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虚空の底の子どもたち  作者: 日浦海里
第三章 激動の大地
23/172

第十九話 メルギニア建国史

2024/02/13 09:41

地図を最新化しました


2023/01/01 11:23

メルギニアの各領地に関する地図を追加しました


2022/12/26 21:05

お話の後半部分に、書き漏らしていた

『キシリア』戦役の終戦までのエピソードを追加しました。



 『アストリア』と共に『グェン』と争っていたとされる『ベトゥセクラ』は、天地崩壊の際に主要都市の大半を失った。

 当時の『ベトゥセクラ』は現在の『キシリア』『レジル』『ルース』『シェハサ』と、『アストリア』を包み込むような形で領土を所有していた。

 それほどの強大な国であったにも関わらず、『アストリア』を盟主国とし、盾として『アストリア』を護り続けており、その関係性には謎が多い。

 また、『ベトゥセクラ』は天地崩壊においても他とは異なる特徴があったという。


 他国では天地崩壊前に各地で確認されるようになっていた『ウツロ』が、『べトゥセクラ』においては確認されなかったとされている。

 そして、大陸西部諸国のどの国よりも早く、天地崩壊が起きたとも。

 余りにも広大な領地のため、天地崩壊による最初の被害は国の一地方に留まり、国は地方で大規模な災害が起きた、と考えられていたようだ。

 この時、既に『グェン』との戦争状態にあったこと、異界に呑まれた地方の行政機関が壊滅状態にあり、情報が正しく伝わらなかったことも、『べトゥセクラ』がこの事態を把握できなかった要因と考えられている。

 そうして、事態に対する初動が致命的に遅れ、対策が打てないままに、やがて国土全土が異界に呑まれる。

 その時期は『アストリア』の天地崩壊とほぼ同時期となったようだ。


 『べトゥセクラ』が『ウツロ』の出現を待たずに天地崩壊が起きたという話については、女神信仰を失ったからではないか、という説がある。


 『ウツロ』とは、女神信仰の護り手を喰らう尖兵であり、『ウツロ』によって女神を信仰する人々の数を減らし、封印が解けるのではないか。

 『べトゥセクラ』はそもそもその必要がないほど、女神への信仰が薄れ、『アストリア』そのものを信仰対象としていたからではないか。それにより『ウツロ』が現れる必要もなく、異界に呑まれたのではないか、という説だ。


 この点について、『メルギニア』の建国史では明確に触れられていない。

 女神への信仰については触れられていないが、『べトゥセクラ』が女神の護り手として、女神から認知されていた、とする記述ならば『メルギニア』建国史には存在する。


 それは、『メルギニア』の建国そのものの逸話にあたる。


 広大な『べトゥセクラ』は、異界の発生が複数箇所に及んでようやく国土全土に広がるほどであったが、逆に、国土の回復もまた複数箇所でそれぞれ対処が必要であった。


 現在唯一の『べトゥセクラ』の後継を名乗る『メルギニア』だが、国としての後継は名乗っていない。

 また、『メルギニア』は『べトゥセクラ』が担った女神の護り手の後継である、としている。


 そもそも『べトゥセクラ』は、天地崩壊によって『ベトゥセクラ』の国土の大半が失われた折、当時の王族や領主たちも亡くなっているため、後継を名乗れる血族が存在しなかった。

 『アストリア』こそが、天地崩壊前から存続するただ一つの国と云われる所以でもある。


 現『メルギニア』に相当する領地で発生した天地崩壊から、国土を回復したのは『ベトゥセクラ』の神子フルークである。

 神子フルークは、『べトゥセクラ』の王族の傍系ではあるが王位継承権を持たない遠縁にすぎない、とはフルーク自身の言葉として遺されている。


「国の礎たる王は失われました。

 しかし、女神の国(『アストリア』のことと思われる)を護るためにその身を犠牲にして戦い続けた皆様の献身を女神様はご存知です。

 私はその献身に報いるための遣いとして、皆様の前にいるのです」


 フルークは、自ら国の王として立つとは一度も言わなかったとされている。

 彼女自身が集団の統率者として振る舞った記述はなく、むしろ、異界から国土を取り戻した後は、災害を生き延びた人々と共に荒れた土地を耕し、大戦によって傷ついた人々を神力で癒やしたとされ、ただ人々のために働き続けたという。

