表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/27

25 謎解きは夜食の前に(2)

 畑中が、再び首をかしげた。

「あら、歴史をさかのぼるのでしたら、一番最初は平清盛たいらのきよもりだと聞きましたわ」

 風太は笑ってうなずいた。

「さすがにコンシェルジュ、よくご存知ですね。ただ、清盛が埋め立てたのはもう少し東の方ですし、時代もうんと前です。三成の場合は、秀吉がこの地を平定した際、将来に備えて湾口わんこうの整備をまかされたのがきっかけです。遠浅とおあさなので、むしろ埋め立てた方が良いと考えたのでしょう。秀吉も、いずれこの地を三成に与えようと思っていたようですし」

 話の進展について行けず、広崎が「ちょっとちょっと」と割り込んだ。

「どうしたのさ、急に日本史の話になっちゃって。河童の話じゃないの?」

 風太は苦笑した。

「ごめんね。これからつながって来るからさ。ええと、どこまで話したっけ。ああ、そうか。ところが、何か事情があったらしく、この地は三成ではなく、小早川隆景こばやかわたかかげに与えられました。しかも、隆景は、随分東寄りのところに城をきずいています。まるで、西側には、何か遠慮しなきゃいけないものがあるみたいにね」

 広崎が「あれ?」と言った。

「小早川って、なんか聞き覚えがあるなあ」

 畑中が笑って「それはたぶん、隆景の養子の秀秋ひであきよ。関ヶ原で有名だから」と広崎に教えたが、言ってしまってから何かに気づいたらしく、ハッとした顔になった。

 風太がニヤリと笑った。

「そうなんです。隆景のあといでこの地の領主りょうしゅになったのが、秀吉のおいの秀秋です。ところが、秀吉のご機嫌きげんそこねてこの地を取り上げられ、直轄地ちょっかつちにされてしまいます。その直轄地の管理役がまた三成なんです。その後、家康の口添くちぞえで、再び秀秋がこの地に戻ります。まるで、シーソーゲームみたいでしょう。両者には、この地をめぐ確執かくしつがあったのは、間違いないと思います。そして、この小早川秀秋こそ、関ヶ原で西軍を裏切り、三成をほろぼした人物です」

 広崎が「えーっ」と驚きの声を上げた。

「それが、河童ののろいってこと?」

 だが、風太は首を振った。

「いや、ぼくにもそこまではわからない。しかし、秀秋が、絶対有利と言われた西軍を何故ギリギリのところで裏切ったのか、いまだに謎だ。しかも、関ヶ原の後、領地を変えられ、二年後に亡くなっている。まるで、もう用はんだ、という感じだね」

 広崎は体をブルッと震わせた。

「河童の力って、そんなに強いの?」

「いや、今よりいきおいがあったとしても、とても河童だけの力とは思えない。まあ、少なくとも三成は秀吉の懐刀ふところがたなだったから、それ以外にも何か魔界と関わりを持っていたかもしれないね」

 畑中が「どういうことですの?」とたずねた。

 風太は、またアルカイックスマイルを浮かべた。

「考えてみてください。信長や家康のような大名の子ではない、一介いっかい庶民しょみんにすぎない秀吉が、どうやって天下を取ったと思いますか?」

 広崎がめ息をきながら「なんか、スケールのでっかい話になっちゃって、ついて行けないや」とこぼしたので、風太が笑って「ごめんね」とあやまった。

「まあ、そういうわけで、今回の件に河童がからんでいるらしいと予測を立てた。しかも、一筋縄ひとすじなわでは行かない相手らしい。下手へたなことをすれば、取り返しがつかない。そういう理由もあって、ほむら丸だけじゃなく、同じ水妖のみずち姫も呼んだ方がいいと思ったんだよ」

「なるほどなあ」と感心した広崎の腹が「グーッ」とった。

 畑中が、ホッとしたように笑った。

「あらあら、あなたたち、おなかが空いてるんじゃないの?」

 風太も苦笑してお腹を押さえた。

「そういえば、夕方、サンドウィッチをまんだだけでした」

「よければ、わたくしが夜食をおごりますわ。伯父の言い方のおびと、事件を解決していただいたおれいと、そして、これを忘れちゃいけないと思ってました、なごみ会の理事長として来月のファミリー感謝祭の余興よきょう激励げきれいを兼ねて、ね。もちろん、広崎くんも一緒に」

「ありがとうございます。それでは、せっかくなのでお言葉に甘えます。やはり、豚骨とんこつラーメンですか?」

「いいえ、この時間に豚骨じゃ、胃にもたれるわ。わたくしのおすすめは、うどんよ」

「へえ、どんなうどんですか?」

美味おいしいんだけど、おどろくなかれ、全然コシがないのよ」

 そう言うと、畑中は声を上げて笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
博多のうどんってコシがないのですか?? 子供の頃に博多に行ったとき「皿うどん」を産まれて初めて食べて凄く美味しかった記憶がありますが、私の住む地域では「五目かた焼きそば」って言うことを後で知りました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