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【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第八章 救いたい仲間たち

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第279話 頼りになる仲間との合流

「みんな……来てくれてありがとう」


 エクレア、マキア、ザックス、そしてウィン姉。

 ピンチの最中に駆けつけてくれた仲間たちの姿は、胸が熱くなるほど心強く感じられた。


 けれど同時に、気になる点もある。


「ところで、その二人は……?」


 視線を向けたのは、僕にとって見覚えのない人物たち。少なくとも、この場に乗り込んだ時にはいなかった顔ぶれだ。


「この二人はね、私たちが危なかった時に助けに入ってくれたんだ」


 エクレアが説明しようとした、その時だった。


「ネロ!」


 甲高い声とともに、女の子が勢いよく駆け寄ってきて僕に飛び込んできた。


「わわっ!?」

「スピィ!?」


 思わずその小さな体を抱きとめる。肩の上のスイムも驚いたように跳ねて声をあげた。


「えっと……どうして僕の名前を?」

「知ってるもん! ネロは、私の救世主だよ!」


 きゅ、救世主!?

 突然すぎて、頭が追いつかない。


「いくら子どもとはいえ……愛弟に馴れ馴れしいぞ!」


 横から鋭い声。ウィン姉が女の子を抱きかかえるようにして引き剥がした。

 ジルベルトと戦っていたはずなのに、振り返ればそのジルベルトが呆けたようにこちらを見ていた。


 ――戦いを放り出してしまったんだな。

 ウィン姉に抱えられた少女は、いやいやと手足をバタバタさせている。


「いやぁ! ネロと一緒がいい!」

「ネイト様、落ち着いてください」


 低く落ち着いた声が飛ぶ。長い黒髪の男性が近づき、少女を諭すように言った。


 彼女の名は――ネイト。


「ネロ殿、失礼いたしました」


 黒髪の男性は、そう言って僕に深々と頭を下げた。


「この人はケトルという方でね。すごく腕が立つのよ」


 エクレアが補足してくれる。


「そうなんだね」

「スピィ」


 ケトルは短く頷くと、すぐに視線をギレイルへ向け、腰の剣に手をかけた。

 それは一見すると片刃の直剣のようだが、鍔や鞘に独特な細工が施され、ただの剣ではないとすぐに分かった。


「おい! そいつら、本当に信用できるのかよ!」


 ガイが歯を食いしばり、声を荒げる。相変わらず疑り深い。


「むぅ、ケトル……こいつ、本当に“守護者”になるの?」


 ネイトが心配そうに尋ねる。


「紋章が出ている以上、間違いはないかと」


 ケトルが淡々と返す。その言葉にガイの眉がつり上がった。


「あぁん? 何だ、文句あんのか!」

「ちょ、ガイ! 子ども相手に大人気ないよ!」

「スピィ……」


 僕が慌てて制止する。スイムも呆れ顔でプルプル震えていた。


「やれやれ、この状況で呑気に……我々を舐めているのか!」


 蟀谷に血管を浮かべたジルベルトが、四本の剣を構え直して向かってきた。

 その刹那、ケトルが一歩前に出て、静かに剣を抜き放つ。


 ――速い!


「むっ、貴様……!」


 ジルベルトの四本の剣が一斉に襲いかかる。しかしケトルの剣筋はまるで舞うように淀みなく、全てを正確に捌き切った。

 甲高い金属音が連続して響き、互いの剣がぶつかり合う。


「ケトルの抜刀術は完璧なんだよ!」


 ネイトが弾むような声で叫ぶ。その言葉に違わぬ技量。確かにこれなら、ギレイル相手でも十分に渡り合えるかもしれない――そう思った矢先だった。


 空を切り裂く甲高い音。空中から、黒い球体が轟音とともに落ちてきた。


「……これは!」


 嫌な予感が背筋を走る。


「危ない! みんな避けて!」


 僕の声に反応し、仲間たちが一斉に跳び退く。

 地面に衝突した瞬間、爆ぜるような衝撃が走り、石片と爆煙が周囲を覆った。


 ――砲弾。


 こんな芸当ができるのは、一人しかいない。


「アクシス家次男……ガンズ・アクシス!」


 爆煙の向こうに浮かぶ黒い影。その名を呟いた瞬間、胸の奥に冷たいものが広がった。

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