第226話 時間までに何しよう?
「夕方までなんて待てない。アイの師匠に申し訳ない。どこにいるか答える!」
「そう言われても俺だってあの姉弟が今何してるかなんで知らねぇんだって」
「ちょ、アイス落ち着いて!」
アイが店主に詰め寄っているけどここで揉め事を起こすのはよくないからね! とにかくアイスを宥めることにしたよ。
「でも師匠が……」
「何を言っている? 愛しの弟がやめろといっているのだからすぐにやめるのが筋であろうが!」
「ハッ! も、もうしわけありませんでした師匠!」
ウィン姉に怒鳴られてアイスが謝っていたけど何でも僕基準で考えなくていいからね!
「こればかりは仕方ないよね。素直に夕方まで待とうよ」
「スピィ~」
エクレアがアイスの肩に手を置いて優しく語りかけた。スイムもピョンピョンしながらそれがいいよ~とでも言いたげに鳴いていたよ。
「あの、それならもしよければお爺ちゃんに会ってもらえると、きっと喜ぶと思うんです」
僕たちに時間が出来たことを知ってかロッドが僕たちにお願いしてきた。確かにあれからゴタゴタしていてワンとは会っていなかった。
折角ここまで来たんだから僕も会いたい。それにロイドの事も報告しないとね……。
「うん。そうだね食事をしてから折角だから寄ってみるよ。僕も会いたいからね」
「はい! ありがとうございます。きっとお爺ちゃんも喜びます!」
ロットが顔を綻ばせたよ。
「それなら私も折角だしガラン工房に行ってみようかな」
「うん。それならワンに会ってから行こうか」
「うん!」
「スピィ~♪」
夕方までにすることは決まったね。とにかく先ずは腹ごしらえだけどね。
「ほう。ここの料理は中々美味ではないか」
「ハハッ、褒めて貰えて嬉しいぜ」
ロットが運んできた料理を一口くちにするなりウィン姉が褒めた。確かにここの料理は美味しい。僕も好きな味だよ。
「まぁでもあの嬢ちゃんの食いっぷりが見れないのは少しさみしい気もするなぁ」
しみじみと語る店主に心が痛む。本当のことは言っていないけど、もしかしたら今のセレナは好きなものも食べられない状態にあるのかもしれないわけだしね……。
「ネロ、大丈夫?」
「スピィ~……」
セレナの話を聞いて僕の表情も暗くなっていたのかも。それを察したのかエクレアとスイムが気にかけてくれたのかもしれない。
「うん、僕は大丈夫。だけどやっぱり心配なんだ。だけど全てを同時には出来ない。今はウィン姉を信じてガイからなんとか助けないとね」
「うん! そうだね!」
「スピィ~!」
僕の言葉でエクレアが力強く頷きスイムも張り切った声で鳴いた。
「てか嬢ちゃん……温かいまま食べた方が美味いと思うんだが……」
ふとそんな声が聞こえて見てみるとアイスの頼んだ料理がすっかり凍ってしまっていた。アイスは凍った料理を食べてうんうん頷いているよ。
「元が良ければ冷たくても美味しい。流石師匠が褒めるだけある」
「お、おう。まぁ気に入ってるならいいか……」
どうやら冷えていても美味しいようでアイスは料理を褒めていたよ。結局店主もそれで納得してくれたみたいだ。
「アイス。その食べ方は料理してくれた人に失礼だぞ」
「ハッ! ご、ごめんなさい師匠つい!」
だけどウィン姉はアイスを叱っていたね。行儀が良くないと感じたらしくアイスも謝っているよ。
「なら温かいのも食べてみるのだ美味いぞ」
「う、師匠が言うなら――」
ウィン姉が差し出しがスープ皿からアイスが一口くちに運んだ。
「熱っ! あつつ、あつ! はふはふ、あつあつ、あつい~」
「うん? そんなに熱いかこれ?」
「えっともしかいてアイス猫舌?」
「うぅうっぅぅううう――」
エクレアの問いかけにアイスがコクコクと頷いていた。どうやらかなりの猫舌だったみたいだね。それで凍らせていたんだね。
何か悪いとは思うけどなんだか意外でちょっとほっこりしてしまったよ――




