第238話 アイスとクールの関係
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「いやはや、大したものだねぇ。でもこれ、中身は大丈夫なのかい?」
氷づけになった騎士たちを見上げ、拳でコンコンっと叩きながらマキアが聞いた。大丈夫とは命はという意味だと思う。
「溶けてしまえば命には別状はない。だけど寒さで溶けた後も暫くは動けない」
アイスが堂々と答えた。どちらにしても足止めとしては十分ということらしいね。
「まぁこんな連中死んだところでどうでもいいがな」
腕組みしながらウィン姉が言った。ぶ、物騒な物言いだね。
「師匠がそう言うならすぐにでも砕く!」
「待て待て! 下手なことしたら問題が大きくなっちまうだろうが!」
アイスが拳を握りしめ鼻息を荒くさせるもザックスが必死に止めていた。確かにそんなことしては余計な刺激を与えかねないからね。
「ウィン姉! 流石に砕くのは不味いよ!」
「ムッ、愛弟が言うなら確かにそうか。アイスやめろ」
「承知しました師匠!」
やる気満々だったアイスが拳を引いてくれたよ。ウィン姉に対する忠誠心が凄い!
「……いい加減しんどい。こんなことが暫く続くのかよ」
「アハハッ、まぁ諦めなって」
「誰に巻き込まれたと思ってんだ!」
ポンッと肩を叩くマキアにザックスが叫んだ。ハハッ、でも御者が出来るザックスがいてくれて助かっているけどね。
「ところでアイス。そのクールというのはもしかして?」
僕は思い切ってアイスに聞いてみた。話の流れで二人の関係はなんとなくわかった気はしたけどね。
「――クールはアイの兄」
ポツリとアイスが答えた。やっぱりそうだったんだね。
「でも、どうしてお兄さんがここに?」
「スピィ?」
エクレアからも質問が飛んだ。そこを疑問に思うのは当然かもね。スイムも不思議そうにしているし。
「――アイの家はアクシス家から援助を受けている。だけど、その見返りに仕事を押し付けられることも多い」
アイスがそう答えた。そう言われてみればアイスが僕の命を狙ってきたのもアクシス家の差し金だったんだよね。
そう考えたらアイスの兄であるクールがアクシス家についているというのも納得出来るかもね……。
「騎士たちはアクシス家についていると言っていたけど、やっぱりこれから向かう先にいるのかな」
「多分――もしかしたら護衛として雇われているのかもしれない。だったらかなり危険」
僕の疑問にアイスが答えた。その顔には焦りが見えたよ。
「そのクールというお兄さんは強いの?」
「――強い。兄さんは私なんて足元に及ばないほど。絶対に手を出してはいけない相手」
アイスがはっきりと答えた。あれだけの腕を持つアイスが足元に及ばないなんて――
「とにかく兄さんと戦うのは避けたい。もしいても見つからないように行動する」
アイスが真剣な目で言った。確かに余計なトラブルは避けたいし、争いにならないならそれに越したことはないよね。
「ま、ここであれこれ言ってても仕方ないからね。とにかく先を急ぐとしようか。ザックスまた頼んだよ」
「へいへい。ここまできたら乗りかかった船だどうとでもなれ!」
そして僕たちは改めて馬車に乗り込んでアクオルを目指した。馬車を走らせ続けて時は進み――
「見えてきたぜ。アクオルだ。いよいよ街に入るぜ」
ザックスからそう声が掛かった。いよいよ到着だね。この街に来たのも久しぶりだけど果たしてガイは今どうしているのか――
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