 『メルギニア』の初代の王の座に就いたのは、神子フルークがただ一人、自らの後継として養子にした男児、レムスだった。


 多くの人のために神力を揮い、誰よりも働いたとされる神子フルークは、天地崩壊から十神期()の後、齢二十五の若さで亡くなったとされる。

 彼女の養子として迎えられたレムスも、フルーク同様、彼自身は王になることを望まず、育ての親のフルークに倣うように働いたといわれる。

 彼に神子フルークのような神力があったかどうかは明らかではない。

 しかし、神子フルークがレムスを後継に指名したことを誰もが認めざるを得なかった、そのような人物であったとされている。

 人々がかつての活気を取り戻し始め、集団を形成し始めると、それが自然の理とでも言うように、諍いが起き始めた。

 神子フルークの養子であるレムスは、その人望の厚さから、こうした諍いを度々仲介し、結果的に統率者のような地位に押し上げられたようである。


 だが、集団の統率者として立つことになるにあたり、覚悟を決めたのか、このような言葉が残っている。


「我が母、神子フルークは言った。

 私達は女神様の護り手であり、その奉公を以て救われたと。それは我々の偉大なる親や祖先に対する女神様の慈悲であったかもしれない。

 だが、しかし、我々はまだ女神様に救われたこの命を、女神様に遣わされた母フルークに導かれたこの地を、その恩を、幾ばくもお返しすることが出来ていない。

 我々はまた、こうして前を向き、地に足をつけ、歩き出せるほどに強くなった。ならば、これからは、少しでも女神様からの、そして神子フルーク様からのご恩応えられるよう、手を取り合っていくべきではないか」


 この後、『メルギニア』は、レムスの考えに賛同し、傘下に加わった五つの領地と、現在の直轄領、全部で六つの領地から成る王国として建国する。

 この時から『メルギニア』領であった五つの領地の領主、選帝侯は、五大選帝侯として、現在も『メルギニア』に強い力を持っている。


 その後、王国は様々な変化の中で、やがて帝政に変わっていく事になるが、国の在り方は、このときのレムスの言葉を第一とする、としている。

 女神の護り手としての力の回復、かつての『べトゥセクラ』領こそが、本来の国のあるべき姿である、というのが『メルギニア』の主張であり、この主張を大義名分として、繰り返し他国への侵略戦争を行ってきた。

 この八百神期()の中で、拡大、縮小を繰り返しながらも、他の『べトゥセクラ』の後継を名乗る周辺国の滅亡に巻き込まれることなく、成長を続け、現在は直轄地とそれを除く十一の領地にまで、国土を広げている。


挿絵(By みてみん)


 近年では、二代前の皇帝アルニウム・クラウディウスが、北西に隣接する『レジル』が保有する「ヴィスタ」領(『メルギニア』の北側に伸びるフィート河とポターミ河の狭間に位置する)に侵攻、専有した。


 その後、実効支配を強めるため、アルニウムの息子であり現在の皇帝の一代前の皇帝となるベテルギウス・クラウディウスとヴィスタ領の領主の娘ミルザ・オルムステッドの間で婚姻を結び、自国の十一番目の領土であることを主張した。『メルギニア』の主張を借りるならば、本来の領土の奪還、となる。


