第250話 アクシス家に入り込む
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「お待ちしておりました。奥で奥様とお嬢様がお待ちですのでご案内いたします」
マキアを先頭に僕たちはアクシス家にやってきた。久しぶりに目にする屋敷は、相変わらず圧倒されるほど大きくて豪華だ。正門をくぐった瞬間、白亜の外壁が高々とそびえ立ち、まるで貴族の権威そのものを示すように広々とした敷地を囲んでいる。
石畳の道の両脇には品よく手入れされた植え込みが続き、噴水らしき音がかすかに耳に届く。以前と変わらず、いや、むしろさらに磨きがかかったような庭は、美しさと同時にどこか近寄りがたい雰囲気さえ漂わせていた。
正面の大扉に続くアプローチは、敷き詰められた石畳が光を受けて淡く輝いている。その先に見える屋敷は、漆喰の壁面に繊細なレリーフが施され、屋根の縁を彩る飾り金具が陽の光を反射してまばゆくきらめく。
窓枠やバルコニーの欄干には鉄の装飾が施されていて、どれも流麗な曲線を描きながら、まさに“貴族の家”と呼ぶにふさわしい高貴な雰囲気を放っていた。
広い庭には噴水や彫像が配され、使用人が行き来する姿がちらほら見える。実際に中に入ってみると、その庭の向こうに別棟があるのがわかった。離れや倉庫らしき建物まで、どれも造りが整然としているあたり、屋敷全体が相当な財力を注ぎ込まれて建てられているのだろう。
そんな堂々たるアクシス家の邸宅を眺めながら、僕は改めて自分の生まれ育った場所だということを実感する。豪華ではあっても、どこか冷たさを感じるのは昔から変わらない。表向きは完璧に整えられているぶん、なおさらそう思ってしまうのかもしれない。
僕たちを案内してくれているメイドも三人いて、前後を挟まれながら移動した。それにしても“奥様”と“お嬢様”か。アンダラとスネアがそこにいるってことだな……。
「お、大きな屋敷だね」
「そうだ、いえ、そうよね。本当随分とお金が掛かってそう、よ」
メイドの後についていきながらエクレアが目を丸くさせていた。それに僕も合わせて答えたのだけど、やっぱり女性の言葉を意識するのは難しくて、つい素がでそうになるよ。大人しくしてくれているスイムは本当に偉いなと思う。
「うむ。ま、相変わらず趣味はよくな――」
「わわっ!」
何かとんでもないことを口走りそうになっていたから慌ててウィン姉の口を手で塞いだ。メイドが訝しむ目でこっちを見てきたので僕とエクレアは愛想笑いでごまかした。流石にここで屋敷のことを悪く言うのは不味いよ。
「も、もう気を付けてよ」
「う、うむ。すまないつい――」
ウィン姉にそっと耳打ちした。済まないって顔はしてくれたけど本当言動には注意しないとね。ただでさえ屋敷のメイドは特殊なのだから怪しまれると厄介なことになる。
幸いなことにメイドが僕たちに何か言ってくることはなかった。そして向かった先はドレッシングルーム。
目的はメイクだから、当然通される部屋はここになるわけだね。メイドが扉を開けると化粧用に設置された鏡台が並んでいた。設置された椅子も含めて豪華な意匠が施されていて綺羅びやかな金銀や宝石も豊富に取り入れられている。
部屋の奥にはカーテンで閉められている。あの中には大量のドレスが収納されているのだろう。鏡台には椅子を腰掛ける二人の姿があった。こちらには背を向けている状態で、メイドがツカツカと二人に近づいていく。
「奥様、お嬢様、おまたせいたしました」
メイドが声をかけると背中を見せていた二人が立ち上がり、振り返った。この二人の顔を見るのも随分と久しぶりな気がするよ――
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