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【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第八章 救いたい仲間たち

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第259話 カブキ

いつも感想と誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「ザックス! これを使いな!」


 メイドたちが襲いかかるその瞬間、マキアは鉄扇とパイプキセルを弟へ投げた。

 ザックスは空中で鉄扇を見事に開き、残心のまま着地。


「ヨッ! 天下一の伊達男、ザックス郎のお目見得ェェェッ!」


 右手で鉄扇をひらり、左足を斜に構え、弓なりに反らした背をポンと打って見得を切る。白粉に彩られた顔が鬼火のように輝いた。


 ――刹那、場の空気が変わる。


「なにそれ、ふざけてるの?」

「虚仮威しでわたくしたちを惑わせるつもり?」


 アンダラとスネアの嘲笑。それを目にしたマキアが言い放つ。


「悪いけどこっちは大マジだよ。あんたらは知らないだろうけど、カブキはとある島国に伝わる伝統芸の一つよ。文献で見つけてから興味を持って調べている内に閃いた、私の切り札よ」


 マキアが得意げに言い放った。所持していた鉄扇とキセルも、カブキとの相性を考えて用意しておいたものだった。


「どこの田舎の伝統か知らないけど、アクシス家に逆らったことを後悔させてあげる。やってしまいなさい!」


 アンダラが命じるとメイドたちが一斉に踏み出し、同時にザックスも大地を蹴った。


「ヨォッ! ハッ、ハッ、ハァァッ!」


 扇を盾に、キセルを剣に。振り下ろされたナイフを鉄扇で弾き、柄尻で手首をはじく。


 服の裾を翻すようにくるりと回転し、跳ね返したナイフを背面の敵へ投げ返す。


 紙吹雪のように散った刃がメイドの肩や腿を穿ち、そのまま失神させた。


「な、アクシス家のメイドが……!」

「落ち着きなさい! かすり傷よ!」


 立ち上がるメイド。だがザックスはキセルを片手に高く吸い、紫煙を大気へ吐き出した。

 紫煙は魔法的に増幅され、瞬く間に霧壁となって視界を奪う。


「さあさご覧あれ! 霞の如き朧の舞ッ!」


 霞の向こうで鉄扇の金骨が光を掠め、鈍い音と共に次々とメイドが跳ね飛ばされた。


「どうやら、私達も動かないと駄目なようね」


 形勢不利と見たアンダラが白い手袋を外し、右手を翳す。


「紙風魔法・千刃鶴」


 突風とともに大量の紙片が出現し、鶴へ、さらに鋭利な刃へ昇華されて疾風に乗る。

 

一方でスネアも魔法を行使していた。


「蛇召喚魔法・黒大蛇!」


 影から漆黒の大蛇が伸び、ザックスへ食らいついた。


「ヨッ! 燃えろォォッ!」


 ザックスはキセルから大扇状に火炎を吐き鶴を焼こうとするが、風刃は炎を裂き、紙鶴はうねるように軌道を変えて彼へ突撃。

 無数の切り傷が跳ね血を散らし、背後から大蛇が牙を剥く――


「ザックス!」


 マキアが悲鳴をあげた、その時。


 ――バリバリッ!


 雷撃を帯びた巨槌が闇のような蛇体を横殴りに叩き飛ばした。


「間に合ったわよ!」


 エクレア到着。鉄槌は雷鳴を残し、床に亀裂が走る。

 ザックスによる残り火と雷光が交錯し、吹き飛ばされた大蛇は壁を砕いて動かなくなった。


 助かった――と思ったものの、ザックスは受け身を取れず背中から床へ。


「いててて……俺、今、何やってたんだ?」


 キセルも鉄扇も手から離れ、隈取りが薄れていく。マキアは額に手を当て嘆息した。


「やっぱりぶっつけ本番じゃ魔力の維持が限界ね……」


 カブキメイクは解け、兄妹は再び窮地。だが頼もしい雷姫が立ちはだかった。


「マキア、ザックス、ここからはわたしと一緒に――この舞台(ステージ)、華々しく幕を引こうじゃない!」


 雷を帯びた鉄槌が鳴り響く。一方でアンダラとスネアも不敵な笑みをこぼしていた。


 戦いの幕は、まだ下りない――。

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― 新着の感想 ―
普通にマキアのやってる事が最低 人の心がないんですか? 肉親の意思を無視して戦わせるなどという外道行為をこっちは大マジだよなんて言われても・・・ 鉄扇とキセル、カブキとの相性を考えての用意とやらも 結…
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