第72話　スイムの秘密？

　この状況で一番厄介なのはやっぱりサンダースだと思う。

　だけど、どうしてサンダースがこんなことに――やはり連中の仲間が他にもいてこの暴徒化に一役かってるのだと思う。

「おいネロ。こいつら、いくら倒してもきりがねぇぞ！」

「うん。それに操られているとしたら下手なことは出来ない」

「……本当甘い奴だな。こいつら全員冒険者だ。こういった時の覚悟ぐらいは出来てる筈だぜぇ！」

　そう口にしつつガイが向かってきた冒険者を切りつけた。容赦ない、といいたいところだけどしっかり急所を外したりと無力化程度に収めている。

　口は悪いけどこういうところはガイもしっかりしてるんだよね。

「ネロ……もしかしてこれもあのガルという男の仲間が関係しているのですか？」

　セレナから質問が飛んだ。

「多分そうだと思う。そこのガルもだけど黒い紋章持ちなんだ。僕たちが最初に戦ったライアーという男もそうだった」

「黒い紋章……まさかそれで？」

「え？　セレナ何か気が付いたの？」

「スピィ～？」

　セレナが何かを察したような真剣な目を見せる。

「そこのガルという男。生命力に黒い靄が掛かったような反応が見えるのです」

「生命力？」

「セレナは生命力を感知できるんだよ。範囲内の弱ってる相手も見つけることが出来る、て」

「ウウォオォォオオォオオォオオオ！」

　サンダースがガイに殴りかかっていた。まずい援護しないと！

「水魔法・水ノ盾！」

「うぉ！」

　盾をガイの前に出して何とか攻撃を凌いだ。だけど電撃が弾けて盾が消え去った。前もそうだったけど水だと雷は防ぎきれない上、雷の増幅で電撃が弾ける。一応ダメージを防げてはいるけど対象から離すようにして発生させないと逆に危険だ。

「ネロ！　ガイ！　私の生命感知なら残った仲間も見つけられるかも知れません」

「うん。だから私もセレナと一緒に行って残った仲間を見つけて倒してみせるよ！　だからネロ――パパをお願い！」

　どうやらエクレアはセレナと一緒にもう一人いるであろう奴らの仲間を探しに行くようだ。だからかサンダースの事はお願いされた。

「わかったよ。君のパパも暴徒化した冒険者もここで食い止めて見せる！」

「信じてるネロ！」

「ガイもお願いね！」

　そう言い残して二人がどこかにいるであろうもう一人の仲間を探しに向かった。

　そして僕も暴徒達に対応するため水魔法・一衣耐水で守りを固める。

「チッ、んなこと一々いわれなくてもわーってんだよ！」

「グォオオォオォオオオッ！」

　二人を見送りつつ叫ぶガイにサンダースの拳が放たれた。魔法が間に合わない！　雷混じりの拳を受けてガイが吹っ飛んだ。

「ガイ！」

「ぐっ！　一々俺を気にかけるんじゃねぇ！　そっちはそっちで考えてろ！」

　良かった。どうやらガイは無事なようだ。攻撃を受ける寸前後ろに飛んでいた気がする。それで威力を殺したんだろうね。

　とは言え相手はサンダースだけじゃない。多くの冒険者が暴徒化している。正気を保ってる冒険者も抗ってくれてるけど数が違いすぎだ。

　出来るだけ纏めて無力化しないと。纏めて――ふと脳裏にこの街にある物が思い浮かんだ。

「閃いた！　水魔法・噴水！」

　魔法を行使すると地面から勢いよく水が噴出し範囲内の冒険者を纏めて吹き飛ばした。

「よし！　これで結構減ったよ！」

「――意外とテメェも容赦ねぇな」

　ガイが目を細める。いやでも意識を奪う程度に留めてるから！

「ウガァアアアアアァアアァアア！」

　そこで再びサンダースの叫び声。ビリビリと空気が痙攣しているようだ。そして放たれた電撃の先に、スイム！

「スイム避けて！」

「スピィイイィィイイ!?」

　そ、そんなスイムがまともにサンダースの攻撃を。そんな、そんな――

「スピッ？」

「て、全然無事じゃねぇかあぁああ！」

　ガイが叫んだ。僕もスイムを確認してみるけどケロッとしている。え？　今なにかあった？　見たいな様子だ。

「良かった無事で……」

「スピィ～♪」

　スイムがピョンピョンっと戻ってきて僕の肩に乗った。本当に安心した。でも、どうして……いや、そういえばライアーと戦ってたときにもスイムはライアーの電撃に撃たれて平然としていた。

　まさかと思ったけどスイムには雷が通じない？　でも一体どうして――