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【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第八章 救いたい仲間たち

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第263話 姉と妹

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 エクレアたちがアンダラと刃を交えている最中──ウィンは父ギレイルと対峙していた。

 庭園に吹き込む風が二人の外套を揺らし、剣尖が陽光をはね返す。


「素直に退くつもりはなさそうだな」

「愚問だな。姉として愛弟を助けるのは宿命。たとえ相手がお前であっても──だ」


 父を真正面から睨み据えるウィンの瞳には、微塵の迷いもない。


「まったく、あんな塵のどこが良いのか理解に苦しむ。お前だけだぞ、あの塵をそこまで気にかけるのは」

「私以外、見る目のない者ばかりということだ」


 ギレイルが失望にかすかな溜息を漏らす。


「優秀ゆえ目をかけてきたのだが、残念だな。──魔導錬金・三大練兵」


 地面へ両掌を押し当てた瞬間、火、風、土の魔力が渦を巻き、三体の兵士がせり上がった。熔岩を纏った剣士、旋風が鎧を成す槍兵、巨岩の盾を掲げた衛士。三方同時に突進してくる。


「相変わらず節操のない錬成だ」


 ウィンは吐き捨てるや、剣を反転させ一歩で間合いを詰めた。火の剣士の斬撃を躱しつつ風兵の槍先を足刀で弾き、岩盾の裂け目へ鋭く突きを通す。土兵が砕け散る衝撃で剣閃が走り、爆ぜた岩屑が宙に舞う。


「まだだ──魔導錬金・多連大砲!」


 父の両脇に、砲身が蜂の巣のように連なった魔導大砲が生成される。轟音とともに放たれた砲弾が乱舞し、石壁を抉り、噴煙が真昼を曇らせた。


「派手だが私には当たらん!」


 ウィンは足下に風を纏い、空隙を突く跳躍で弾幕を縫う。すれ違いざま放った斬閃が数発の砲弾を真っ二つに裂き、魔力の火花が夜空のように瞬いた。切り裂かれた砲弾が爆ぜる炎を背に、ウィンは一気に父へ肉薄する。


「魔導錬金・泥田坊!」


 足下の芝が波打ち、巨躯の泥人形が現れた。

 剣を一閃。巨人は刹那で散ったが、飛散した泥が広範に降り注ぎ、地面を泥濘へ変貌させる。膝まで埋まったブーツが、機動の要である風の加護を鈍らせた。


「残念だったな。それでは思うように動けまい」

「少しは考える頭があったようだ。しかし……屋敷が見る影もないぞ。後で使用人が泣く」

「我が家のメイドと執事は優秀だから問題ない。──さて、お仕置きの時間だ」


「お父様! その役目、ぜひ私にお任せを!」


 高空から震える声。祇の翼を広げたスネアが旋回し、烈風を巻き起こして舞い降りる。


「見つけたわ、ウィンリィ! よくも私の髪を滅茶苦茶にしてくれたわね!」


 乱れた緑髪を振り乱し、鬼女の如く歯噛みする妹。ギレイルの傍らに降り立つなり父へ訴えた。


「この女は私がしっかり躾けます! どうかお任せを!」

「──ふむ」


 顎を撫でたギレイルはウィンへ視線を向け、愉悦に唇を吊り上げる。


「よかろう。たまには姉妹で語らうのも悪くあるまい。好きにするがいい。──魔導錬金・疾風馬」


 渦風が蹄を形作り、淡青の駿馬が出現。ギレイルは颯爽と跨った。


「行かせるか!」

「あなたの相手は私だと言ってるでしょう!──蛇召喚魔法・毒千蛇(どくせんじゃ)!」


 スネアが手を翳し叫んだ。地脈を裂いて噴き上がる黒煙の中から、無数の毒蛇が頭をもたげた。千を下らぬ牙が一斉に鎌首を振り、ウィンへ殺到する。


 だがウィンの足首は深い泥へ囚われたまま。踏み切れず、剣の軌跡がわずかに鈍る。

 襲い来る蛇群の嘶きが、まるで勝利を告げる軍鼓のように鳴り響いた――

ここまでお読み頂きありがとうございます。皆様の応援もあってコミカライズ版の第1巻も好評発売中です!

そして現在新作として

『親友に裏切られ婚約者をとられ仕事も住む家も失った俺、自暴自棄になり放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました』

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