第240話 広場に集まった者たち
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「皆、広場に向かいたいんだ。いいかな?」
「スピィ~!」
「そうだね。行こう!」
「愛弟がそういうなら当然私は付き合うぞ!」
「師匠が言うならアイも行く!」
「後の二人が受動的すぎるだろう」
「そういうこと言わない。それより私たちも行くわよ」
皆、僕に付き合ってくれることになった。マキアは仕事があるという話だったのに、何か申し訳なくもあるけどとにかく今は急いで広場に向かいたい。
「ネロ、逸る気持ちはわかるけど絶対に感情的になったらダメだからね。変装しているとは言え下手なことをしたらバレる可能性だってあるんだから」
「う、うん。わかってる」
「スピィ……」
マキアから忠告を受けた。当然僕もそれは気をつけないといけないと思っている。スイムも心配そうにはしてるけどね。でもそこでヘマしたらここまで導いてくれたマキアにも申し訳ないし。
僕たちは街の中心にある広場に向かった。過去に暮らしていたから知っているが広場は実際かなり広い作りだ。だけど今回は広場の真ん中に壇のような物が出来ていた。
前はなかったけどわざわざ作ったのか。階段も設けられていて、壇上からはこちらを見下ろす形となるだろう。
「ガイ――」
しばらくすると広場にガイがやってきた。ガイの前にいるのはマイト家の当主、つまりガイの父親である男の姿。名前は確かグラン・マイトだったはず。
だけどその父親がガイの枷に繋がった鎖を握りしめていた。ガイは俯き加減にその後ろについて歩いている。ガイの背後にはローブ姿の何者かがいて、更にそこから数歩離れて天をつくような水色の髪をした少年(?)の姿。小柄だが目つきは鋭くどことなく既視感がある。
「クール兄さん――」
アイスの呟き声が聞こえた。そうか、あれがアイスの――そう言われて既視感の正体がわかった。かつて僕に襲いかかってきたアイスの目にそっくりだったからだ。とても冷たい温度の抜けた瞳――その後ろにはメイド姿の女性もいた。
あれは一体? そして少し遅れるようにしてやってきたのは――
「ギレイル・アクシス――」
思わず声が漏れた。砲金色の髪に蓄えられた顎髭。一見すると鷹揚とした雰囲気を感じさせるけど、目の奥には冷淡な光が宿っている。あれが一度は僕が父親と呼んだ男だ――
壇上に上がったのはギレイルにグランとガイとローブ姿の何者かであり目深にフードを被っていて顔は確認できない。
下ではクールとメイド服姿の女性が立ち目を光らせていた。不審な者がいないかチェックしているのかもしれない。
「先ずはこの場を設けてくれたギレイル・アクシス様に御礼を――」
最初に声を上げたのはグランだった。ギレイルに向けて頭を下げていた。ギレイルは寛大そうな振る舞いを見せるが一体何を企んでいるのか――
そして今度はグランが聴衆に向けて頭を下げた。
「この度は愚息がとんでもない事件を引き起こしてしまい、仮にも父親だった身として申し訳なく思う」
父親だった身? なんだか引っかかる言い方だった。あの男がガイの父親であることは間違いないと思うのだけど――
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