿たどったのだった。


「あ、やん、らめ、椙山君、みないれ」

「…………これは…………結構…………クる」


 だから悶えないで、恥じらわないで、艶めかしい声出さないで。

 目のやり場に困るんですけど!


「合格」

「合格」

「きゃー!やったー!」

「…………ぶい」


 二人とも合格宣言で大喜びだ。

 うん、良かった良かった。


 それじゃあ僕はこれで。


「次こそあなた」

「次こそあなた」


 ですよねー


「さぁ立って」

「さぁ立って」


 女の子の要望を断れないのは祖父ちゃんの教育の賜物だ。

 うう……


「はっ!待って待って。それはやっぱりダメだって」


 恍惚の表情を浮かべてトリップしていた山瀬さんがどうにか正気に戻り止めてくれた。

 ありがとう。


「繰り返す」

「これはあなたにも喜ばしいこと」

「どうして?」


 関さんに向けた言葉と全く同じものが今度は山瀬さんにも伝えられた。


 八乙女姉妹は僕の方をチラリと見てから再度山瀬さんに体を向ける。


「見たくない?」

「見たくない?」

「!?」


 その瞬間、山瀬さんの表情が激変した。

 それだけではない。


 教室内の女の子達の雰囲気はこれまで八乙女姉妹を歓迎していないムードだったのに、何故か一変して歓迎ムードに変わった。


「椙山くん、ごめんね」


 山瀬さんの言葉で僕は悟った。

 逃げ道は無いのだと。




 たっぷり時間をかけて体中をまさぐられた後、八乙女姉妹は離れたところで相談を始めた。


「椙山君大丈夫?」


 その間に復活した関さんが八乙女姉妹について僕が知らなかったことを説明してくれた。


「八乙女姉妹はプロの服飾デザイナーなのよ」

「プロの!?」

「ええ、彼女達がデザインした服は雑誌で紹介されてるわ」

「凄い!」


 現役高校生でプロのデザイナーになれるものなんだ。

 それとも現役だからこそ若い女の子の興味を惹くものを作れるのかな。


「姉の麻衣さんが洋服担当で、妹の芽衣さんがアクセ担当ね」

「そこは分かれてるんだ」


 何もかも一緒だから、同じものを協力して作ってるのかと思った。


「彼女達は新作をデザインする時に身近な人をモデルにするらしいのよ。しかもモデル代として新作コーデを一式貰えるの」

「もしかしてさっきの『合格』っていうのは」

「うん、私モデルに選ばれちゃった!」


 あはは、関さんったら口調が壊れるくらい嬉しかったんだね。

 つまりそれほどに女の子達が憧れる服を作ってるんだ。


「それじゃあもしかして僕もモデルに選ばれるかもしれないのかな」


 きっと八乙女姉妹は男性用の服もデザインするのだろう。


 ただ、僕は三人とは違ってまだ合格を貰っていない。

 おそらくは今その審議をしているのかな。


「そうかも知れないのだけれど……」

「どうしたの?」


 関さんの様子がどうもおかしいぞ。

 僕は別に変なことは聞いてないはずなんだけど。


「驚かないで聞いて下さいね」

「う、うん」

「八乙女姉妹は女性服専も」


「おまたせ」

「おまたせ」


 関さんの説明の途中で八乙女姉妹が戻って来た。

 まぁいいや。

 二人の話を先に聞かせて貰おう。


「僕も合格なの?」

「うん」

「うん」


 やった。

 これで僕もプロのデザイナーに服を作って貰えるかも。


「良かったぁ」

「いいの?」

「いいの?」


 何で疑問形なんだろう。

 人気デザイナーのモデルになるなんてむしろこっちからお金を払ってでもお願いしたいくらいだよ。


「もちろんだよ」

「…………おねぇ」

「…………うん」


 八乙女姉妹はアイコンタクトして意思疎通をしている。

 何だろう。


「あなたにモデルをお願いします」

「あなたにモデルをお願いします」

「喜んで!」


 ざわりと教室内がどよめいた。

 え?なんで?


「言ったからには」

「やってもらう」

「え?」


 なんかとてつもなく不穏な雰囲気なんだけど。


 関さんも額を押さえて『あちゃ~』みたいな感じになってる。

 山瀬さんは苦笑いになってる。

 草間さんはワクワクしてる。


「ずっと作りたかったの」

「背が高くてスレンダーな人向けの」




「女性服を」

「女性服を」



 ……

 …………

 ……………………


 自爆だ、コレ。




――――――――




「シクシクシクシク」

「椙山くん元気出して」

「シクシクシクシク」

「…………似合ってた」

「シクシクシクシク!」


 何があったのかは僕の名誉のために割愛させて頂きたい。

 僕の下半身がツルツルなのと全校生徒に見られたとだけ言えば分かるはずだから。


「おつかれ」

「おつかれ」


 僕が悲しみに打ちひしがれていると、その原因となった姉妹がやってきた。


「これ」

「報酬」

「いら……ただきます」


 反射的に要らないと言いそうになったけれど自重した。

 自分達の渾身の作品が不要だなんて言われたら八乙女姉妹が悲しむと思ったからだ。


 どれだけ辛くとも、女の子を悲しませることは絶対にしない。

 祖父ちゃんの教育の賜物だ。


「おい、椙山受け取ったぞ」

「マジか、また着てくれるのかな」


 止めてええええ!

