第249話 作戦決行の日
「準備はいいね。特にネータは仕草に気をつけて」
「う、うん。わかったよ」
「ネータ」
「あ! わ、わかりました。自然になるようが、がんばる、ね」
マキアに睨まれて僕は言葉遣いを修正させた。何故なら今日の僕は女の子として振る舞わないといけないからだ。マキアもそれがわかっているからネロではなくて偽名のネータとして呼んでいるわけだしね。
特に今日向かうのはアクシス家。認めたくないけど僕の実家だ。マキアは僕が気づかれないようにとメイクも決めてくれたし、髪の毛もウィッグで伸ばしている。
正直このヒラヒラした服装はなれないし、下半身もスースーするけど、なんとかやりきらないといけないんだ。
「うぉおぉお! 我が愛しの弟、いや妹よぉおお!」
「ななッ!?」
部屋から出てきて僕を見たウィン姉が僕に飛びついてきた。突然のことで驚いたよ。そんなウィン姉も今日はバッチリと男装で決めている。これがまた本当によく似合っているんだ。
「本当、ネータとウィズは仲が良いよね」
部屋から出てきたエクレアが僕たちを見ながら笑みを浮かべた。ウィン姉はこの街ではウィズという名前にしているんだよね。
「羨ましい。師匠とアイも戯れたい」
「甘いぞ。弟子を名乗るなら禁欲も大事なのだ」
「むぅ、仕方ない。が、我慢する!」
アイスが悔しそうに答えた。ちなみにアイスはアイという名称で通すと昨日マキアが言っていたね。そんなアイスもウィン姉と同じく男装している。
「えっと、私はクレアでいいんだよね」
「そう。私とザックス以外は偽名で通すから気を付けてね」
エクレアの問いかけにマキアが答えた。マキアとザックスはアクシス家との関係性が低いし、そもそも仕事を受けたのはマキアだから偽名を使う必要がないからね。
「皆は私のサポート役としてついてきていることになっているから、アクシス家についてからも少しの間は仕事を手伝ってもらうことになると思う。ネータは色々思うところがあるかもだけど我慢してね」
「うん。それぐらいなら耐えてみせるよ、いえ、耐えて見せるわ!」
うぅ、言葉遣いには慣れないね。それにアクシス家には確かに思うところがある。ガイのこともあるわけだし。だけど、ここでボロをだすようなことになれば全てが水の泡だ。
そんなことになれば協力してくれた皆にも申し訳ないからね。
「優先はガイの救出。その為ならなんでもするわ」
「スピィ~」
僕の服の中でスイムが鳴いた。そんなスイムを服の上から撫でてあげる。
「スイムちゃんもここから先は声を出さないよう気を付けてね」
「ス、スピィ~」
スイムもちょっと寂しそうだけど事情は理解してくれている。だからこそ今のうちに撫でておきたいね。
「それじゃあ!」
マキアがキリッとした顔で声を上げた。いよいよ出発なんだね。
「朝食を食べてから出発よ!」
と、おもったら先に朝食だったよ! ずっこけそうになったよ!
「何だよ姉ちゃん。てっきりもう出るかと思ったぜ」
「バカね。これからが大事なんだから、お腹はしっかり満たしておくのよ」
ザックスも突っ込んでいたけど、その後のマキアの答えは納得の出来るものだった。確かにお腹が減っては戦は出来ないからね。
だから僕たちはしっかり朝食を食べてからアクシス家に向かうことにしたんだ――