 当時前皇帝ベテルギウスとヴィスタ侯オルムステッドの娘ミルザとの婚姻には、多数の反対があったとされる。

 特に、前皇帝ベテルギウスの正妃と目されていたメイサ・ルクセンティアの父である選帝侯マグノリア侯からは強い反対があった。

 しかし、国の内外の抵抗勢力に対して苛烈な仕打ちを行ってきた前々皇帝アルニウムへの恐れと、国が現実的に享受する利益の双方を鑑みて、彼は折れることとした。

 後年、彼はなぜあそこで折れたのか、と悔いたというが、この時点においては、彼の判断が誤りであったとすることは難しいであろう。

 

 その後、『メルギニア』は戦後処理やヴィスタ領の安定を目的にしばし、内政強化の期間を迎えるが、前々皇帝アルニウムがなくなり、前皇帝ベテルギウスが跡を継ぐと、『メルギニア』は再び領土奪還に向けた舵を切る。

 

 

 今度はヴィスタ領の更に北側、ポターミ河を越えて『キシリア』に向けて進軍を開始する。

 しかし、『メルギニア』の領土奪還を目的とした侵攻は、四神期()の時をかけたにも関わらず、叶うことはなかった。

『キシリア』の抵抗を打ち破れなかったわけではない。

『メルギニア』は四神期()の歳月をかけて順調に戦線を押し上げていた。戦の後半は陣中は前皇帝ベテルギウスも姿を見せ、兵を鼓舞し、最後の仕上げに取り掛かっていたのだ。

 しかし、そのベテルギウスが陣中で突然高熱を発し、手を施す間もなくそのまま病没したのである。

 

 当時の『メルギニア』軍幹部はこの事態に混乱に陥り、あわや全軍潰走の危機となっていた。

 これを止めたのが、当時『メルギニア』軍の実質的な総指揮を執っていたアンスイーゼン侯カファティウス、現国防大臣である。

 

 彼は事態を知ると、即座に秘密裏に陣中に滞在していた七名の選帝侯を集め、従軍中の皇太子シリウスの即位を認めるよう迫った。当時、この場に居た選帝侯は次の通り。

 アンスイーゼン侯カファティウス

 オレアニア侯ホルテンシウス

 チェイン侯カッシウス

 クレーべ侯アウレリウス

 バトロイト侯バビリウス

 ケヴィイナ侯デキウス

 ヴィスタ侯オルムステッド

 

 このうち、ヴィスタ侯は、皇太子シリウスが自身の孫であることから、最初から否はなかった。

 ケヴィイナ領を除く五大選帝侯は、ヴィスタ領が多少力を持ったところで、彼らには大した問題ではなかった。それよりもそれが国益に適っているのであれば、やはり否はなかった。

 最後に残ったケヴィイナ侯デキウスは五大選帝侯であるアウレリウスと血縁関係を持つことから、この当時は、皇太子派であり、皇太子の即位に反対する理由がなかった。

 

 カファティウスはこうした関係性を理解し、勝算を持ったうえで、選帝侯に略式による皇帝即位を迫っていた。

 そして、結果は彼の思惑通りになった。そこに彼個人の「欲」が含まれていなかったことも、誰も反論をしなかった理由であったかもしれない。

 

 こうして、即座に軍の最高指揮官の交代劇を成し遂げたカファティウスだが、同時にこれ以上この戦争の継続が困難であることを悟っていた。

 

「あの父親にしてこの子あり、という話は聞くが、どう育てば、あれほど穏やかな子が育つのか」

 

 と、カファティウスが言ったという記録は残っていない。

 だが、新皇帝シリウスが皇帝ベテルギウスの跡を継ぎ、そのまま戦闘継続出来るような性格ではない、と考えていたことを、後日オレアニア侯ホルテンシウスに語ったとされる。

 

 

 彼は体制の構築と並行して速やかにこの戦争の幕を引くための策を二つ打った。

 

 一つは『キシリア』軍の主将に密会の使者を出し、講和に向けた秘密裏の交渉だった。

 この時、カファティウスはあくまでも『メルギニア』軍の総司令である皇帝を通さず、総指揮官の立場で『キシリア』と交渉を行っている。

 