 何が一番辛かったかって、僕を見る一部の男子達の目が怪しかったことなんだよおおおお!


 僕が悲しむ姿を見て心を痛めたのか、早乙女姉妹が申し訳なさそうにしていた。


「ごめんなさい」

「調子に乗りました」

「そんなことないよ。僕の自爆みたいなものだし」


 それに、自爆じゃなくてもお願いされたら僕は断れなかったと思う。

 だって女の子のお願いだもん。


「噂通りの」

「良い人ね」

「あはは、ありがとう」


 どんな噂なのか気になるところだけれど、良い評判っぽいからまぁいいか。

 むしろその噂で今回の話題を上書きしてくれないかなぁ。


「迷惑料」

「何か要望聞く」

「え、僕報酬貰ったよ?」


 手渡された紙袋には、あの時に僕が着たものが一式入っているのだろう。

 有名デザイナーの洋服ともなればかなり価値があるはずだ。


「でもそれは」

「あなたが喜べないもの」


 こんなにも良い人達だったんだ。

 女そ……あのことに気をとられてて肝心の八乙女姉妹についてちゃんと見れて無かった気がする。


「ありがとう。それじゃあ二人の私服を今度見せてよ」

「え?」

「え?」


 ファッションショーの日も二人は制服だったから、私服を見れてないんだよね。


「どうして?」

「どうして?」


 どうしても何も、プロのデザイナーの現役女子高生の私服とか、誰だって気になると思うんだけどな。

 いや、もしかして八乙女姉妹の疑問はそういうことじゃないのかも。


 思えば二人はいつも『普通』の制服を着ているだけだ。

 特に改良することも無くノーマルな制服で、アクセサリーの類もまったく身に着けていない。


 悪く言えば地味で目立たない。


 あんなにも素敵な洋服を作り、僕達が着こなしている姿を満足そうに見ている二人が自分を着飾らない。


 まさか二人は自分達のことを『不合格』とでも思っているのではないだろうか。

 だから着飾る気がないのかもしれない。


 僕はそのことを確かめるべく、少し捻った答えを彼女達に告げた。


「二人が主役になるところも見てみたいから、かな」

「!?」

「!?」


 ああ、やっぱりそうだ。

 この驚きようは間違いない。


 彼女達は自分達の魅力に気が付いていないんだ。


「私達が主役」

「ありえない」

「それこそありえないよ。二人みたいな綺麗な人が着飾る姿、見てみたいな。みんなもそう思うよね」


 僕だけだと説得力がないかもしれない。

 だから僕はクラス中を巻き込んだ。


 男子達は全力で頷き、女の子達も複雑な表情を浮かべている人がいるもののはっきりと頷いた。

 ってそこは女の子も文句なしに共感して欲しかったんですけど!

 あるぇ、僕の感性おかしかったかな。


「この流れはまた……でも私も見てみたい……」

「また増えちゃうの……しかも二人も……」

「否定したいけど……椙山君に嘘はつけない……」


 女の子達はボソボソと何か話しているみたいだけれど距離があるから聞き取れない。

 苦虫を噛み潰したような顔をしている人もいる。

 女の子の関係って難しいらしいから素直に同意出来ないのかな。


 でも大半の女の子達は直ぐに頷いてくれてたからそれでオッケーだよね!


「私達が……」

「主役……」


 八乙女姉妹は不思議そうな顔を浮かべてお互いを見つめていた。

 そしてしばらくすると晴れやかな表情で僕を見た。


「わかった」

「わかった」


 果たしてどんな私服が見られるのか、今から楽しみだ。


「ありがとう」

「あなたは素敵な人」

「だから」

「だから」


 楽しみにしてて、かな。







「ウェディングドレスは任せて」

「ウェディングドレスは任せて」


 待って。

 それって僕の将来の相手の事だよね。


 僕に着せるつもりじゃないよね。

 何で僕の全身を見てるのさ。


 やめて。

 イメージしないで。

 絶対に着ないからね。


 助けて祖父ちゃん!

祖父ちゃん『諦めろ』

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― 新着の感想 ―
[一言] 祖父ちゃん「いや… 案外悪くないかもしれん…」
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