第235話 マキアの目的地
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いよいよ僕たちはアクシス領に入ることが出来た。それからしばらく馬車が走るのだけど僕は一つ気になることがあって聞いてみることにしたんだ。
「そういえばマキアさんはどこまで行くのですか?」
アクシス領は広い。この領内だけでも幾つかの町と村があるんだ。僕たちの目的は自然とアクシス家が居を構えるアクオルになる。
アクオルはアクシス侯爵領の中心地となる大きな町だ。ガイはアクシス家に捕らえられているので目的地は自然とそこになる。
だからマキアの目的地次第ではそこからの移動手段も考える必要があるよね。
「安心しなよ。私の目的はアクオルの町さ。あんたたちもそうなんだろう?」
驚いたことにマキアの向う先は僕たちと一緒だった。でも今回の件で色々バタついているであろうアクオルで仕事があるなんてね。
「アクオルの誰が商売相手なのだ?」
それを聞いたのはウィン姉だった。目的が一緒だとして一体誰に頼まれているか気になったようだね。
「それは秘密だよ。顧客情報はそう簡単に漏らせないからね」
そう返しマキアがウィンクを決めた。何だろう? 何か依頼相手を隠すことを楽しんでいるようなそんな雰囲気だよ。
とは言えそう言われてはこっちも無理して聞けないからね。それからは他愛もない雑談を交えながら馬車は走り続けたのだけど――
「姉ちゃん。何か面倒くさそうな連中が屯してるぜ」
ふと御者台のザックスから声が掛かった。何かなと思っているとウィン姉が小窓から外の様子を確認した。
「むぅ。アクシス魔法騎士団か」
ウィン姉が呟いた。アクシス魔法騎士団――アクシス領で活動する騎士団の事だ。
「マズいね。私たちに気付かれたら面倒そうだし上手く撒けそう?」
マキアが小声で御者台のザックスに伝えた。この状況で面倒事は避けたいところだよね。
「もう遅いぜ。向こうからこっちに近づいてきた。下手に逃げたら却って怪しまれる」
緊迫した声でザックスが答えた。魔法騎士団に目をつけられたって事か。本当なら逃げられたらいいんだろうけど、それで怪しまれてアクシス家に伝わったら本末転倒だからね。
「仕方がないわね。下手なことはしないほうがいいと思うし、とにかく事前の打ち合わせ通りに振る舞って乗り切るしかないわね」
そう言ってマキアが僕たちに目配せをしてきた。
「まったく面倒な奴らだ」
ウィン姉が、さも嫌そうに吐き捨てた。エクレアが苦笑いを浮かべているよ。そうこうしている間に馬車が動き止めた。
「アクシス魔法騎士団だ! 貴様こんなところで何をしている!」
魔法騎士団の誰かが声を張り上げた。声に棘を感じるね。
「いや、何をしてるってこっちは仕事の為に馬車を走らせていただけですよ」
「怪しいな。中には誰かいるのか? いるならとっとと降りてこい!」
ザックスが応対しているけど、やっぱり簡単にはいかないようで、魔法騎士団が僕たちに降りるよう促してきた。それにしても随分と横柄な態度だよね――とにかく言われるがまま僕たちは一旦馬車を降りることにしたんだ……。
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