 四神期()に渡る戦争から、双方に少なくない被害を出し、仮にこのまま『メルギニア』が『キシリア』南部を奪ったとしても、この領地の維持は西の隣国『レジル』が容易に許しはしないだろう。

 そうなったとき、『レジル』に侵攻のきっかけを与え、『メルギニア』、『キシリア』はその後さらに被害を被る恐れがある。

 『メルギニア』はヴィスタ領の安寧が確保されれば、当面は問題がない。

 『キシリア』がポターミ河を越えて『メルギニア』に侵攻しないという密約を交わすなら、ここで軍を引いてもいい。

 

 カファティウスはこの密約を『メルギニア』が守る証明として、翌陽(翌日)行われる戦で、『メルギニア』から戦を仕掛けず、その後撤退することで示すことを約した。

 一方で、翌陽の戦で『キシリア』がこれまで通り戦を続けるようであれば、『メルギニア』皇帝は『キシリア』を滅ぼすまで侵攻を止めぬだろう、と告げ、その場を去る。

 

 もう一つの策は、撤退時の保険だった。

 安全かつ速やかに軍を引くためには、撤退中の追撃を防ぐ必要がある。『メルギニア』が撤退の約を守ったとして、これまで負け戦の色が強かった『キシリア』がこれ幸いと全力で追撃にかかられた場合、無視できない損害が出ることだろう。

 そこで彼は、虜囚となっていた『キシリア』の兵たちを収容した天幕近くで、子飼いの兵に一芝居打たせた。

 

「おい、指揮官からの命令だ」

 

「こんなとこでそんな話をするなよ」

 

「どうせ、『キシリア』のやつらは、みんな捕まるか死ぬんだ。構うものか。

 いいから聞けよ。

 次の戦では、積極的な戦闘をするな。にらみ合いのまま戦闘を長引かせ、闇星が天頂に浮かぶ頃、敵にそれと分らせるよう撤退する。追撃してきた敵を後背に控えた伏兵と共に包囲殲滅戦を行うんだ。これを次の戦闘までに全部隊に通達せよ、ってさ」

 

「伏兵ってどこから連れてきたんだよ」

 

「ヴィスタ領と『レジル』との国境ぎりぎりのところからポターミ河を越河させてるらしい。翌陽(翌日)の戦闘後は『キシリア』の後背から襲い掛かるって算段だと」

 

 

 こうした会話を虜囚を収容したいくつかの天幕で行わせた後、カファティウスは翌陽(翌日)の戦闘では、実際ににらみ合いだけの散発的な戦闘に終始させた。これまでも緩急つけた攻めを駆使し、『キシリア』を苦しめ続けていたことも功を奏し、『キシリア』は『メルギニア』の出方を警戒したまま時間を浪費する。

 そしてその()の闇星が空に昇る頃、『メルギニア』はそれと分らぬよう、陣に火を灯し、鍋で水を煮たまま、軍を撤退させた。

 

 

 『キシリア』軍が『メルギニア』の約を信じ動かなければそれでよし。

 『メルギニア』の動きに気づいた場合、敢えて陣に一部残した虜囚の兵士に気づけばそれもよし。

 仮に気づかず襲い掛かってきたところで、迎え撃つだけの手も打っていた。

 そのいずれの策が功を奏したかはわからないが、結局この時『キシリア』は『メルギニア』を追ってくることはなかった。

 

 この後、『キシリア』を警戒するために兵の大半をヴィスタ領に置いたまま、前皇帝ベテルギウスの崩御と新皇帝シリウスの即位を発表した。

 略式で済ませた即位の儀式を改めて行うにあたり、残った四つの選帝侯、特にマグノリア侯ルクセンティアからの強い反発があったが、既に戦場の兵士、つまり臣民が了承済みであり、略式とは言え、従軍していた教会の治癒術士が女神への報告を行うことで、本来の儀式に必要な手続きはすでに済まされたあとであった。

