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【WEB版】水魔法なんて使えないと追放されたけど、水が万能だと気がつき水の賢者と呼ばれるまでに成長しました~今更水不足と泣きついても簡単には譲れません~   作者: 空地 大乃
第七章 Cランク試験への挑戦

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第199話 新たなるゴブリン

 突然乱入したゴブリンは主と口にした。ということはこのゴブリン以外に誰かが? とは言えいまはシャドウのことも気がかりだった。


 ゴブリンに注意を向けつつ天井のシャドウも確認した。紫色の結晶――紫水晶といったところだね。


 彼女が天井から落ちてこないのは紫水晶によって上で磔にされているからだった。かなり高い天井なのにあそこまで吹っ飛ばすなんて。

 

 ただ胸のあたりが上下しているのが確認出来た。息はしているから意識を失ってはいるけど無事なようだ。


 ただ紫水晶の拘束は相当頑丈みたいで力技で救出するのは容易でないのが分かる。何よりこの高さだ。無防備で叩きつけられでもしたらただでは済まない。


「一つ聞きたい。お前は――」

「クラウザーだ」

「え?」

「我はゴブリンクラウザー。お前などと呼ばれるのは心外である」


 このゴブリン――プライドが相当高そうだよ。ここはあまり刺激しないように。シャドウのこともある。いまは彼女から興味が失せているようだし慎重に――


「黙れ。何がクラウザーだ。ゴブリン如きが生意気に、凍すぞ!」


 そんな僕の考えをふっ飛ばすようにアイスが声を上げた。自分の顔が強ばるのを感じたよ。


「ちょ! アイス駄目だってば!」

「スピィ~!」


 あまりにアイスが好戦的すぎる! 相手が何者かもわかってないのにそんなに喧嘩腰で行くなんて――


「アイスここはもっと慎重に」

「……悠長過ぎる。こっちは先制攻撃を受けている」


 アイスが眉を尖らせ言った。確かにシャドウのこともあるんだけど、こいつがゴブリンの一種だと言うならどうしても確認したいことがあるんだ。


「良いぞ。我は機嫌が良い。多少の無礼は許そうではないか」


 クラウザーがそう言って笑った。いきなり攻撃しておいて許すというのもどうかと思わなくもないけど、とにかくまだ話を聞いてくれそうだ。


「貴方はゴブリンクラウザーとの事ですが、それではいまこのダンジョンにあふれているゴブリンについて知っていますか?」


 とにかくあまり刺激しないよう先ずは下手に出てみる。まだ機嫌が良いようだしね。


「アッハッハ。知っているも何もここに生まれたゴブリンはすべて我の配下であるぞ」


 一笑いしクラウザーが答えた。まさかと思ったけどやっぱりそういうことだったのか。


「ということはゴブリンロードも貴方が?」

「であるな。我はゴブリンを超える高みの存在となった。だからこそゴブリンはすべて我の配下になることを望んでおる。この世の全てのゴブリンは我が手中にあり、我が駒なのだ」


 クラウザーが自慢げに答えた。確かにクラウザーはゴブリンにしては頭も良いようだ。そもそも本来のゴブリンは人語を介したりしない。その手で開いている本にしてもゴブリンとしてはありえない。


 ゴブリンはそもそも本など読めないのだから。


「あの――その本には何が?」


 とはいえ、クラウザーが一体何を読んでいるのか気になった。そんなもの気にしている余裕なんてない気もするけど、こいつがここのゴブリンを支配している存在なら少しでも情報が欲しい。


「これは我が主が与えてくれたもの。我の宝物だ」

 

 そう言ってクラウザーが開いていた本を閉じ胸の前に持っていった。その時に見えてしまった。クラウザーの右手の甲に刻まれた黒い紋章が――


「その紋章……まさか」

「紋章? 何を言っている? ゴブリンに紋章などあるわけがない」


 アイスが怪訝な表情を浮かべる。やはりそうだ。ただの飾りなんかじゃない。何故なら黒い紋章は本来は視えない不可視の紋章。特別な道具や能力がないと確認出来ない。

 

 だからアイスにも視えていないのだろう。だけどそれが何故か僕には普通に視えるんだ。それにしても相変わらず禍々しい紋章だ。


「ほう? これが視えるのか。それは実に興味深い」

 

 クラウザーの目つきが変わった。それは怒っていると言うよりも僕に対する興味――


「悦ぶが良い。貴様は我が捕まえ主の下へ連れて行くとしよう――」


 クラウザーが突如そんなことを言い出した。僕を連れて行くだって? でも謎の主の下に連れて行ってくれるというなら却って好都合かもしれないよ。


「――ムッ。この声、我が主!」


 すると突然クラウザーが耳を欹て何かに反応を示した。だけど僕には全くその声が聞こえない。一体誰の声を聞いているんだろう?


「――承知しました。考えが変わったぞ。主は我が貴様と戦うのを所望しておる。光栄に思うが良い。我が力をその身で味わえるのだからな」


 クラウザーがそう言って本を懐にしまった。この様子、どうやらこれ以上話を聞き出すことは無理っぽいね。戦うしか無いか――

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