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【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第八章 救いたい仲間たち

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第247話 何故紋章は消えたか

 後ろ髪引かれる思いはあったものの、僕たちは広場を離れて近くの店に入った。ここは紅茶専門店でケーキや焼き菓子の提供もしている。


 正直のんびりしている場合じゃないという思いもあったけど、マキア曰くこういうときだからこそ紅茶でも飲んで気持ちを落ち着かせた方がいいとのことだった。


「少しは落ち着いたかい?」

「は、はい。でも、やっぱり釈然としない。どうしてガイの紋章が消えて、あのギルという男に勇者の紋章があるのか」

「でも、確か勇者って一人じゃないんだよね?」


 僕の疑問に対してエクレアが問うように言った。それは確かにその通りなんだ。


「うむ。勇者の紋章は希少ではあるが、世界で見ればそれなりの数がいる。ただ、元々あった勇者の紋章が消えたなんて話は聞いたことがない」

「確かにな。だけどよぉ、それが消えたってことはガイに勇者の資格が無くなったってことか?」


 ザックスの発言に僕はどう答えていいかわからなかった。ガイに勇者の資格がないなんて――


「このバカ!」

「痛ッ! なにするんだよ!」

「お前にはデリカシーってもんがないんかい!」

「アイス。あの男を凍らせていいぞ」

「わかった。百回凍す!」

「いいぞやれ!」

「やれじゃねぇよ! いや、本当勘弁してくれ!」


 アイスに詰め寄られザックスが慌てていた。結局凍らされはしなかったけどね。


「ガイは口は悪いし、わりとすぐに手は出るし、依頼人と喧嘩になったりしたこともあったけど、勇者の資格がないなんてことはないよ」

「いや、それって結構ダメな方じゃ、あ、いえ、なんでもないです……」


 マキアに睨まれてザックスが発言を撤回したよ。


「ガイは確かに乱暴なところもあるけど、仲間思いだったんだ。それは間違いないしそれに芯もしっかりしていた」

「スピィ~」

「うん。それに勇者の資格がないような人にフィアやセレナがついていくわけないもんね」


 スイムも僕の意見を肯定してくれていて、エクレアも笑って答えてくれた。そのとおりだよ。ガイが本当に勇者の資格がない悪人ならフィアやセレナともとっくに縁が切れていた筈だ。


「そもそも勇者としての資格がないから消えたという考えは捨てた方がいいだろう。こういっては何だが、かつては勇者の紋章を持ちながらも悪事に手を染めたのもいたようだが紋章が消えたという話は残ってないのだからな」

 

 ウィンがザックスの話に否を突きつけた。だけど、勇者の紋章を持っていて悪い方向に進む、そういう人も中にはいたんだね。


「だったら何が原因だっていうんだよ」

「お前、師匠に向かってその口の聞き方、そんなに凍されたいのか?」

「待て待て! 俺はちょっと疑問に思っただけだよ!」


 アイスに睨まれてザックスがヘビに睨まれたカエルのようになってるよ。でも、確かにウィン姉の言う通りなら、どうしてガイの紋章が消えたのか。


「消えたのじゃなくて奪われたって考えたらどうかな?」

「え? 奪われた?」


 マキアの発言に僕の頭が疑問符で支配された。紋章を奪う? そんなこと可能なのか? でも、確かにそう考えるとしっくりくる気もする。


「ふむ。紋章を奪う力など私も聞いたことがないが、だからといって無いとは言い切れないか」

「でも、そうなると奪ったのはもしかして……」


 ウィン姉の反応を見ながらエクレアも顎に指を添えて考えた。それは僕も思ったことだ。


「奪ったのはギルかもしれない、ということだね」

「スピィ……」

 

 肩の上でスイムが細く鳴いた。奪うということに忌避感を覚えているのかも知れない。


「だとしたらギルに話を聞くのがいいのかな」

「それは早計ね。そもそも簡単に教えるとは思えないし、焦って本来の目的を忘れるのは危険。今一番大事なのはガイを助けること。そうでしょう?」

 

 マキアに言われて僕もハッとした。確かに今一番やるべきことはガイを助けることだ。


「おい聞いたか。偽勇者の処刑が三日後に決まったようだぞ」

「あぁ、さっきの広場で決定していたようだな」


 店に入ってきた客がそんなことを話していた。僕の心がざわつく。


「それは本当なの!」

「お、なんだ?」

「たく、なんだよ突然、て、へぇ君可愛いねぇ」

「え?」


 ガイの話を聞いて思わず客の二人に確認してしまったけど、何か妙な目で僕を見ているような。


「えっと、処刑の事を聞きたくて」

「いいぜ教えてやるから、ちょっと一緒に遊ぼうぜ」

「いや、僕は!」

「へぇ、ボクっ娘かぁ。いいねぇそういうのタイプ――」

 

 男たちが話している途中でその言葉が止まった。一本の剣が間に割り込んだからだ。


「私の大事なお、いや妹に手を出すとはいい度胸だな。そんなに切られたいか?」

「ヒッ!」

「そ、そんな滅相もない。俺たちもう出るからさ」

「まぁまぁ、それよりも処刑の日程は本当なんだよね?」

「え? えっと」

「早く言え! 凍すぞ!」

「ひぃ、ほ、本当ですよ! 今さっき確認したし、広場に日付の書かれた案内板も立ってますから!」


 そこまで話して二人が一目散に逃げていった。その後広場で確認したけど、確かにそこには三日後に処刑と書かれていた――

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