第228話 レイルのこと
「そういえば坊主。ロイドは――死んじまったようだな」
ウィン姉とお酒の話で盛り上がっていたワンだったけど、急に真面目な顔になって例の事について触れてきた。やっぱりワンの耳にも届いていたんだね。
「うん……試験中にね。残念だけど」
「フンッ。自分から勝手に条件付きつけて来た癖にな。全く勝手な奴だ」
そういいつつもワンの表情は浮かなかった。勝手なことを言ってワンやロットを困らせていた男ではあったけど、死んだとなれば思うこともあったのかもしれない。
「そういえばロイドの事は冒険者ギルドから情報があったのですか?」
エクレアが聞いた。情報源は少し気になるところではあるかもね。
「いや、レイルというあいつの兄がやってきてな。そこで聞いた。意外にも謝罪までしてきてな。金も払おうとしてたがそれは断った」
「え? レイルが?」
驚いた。確かに僕たちの下にも一度来ていたし情報もくれたりしたけどノーランドにまで来ていたなんてね。
「レイル――ここにも来てたんだね」
「あぁ。確かガラン工房にも行くって言っていたな」
「え? そうなんだ……」
ガラン工房と聞いてエクレアはなにか考えているようだった。エクレアの装備はガラン工房で改良して貰ったしレイルの事もあって気になるのかもしれない。
「後でガラン工房にも寄ってみようか」
「え? いいの?」
「うん。まだ時間はあるからね」
「ありがとうネロ」
エクレアが微笑んでお礼を言ってくれたよ。笑顔が良すぎてドキッとしてしまうよ。
「……ここは杖を作っているのか?」
「あぁ。ま、坊主のおかげでまた杖職人としてやらしてもらってるよ」
「…………」
アイスがワンに聞き、その後並んである杖を手にとってマジマジと見始めたね。
「アイスも杖が欲しいの?」
「べ、別にそんなことはない! 勘違いするな凍すぞ!」
「えぇ!」
「スピィ!」
なぜか機嫌をそこねちゃったみたいだよ! どうして!
「ほう? 私の愛弟に随分な口の聞き方だな」
「ハッ! ち、違う! いや、ごめんなさい師匠!」
「ウィン姉! 僕も別に気にしてないから!」
「スピィ~!」
ウィン姉の背中からゴゴゴッと炎が上がってそうな勢いだったからね。咄嗟にスイムと一緒にウィン姉を宥めたよ。
「お前らは本当騒がしいな」
「ご、ごめんなさい」
「フンッ、まぁいいさ。おい嬢ちゃんも杖が欲しいなら素材ぐらい用意してくるんだな。氷系の素材はただでさえ在庫が少ないからな」
「凄い。アイスが氷系の魔法を使うってわかったんですね」
エクレアがワンを褒めた。確かにワンはアイスとは初対面のはずだからね。
「それぐらい雰囲気でわかるってもんよ」
「うん。流石ワンだね。アイスも杖が欲しいならワンに頼めば間違いないよ」
「……で、でも……今はちょっと、持ち合わせがない」
あ、なるほど。費用の面で心配だったわけだね……。
「……フンッ。ま、氷系の素材は希少だからな。物によってはそれと交換で作ってやるよ」
「え? 本当か!」
「ま、素材次第だがな」
「わ、わかった! アイ! 今度集めて持ってくる!」
アイスが嬉しそうに答えていたね。うん、やっぱりワンはいい人なんだなぁと思うよ――