 不足していたのは選帝侯の承認のみであり、それとて、自らの権利だけを盾に拒み続ければ、民や教会を敵に回しかねず、また、戦争中の『キシリア』に対して弱みを見せることにもなりかねなかった。

 

 この時、既に『キシリア』との密約による講和は成っているのだが、カファティウスは当然このことを公表しなかった。

 つまり周囲は未だ『キシリア』との戦争中である認識なのだ。

 ヴィスタ領の兵は、実際に『キシリア』からの侵攻を警戒するだけでなく、未だ戦争中と誤認させるための仕掛けでもあった。


 こうして、国の内外をそれぞれ欺き、残りの選帝侯にも新皇帝の即位を認めさせると、カファティウスは全権代理として、『キシリア』との正式な和平交渉を開始する。

 停戦の条件は、密約時に結んだ条件と同様、互いの国への不可侵。付け加えられたことがあるとするなら、それは不可侵を守るべき期間であった。

 四神期()に渡っての不可侵。

 この情勢においてはそれ以上先のことを確約することは互いに「難しい」ことからの期限であった。

 

 和平交渉の場に向かうにあたり、『キシリア』も密約は体よく欺かれていたことに気付いていた。しかし、密約を締結するにあたって取り決めた条件は確かに履行されており、そもそも非難できる類のことでもなかった。

 また当時提示された条件、互いの不可侵も、戦役において兵力を大きく損耗していた『キシリア』としては、呑む以外の選択肢はなく、彼らの内心は別にして、にこやかに交渉に応じるしかなかったのである。


 この和平交渉の間に、自らに対する粛清を恐れ、帝都を離れたものがいた。

 前皇帝の第二妃メイサ・ルクセンティアとその子、現皇帝の弟、皇弟プロキオン・クラウディウスである。

 思わぬ形で皇位継承戦が始まり、そして参戦する暇も与えられることなく破れた前皇帝の第二妃は、再起を図るため、父親が治めるマグノリア領に身を移す。


 皇帝となったシリウスには、もともと弟を排除する意思はなく、第二妃も彼を恐れていたわけではなかった。

 恐れていたのは彼を取り囲む周囲の権力者達である。

 彼女の出身であるマグノリア領は、『メルギニア』の拡大政策の中で併呑された『ポートガス』国を母体としており、『メルギニア』からすれば、勢いを削いでおきたい勢力である、と彼女は考えていた。

 『メルギニア』は他国を滅ぼすよりはそのまま取り込む国であったが、彼女にはそれが理解できなかった。

 そもそも粛清が行われる予定はなかったが、仮に『メルギニア』が粛清を断行したとすれば、次に待つのは、マグノリア領ルクセンティアを盟主とした旧『ポートガス』王国の内乱だ。

 そうなれば、仮に内乱を鎮圧したところで、弱体化したところを周辺国に侵略されるだろう。

 カファティウスはもちろん、現皇帝を支持する5大選帝侯の誰も、そのような未来は望んでいなかった。

 現在の国の情勢を鑑みても、粛清が行われる可能性は少なかったのだ。

 だが、彼女は、自らの危険を信じ、帝都を離れた。

 そうして、自ら、炎を育てていくのだ。

 その火が誰を焼き尽くすのか、今はまだ、誰も知らない。


 この第二次フィート・ポターミ戦役、通称『キシリア』戦役の功績を以て、カファティウスは国防大臣に任じられ、選帝侯としてはただ一人、大臣を兼務する選帝侯となる。

 本来5大選帝侯には序列はなかったものの、この後は徐々に選帝侯筆頭のような立場を固めていくことになる。


 かくして、『メルギニア』は、最初の王レムスが掲げた女神の護り手としての力を取り戻せぬまま、天地崩壊の時を迎えようとしていた。

 

 神子は未だ現れず、

 人々はただ、己の力のみで未曽有の災害に立ち向かおうとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言]  カファティウスがいるということは、最後は現在なのでしょうが、少し前の話、なのですかね。  歴史書を読んでいるようで。  カファティウス、有能なのですね…。
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