表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/27

15 時空の断層

 一触即発いっしょくそくはつ危機ききすくったのは、室内電話ハウスフォンのベルの音だった。

 風太は二体の式神しきがみの間に割って入ると、わざとゆっくりした声で広崎に頼んだ。

「慈典、悪いけど、今ちょっと目が離せないから、電話に出てくれないかな」

「わ、わかった」

 広崎もホッとしたように受話器を取った。

「あ、いえ、広崎です。えっ、加山マネージャーが。はい、わかりました。ちょっと聞いてみます」

 広崎は、受話器を手のひらで押えた。

「風太、伊藤課長からだけど、加山マネージャーが高熱を出したらしい。早退するようにすすめたら、夜の現場検証まで待たないといけないからって、帰らないんだって。今は別室で休ませてるそうだ」

「ちょっとクスリが効き過ぎたかな」

「え?」

「いや、何でもない。すぐにぼくが行くから、部屋番号をいといて」

「わかった」

 広崎が部屋番号をたずねている間、風太は二体の式神の両方に向かってさとすように言った。

「聞いてのとおり、緊急事態だ。ぼくが行って処理しないといけない。君たちも、こんなところで本性ほんしょうき出しにしないで、一旦、隠形おんぎょう(=姿を見えなくすること)してくれないか?」

 ほむら丸はすぐに「御意ぎょい」とこたえ、炎を小さくちぢめて男の子のパペットに吸い込まれるように消えた。

 風太は、形をくずさない黒い大蛇に、君はどうするの、とでも言うように、笑顔で首をかしげて見せた。

「わらわはイヌめと同じふくろはイヤじゃ」

「そうか。じゃあ、ほむら丸、いや、ポールくんは慈典にあずけよう。慈典、いいかな?」

 いきなり話を振られ、広崎は驚いた顔をしたが、みずち姫よりマシだと思ったのか、「あ、ああ、いいとも」とうなずき、男の子のパペットをき上げた。ほのかにあたたかい。

「姫、これでいいかな?」

いたし方あるまいのう」

 黒い影のヘビも、スーッと女の子のパペットに吸い込まれた。同時に、部屋全体の冷気も消えた。

 女の子のパペットを自分のショルダーバッグにしまうと、風太は「で、部屋は?」と広崎に尋ねた。

「同じフロアだよ。ただし、今おれたちがいる北棟じゃなくて、南棟の方だ」

 二人は部屋を出ると、一旦エレベーターホールを通りすぎて、反対側の棟に向かった。

「こっちの奥のだよ」

 広崎について歩いていた風太の足がピタッと止まった。少し後退あとずさり、また、少し前に進んだ。

 自分の後ろにいたはずの風太がついて来ていないことに気づき、広崎は「どうしたの?」と声をかけた。

 風太は何故なぜか、部屋と部屋の間のかべを見つめ、「なるほど」とつぶやいた。

 風太がそこから動かないため、広崎が戻って来た。

「どうしたのさ?」

「あ、うん。ちょっと確認したいんだけど、42号室ってないの?」

「え? ああ、そうだよ。縁起えんぎが悪いからって、最初からつくらなかったらしいよ」

「全部の階で?」

「ああ、全フロアだよ。でも、番号が飛んでるだけで、別にかくし部屋があるわけじゃない。そんなに壁を見つめたって、ひび割れクラックがあるわけでも」

 ない、と言う前に、広崎の持っているパペットから「いや、ありまする」と声がした。

 広崎はビクッとして取り落としそうになり、あわてて持ち直した。

「われが魔界側よりこの建物たてものを見ましたところ、かなり大きなけ目がござりましたぞ」

 風太は、もう一度「なるほど」と頷き、広崎に訊いた。

「この真下をずーっと一階まで降りると、どのあたりになる?」

「うーん、コーヒーラウンジの奥辺り、かな」

 風太は歯を見せて笑い、右手の人差し指で壁をさした。

「ビンゴ!」

 一瞬、壁に人影ひとかげのようなものが浮かび、ユラユラとれながら消えて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なるほど!! ここで出た42号室のお話がポイントになってくるんですね! これは上手い構成で驚きました! これからどうなるのか楽しみで早起きして読んでいた甲斐もありました(^▽^)/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