5.ハプニング。
新作ラブコメもよろしく。
「はぁ……」
昼休みの悶着があってから、一日は何事もなかったように進んでいった。
海晴は早退して、当然ながら麗華に接触することは叶わない。結局のところ二人の仲違いをどうにかしたい、と考えているだけで、俺では力不足に他ならないのだろうか。そんな鬱屈とした無力感で凹みつつ、俺はアパートに帰ってきた。
「とりあえず、風呂でも浴びてスッキリするか……」
しかし、いつまでも後ろ向きなままではいられない。
どうにかして気持ちを切り替え、明日以降どのように振る舞うかを考えなければいけなかった。
俺はそう思いながらアパートの鍵を開け、中に足を踏み入れる。
荷物を置いて、まずは湯船を張らなければ――。
「…………ん?」
――と、そこまできて。
俺は浴室から物音がしていることに気が付いた。
いったいなんだろう。昨夜使ったわけでもないのに、明かりもついていた。そんな不思議な事態につい首を傾げつつ、俺は警戒なしに扉を開ける。
すると、そこには……。
「ふんふんふふーんっ♪」
「…………」
視界いっぱいに広がる湯気。
小気味のいい鼻歌が耳に届くが、状況を理解するまで立ち尽くすことしかできなかった。相手方も心地よい時間に夢中になっているらしい。そんなわけで、俺の入室に気付いていなかった。
そうして、湯気が消えて見えた景色は――。
「…………おおう」
これは、男のロマンなのだろうか。
まだはっきりとしないが、そこにいたのは麗華だった。鼻歌を口遊みながら、彼女は湯船に浸かっている。もちろん一糸まとわぬ姿なのだけれど、これは……。
「ふんふ…………ん?」
「………………」
「………………」
そこで麗華の鼻歌は止まり、互いの視線がぶつかった。
――沈黙。
互いに何も口にせず、しばしの時間が流れて……。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
麗華の悲鳴が響き渡り、目の前にシャンプーの容器が――あがっ!?
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