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崖っぷち貴族の生き残り戦略  作者: 月汰元
第4章 新領地開発編
112/313

scene:111 古代文字

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

「あっ、宝箱がある」

 アメリアが声を上げた。黄煌剣が入っていた箱より大きく、豪華な見た目である。


 立ったままジッとしていた黄金スケルトンが動き始めた。アーマードスケルトンより一回り大きく体長が二メートル以上はありそうだ。だが、大きさだけでデニスたちの戦意を挫くことはできない。全員が覚悟を決め戦うことを決意した。


「行くぞ」

 デニスが先頭で部屋の中に入る。その部屋はパーティーができるほどの広さがあり、家具などの残骸が散らばっていた。


 デニスたちは武器を構え、黄金スケルトンを迎え討つ。敵の武器は一メートル以上はありそうな大剣だ。デニスは宝剣緋爪を上段に構えてジリジリと近付く。


 一方、リーゼルは爆裂球攻撃の準備を開始。アメリアたちは散開し黄金スケルトンを取り囲んだ。

「シャーッ!」

 デニスが跳躍し黄金色の鎧に緋爪を振り下ろした。金属と金属がぶつかり甲高い音が響き、鎧の胸の部分に大きな傷が刻まれた。


「避けて!」

 リーゼルの声で、デニスが後ろに飛び退る。その瞬間、爆裂球が黄金スケルトンの胸で炸裂した。その衝撃でデニスが刻んだ傷が押し広げられ、鎧の一部に穴が開く。


 それでも黄金スケルトンは機械的にデニスに近付き、大剣を横薙ぎにする。大きな弧を描いて迫る刃を、背を屈めて避け、下から緋爪をすり上げる。


 緋色に輝く刃が、黄金スケルトンの手首を斬り裂いた。大剣が握っていた手と一緒に床に落ち、ゴトリと音を立てる。

「今だ!」


 デニスの声で、アメリアたちが一斉に攻撃する。アメリアとヤスミンの長巻が足の骨を斬り裂き、フィーネの黄煌剣が黄金スケルトンの頭蓋骨に突き立った。黄金スケルトンが倒れても攻撃は続き、全員で袋叩きにする。


 スケルトンは骨をカタカタと鳴らしながら暴れたが、倒れている状態では装甲膜を破壊するほどの力は出せないようだ。一分ほど袋叩きの状態が続き最期を迎えた。


 黄金スケルトンが消えた時、また卵が現れた。デニスは拾い上げチェックした。大きさはアーマードスケルトンのものより大きい。前回の卵は四センチほどだったが、今回は六センチほどである。


 アメリアたちは、卵には興味がないようだ。彼女たちの注目は、部屋の奥にある宝箱に集中している。

「デニス兄さん、何が入っているんだろう?」


「分からないよ。開けてみよう」

 デニスは罠を警戒してアメリアたちとリーゼルを部屋の外へ出してから、宝箱を開けた。開けた途端、シュッと音がして短い矢が飛び出し、デニスの装甲膜に当たって床に落ちた。


「大丈夫なの?」

 リーゼルが跳んできて、デニスの無事を確認した。その後ろには心配そうな顔をしているアメリアたちが続いている。


「大丈夫だ。装甲膜が弾いてくれた」

 デニスは宝箱の蓋を開けた。今度は何事もなく中身が姿を現した。中には湯呑みを小さくしたような器が四個置かれていた。デニスは、それを『ぐい呑み』かと思った。


 ぐい呑みというのは、酒を飲む盃の一種である。だが、それは何かの金属で作られており、外側には幾何学模様が描かれ、底には迷宮石が埋め込まれていた。


 宝箱の底を見ると何かが書かれている紙が置かれていた。デニスは紙に書かれている文字を読めなかった。

「これ、読めるか?」

 デニスはリーゼルに紙を渡した。


 リーゼルは首を振り否定した。

「これは古代文字じゃないかな。王都の学者さんが研究していると聞いたことがある」

「へえー、古代文字か」


 古代文字は、一二〇〇年前にここ一帯に文明を築いたフェシル人が使っていた文字で、現在読める者はほとんどいないと言われている。


 城の建築様式は、三〇〇年ほど前に滅んだ前王朝のものなのに、宝箱には一二〇〇年前に使われていた古代文字で書かれた古文書があった。チグハグな感じがする。


 そうなると、王都へ行って学者に調べてもらわなければならないだろう。これもデニスが所有することになった。これをデニスのものにする代わりに、リーゼルやアメリアたちには、それぞれに金貨一枚を払うことで話がついた。


