第237話 クール
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「お前もちょっと黙ってろよ」
「く、くそ!」
ザックスが残った一人の騎士を地面に伏せさせ動きを封じた。これで残りはアイスの正面にいる騎士だけだね。
「なんでお前がその名を知ってる――」
改めてアイスを見るとクールという名前を発した騎士に問いかけていた。アイスの氷のような視線が騎士を射抜く。
「貴様、知っているのか。まぁ有名だからな。代々から氷の一族として知られるブリザール家。その中でも圧倒的な魔力と強力な氷の魔法を扱う天才――」
残った騎士が語り始めた。だけどブリザール家、それってアイスの家名と一緒だよね。ということは――考えを巡らせる僕を他所に騎士の話は続いていく。
「その上性格はまさに氷の如く冷徹で残虐、その魔法は全てを凍てつかせるとまで言われている。故に奴についた異名は銀徹の魔王――」
「違う!」
得々と語る騎士の言葉にアイスがムキになって叫んだ。何か気に触ることがあったのかもしれないよ。
「何だ貴様? そんなムキになって。まぁいい。その魔王が今回アクシス家についているのだ。ククッ、それがどういうことかわかるか? 我らに楯突くということはお前らは銀徹の魔王に睨まれたも同然ということ――」
「黙れ。もういい十分――凍え」
「危ない!」
アイスが手をかざしたその瞬間、僕は危険に気がつき飛びついた。アイスを庇いながら地面を転がると同時に地面が弾けた。
「クソ! 外したか!」
アイスと対峙していた騎士が悔しそうに叫んだ。随分と細かく説明しているなと思ったけど、どうやら森の方にも仲間が隠れていたようだよ。アイスの隙をついて魔法で攻撃を仕掛けてきたんだ。
しかも複数人いるのか次々と火の礫や風の刃、巨大な岩などが僕たちに向けて降り注いだ。僕は急いで起き上がった。
「フンッ、鬱陶しい」
流石ウィン姉だよ。相手の強襲もなんのその魔法を避けつつ岩は切り飛ばしてしまっている。
「水魔法・水守ノ盾!」
一方でこっちにきた魔法は僕の盾で防ぐことが出来た。だけどこのままってわけにはいかないね。
「あの一帯を水浸しに出来る?」
エクレアが森を指さして僕に聞いてきた。そうかなるほどね。
「任せて! 水魔法・水濃霧!」
僕が森に向けて魔法を行使すると霧が発生し森を覆った。
「な、なんだ! 視界が!」
「霧だと? なんで突然?」
慌てる騎士の声が森から聞こえてきた。まさか霧が発生するとは思ってなかったんだろうね。
「今だよエクレア!」
水浸しというわけではないけど霧でも効果は十分だからね。
「流石だよ! いくよ! 武芸・雷撃槌!」
エクレアが森に向けて跳躍し霧に向けて鉄槌を振り下ろした。同時に発生した落雷によって霧内に電撃が迸り騎士たちの絶叫が響き渡った。
「な、なんだ貴様何をした!」
「水は雷をよく通すんだよ。知ってた?」
「水、だと? つまり今のは水魔法――さては貴様!」
「はい、そこまで」
「ギャッ!」
いつの間にか騎士の後ろに回り込んでいたマキアがその頭に石を振り下ろした。殴られた騎士は倒れ完全に意識を失っているよ。
「ふぅ、これで大丈夫だね。皆ご苦労さま」
親指を立ててマキアが二カッと笑った。うん、確かに騎士たちは排除出来たね。
「一先ずは問題ないけど、この騎士たちどうしようかな……」
「スピィ~」
僕の発言にスイムも確かにといった顔で体を捻った。このまま放置していても意識を取り戻した後で街までやってきちゃうかもだからね。
「――それなら問題ない。全員一箇所に纏める」
そんな僕の疑問に答えるようにアイスが言った。彼女が言うように手分けして騎士たちを運んで一箇所に纏めたよ。森に潜んでいたのも合わせると騎士は八人いたようだね。
「氷魔法・氷結の棺――」
そしてアイスが魔法を行使すると騎士たちが氷に閉じ込められたよ。
「その魔法見るだけで震えてくるぜ」
言ってザックスが肩を震わせた。い、いったい何があったんだろうね――
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