第236話 不埒な魔法騎士団
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「ほう――これはこれは」
僕たちが馬車から降りると魔法騎士団の騎士たちが値踏みするように見てきた。正直言って気分が悪い。
「随分と上玉が揃ってるようだがこれで何をするつもりなんだ?」
「あはは――説明しましたよねぇ。聞いてなかったのですかぁ?」
「おいおい――」
騎士の一人が発した言葉にマキアの額に青筋が浮かび上がりピクピクと波打っていた。言葉にも棘があるし彼らの態度を不快に思っているようだね。それを見ているザックスが不安そうにしている。
「ふん。メイクアップだが何だか知らないが今は大事な時期だ。特にアクオルでは裏切りの勇者の処刑が近いからな」
裏切りの勇者――ガイの事だ!
「あ、あの裏切りの勇者って何のことですか?」
今の発言が気になってつい聞いてしまった。出来るだけ女の子を意識した口調でね。
「ふ~ん。君、興味あるのかい?」
騎士団の一人が僕に近づいてきて問いかけてきた。若い男性の騎士で僕を見る目が妙にネットリしている気がして背中に悪寒が走った。
「可愛いよね君。この出会いが運命だったりしてね」
すると若い騎士がそんなことを口にして僕の腕を取り手の甲に唇を近づけてきた、て、ヒィ!
「痛ッ!」
だけど、唇が手の甲に触れる直前にパァアンという快音が響き渡った。見るとウィン姉が騎士の頬を引っ叩いていたんだ。
「き、貴様何をする!」
「……見ろ、蚊だ。これは怖い生き物だ。どんな病気を持っているかわかったものじゃない。刺される前で助かったな」
そう言ってウィン姉が手を広げた。事前に潰していたのかはわからないけど確かに小さな蚊が張り付いていた。
「貴様! そんな言い訳が通じると思ったか!」
「まぁまぁ、実際蚊がいたわけだしここは穏便に」
怒りに震える騎士たちに向けてマキアがどうどうと宥めようとしていた。だけど騎士たちの表情は険しい。
「――いいだろう。女もいるしな。こっちも手荒な真似をするつもりはない。だから全員脱げ。それで隅々まで検査して問題なければ通してやる」
「それはいい。是非やろう」
「こっちは一発殴られてるんだからな。その分しっかり教育してやらないとやってられないぜ」
「な、何よそれ。それでも騎士なの?」
騎士たちのとんでもない発言と下卑た笑みを見てエクレアが顔を引きつらせていた。そんなエクレアを嫌らしい顔で見る騎士にも苛立ちを覚える。
「さぁ、さっさとしろ!」
「はぁ~アホらしい。こっちが下手に出てれば本当にどうしようもないなあんたらは」
「は?」
脅迫じみた命令をしてくる騎士にマキアがはっきりと言い放った。その言葉に他の騎士も怪訝そうな顔を見せる。
「貴様、何を言っているのかわかっているのか!」
「わかってるわよ。正直もう面倒なんだけど、あんたらならこの連中黙らせることが出来る?」
マキアが言った。これはつまり僕たちが戦えるかと聞いているんだね。
「いいぞ。実にわかりやすい。正直こっちも腸煮えくり返ってどうしてくれようかと思っていたところだ」
「全員漏れなく凍す!」
「はぁ~結局こうなるのかよ」
ウィン姉とアイスはやる気満々なようだね。ザックスはやれやれといった様子だけどね。
「ネロ、じゃなくてネータ。ここはもうやるしかなさそうだね」
「うん。そうだね」
「何だ貴様ら? 我らアクシス魔法騎士団に逆らうとグボォ!?」
騎士の一人が声を上げるも言い終える前にウィン姉の膝蹴りが顎を捉えていた。騎士の体が舞い上がりそのまま地面に叩きつけられる。
「こ、こいつら、手を出したな! もう後戻りは出来ないぞ!」
「黙れ、凍えろ――氷魔法・氷結の棺」
アイスが騎士の前に立ち、魔法を行使した。騎士の足元に冷気が纏わりつき氷が広がりやがて騎士の体を覆い尽くしていく。
「あ、あああ、うぁあああああああああああ!」
悲鳴と絶叫が響く。体を徐々に凍らせながら騎士の全身を包み込みやがて氷の中に騎士が閉じ込められた。
「こいつ、氷魔法だと!」
「あのクールと同じ魔法か!」
「え?」
アイスの魔法を見た騎士が発した言葉――それにアイスが反応したんだ。でもクールって?
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