「さて、他には何もないようだ。三階を探そう」

 デニスたちは三階を探した。だが、そこでは何も見つけられなかった。この城で九階層へ続く手掛かりが発見できると思っていたのだが、当てが外れたようだ。


 デニスはもう一度一階を調べようと思った。一階には壁が崩れた部屋があり、その部屋だけはひと目見ただけでスルーしたからだ。


「壁が崩れていた部屋を、もう一度調べてみよう」

「でも、あそこには何もなかったよ」

 アメリアが異を唱えた。


「念のためだよ。瓦礫の下に何かが埋もれているかもしれないぞ」

 デニスの意見で、もう一度一階を探索することになった。


 前回スルーした部屋に戻ったデニスたちは、瓦礫を片付け床を調べた。そして、階段を発見する。

「本当に階段があった」

 アメリアが驚いたように声を上げた。もう一度探そうというデニスの意見に賛成したが、本当は何も見つからないと思っていたのである。


 その階段を下りた先には、大きな扉があった。その扉には先ほどの古文書と同じ文字で何かが書かれていたが、意味不明だ。デニスは押したり引っ張ったりしてみたが開かない。固く封印されているようだ。


 デニスは扉を調べてみた。鍵穴のようなものはなく、特別なものは扉に書かれた古代文字の文章しかない。

「その古代文字を解読しないと、開けられない仕組みになっているのかも」

 リーゼルが推測で意見を言った。


「だとすると、王都で学者に調べてもらわないと、これ以上進めないということになる」

「残念ながら、そうね」

 デニスたちは話し合い、古代文字を書き写してから引き返すことにした。


   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


 デニスたちが迷宮から戻って数日後、クリュフバルド侯爵が領主屋敷で客を迎えていた。バラス領の新領主スヴェンである。

「侯爵様、新たに影の森迷宮に入る許可証八枚を頂きたい。これはバルツァー公爵様からの要望ですぞ」


 侯爵はスヴェン準男爵をジロリと見た。『虎の威を借る狐』が調子に乗りやがって、という目である。

 この男は自分が準男爵でしかないのに、公爵の名前を出せば相手が必ず下手に出ると考えているようだ。


「それで理由を伺いたい」

「もちろん、紅旗領兵団の訓練をするためである。いざという時は、紅旗領兵団が国を守らねばならんのです」

「そうですか。それで、どの区画で訓練をされるのかな?」


 スヴェン準男爵が胸を張って答えた。

「七区画でオーク狩りをする予定です」

 オークを狩って『豪腕』を手に入れるつもりなのだろう。侯爵は許可証を用意して、スヴェン準男爵に渡した。意気揚々と帰った準男爵を見送り、口をへの字に曲げる。


「父上、バラス領の新領主をどう思いますか?」

 侯爵の執務室に入ってきた息子のランドルフが尋ねた。

「ふん、どうしようもない小物だな。公爵という後ろ盾があるから強気に出ているが、交渉のイロハも知らんようだ」


 ランドルフは顔をしかめた。

「そういえば、ベネショフ領のデニスが影の森迷宮に来ているようです」

「どの区画だ?」

「四区画で、爆裂トカゲ狩りをしているようです」


 侯爵が考えるような顔をする。

「ふむ、紅旗領兵団の兵士たちがオーク狩りで、ベネショフ領の次期領主が爆裂トカゲ狩りか。どの貴族家も戦力増強に動いているということか?」


 ランドルフは首を傾げた。

「ベネショフ領は少し違うようです。デニスと一緒に狩りをしているのは、妹とその友人らしいですから」

「何だと……何を考えておるのだ?」


「私にも分かりません。ところで、ヌオラ共和国のギレ山賊団の活動が激しくなっているようですが、討伐隊を出しますか?」


 クリュフの西には、小さな村や町がいくつか存在する。それらもクリュフ領の一部なのだが、近年になって、それらの地方がヌオラ共和国のギレ山を根城とする山賊団に襲撃されるようになった。


 クリュフバルド侯爵としては、すぐにでも討伐したいのだが、ヌオラ共和国との国境線付近に兵を出すことになり、侯爵家の一存だけでは決められないのだ。


「そのことは国王陛下に報告し、討伐隊を出す許しを願い出たところだ。返事が来るまで、もう少し待て」

「許可が下りた場合、侯爵家だけで討伐隊を編成することになるのでしょうか?」


「いや、西部地域の貴族家が合同で討伐隊を編成することになるだろう」

「しかし、他の貴族家には碌な戦力はありません」

 西部地域の貴族家は、男爵や準男爵などの規模の小さな貴族が多く、出せる兵力も限られている。クリュフ領だけで討伐隊を編成して戦う方が楽なのだ。


 侯爵がニヤリと笑った。

「ベネショフ領があるではないか。あの兵士たちはダミアン匪賊団を討伐したという実績がある」



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【書籍化報告】

カクヨム連載中の『生活魔法使いの下剋上』が書籍販売中です

イラストはhimesuz様で、描き下ろし短編も付いています
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― 新着の感想 ―
[一言] あけましておめでとうございます。 最新の更新を首を長くして待ってました!ぽやぽやが1週間後だから、そちらも待ち遠しいです。 妹ちゃんとその仲間はドンドン強くなっていますね、このまま嫁の貰い手…
[気になる点] 後半、クリュフバルド侯爵領の話と思われる部分が「ダリウス領」になっている気がします ダリウス領は公爵の領地で、地図の位置から見ても西部地域ではないような [一言] あけましておめでとう…
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