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婚約者に婚約破棄され見捨てられた魔術師と「役立たず」と嘲笑った元パーティに追放された魔道士、最強となり異世界無双。  作者: 限界まで足掻いた人生


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第21話:最後の仕事と、華麗なる潜入

老婆の驚愕と真の依頼

救出した子供たちを住民の協力で安全な場所へ移した後、コウとサラは情報屋の老婆の店へと戻った。


コウは、氷漬けにしたヴェルトから回収した手帳と通信機を、カウンターに無造作に置いた。


「報告だ。Rブレッドクランの幹部、ナンバー9『蒐集家』ヴェルトを排除した。これが奴らの拠点データと、王族・勇者との癒着の証拠だ」


老婆は、パイプをふかしていた手を止め、目を見開いた。


「…おいおい。幹部の情報を探れとは言ったが、誰が**『排除』**までしろと言ったんだい? ナンバーズを二人だけで潰すなんて、あんたたち、何者だい?」


「ただの効率を重んじる魔術師と、その助手だ」


コウは淡々と答えた。老婆は呆れたように笑い、煙を吐き出した。


「気に入ったよ。なら、約束通り**『最後の仕事』**を頼もうか。これが、あんたらの借金のカタであり、この腐った王都を掃除するための仕上げだ」


老婆は、一枚の豪奢な招待状をカウンターに滑らせた。


「明晩、王城で開催される**『建国記念パーティー』。そこに、ヴィンセント王子と勇者ガゼル、そしてRブレッドクランのボス**が顔を揃える」


「ボス…?」サラが息を呑む。


「ああ。奴らの計画は最終段階だ。王子と勇者を完全に傀儡にし、国の実権を握るつもりだろう。あんたらの仕事は、このパーティーに潜入し、ボスの正体を暴き、その野望を粉砕することだ」


不器用なドレスアップ

パーティーへの潜入には、正装が必要だった。老婆は店の奥から、数着の礼服とドレスを出してきた。


「変装も兼ねて、着飾ってもらうよ。地味なままじゃ怪しまれるからね」


サラは、目の前に並べられた煌びやかなドレスを見て、尻込みして後ずさった。


「む、無理です! 私みたいな地味な女が、こんな綺麗な服を着たら…かえって浮いてしまいます! 笑い者になるだけです…」


かつて王宮で「地味だ」「華がない」と嘲笑されたトラウマが、彼女を萎縮させていた。


コウは、ドレスの中から一着の深みのあるミッドナイトブルーのドレスを選び出し、サラに押し付けた。


「サラ。それは非論理的な思考だ。潜入において最も重要なのは、周囲の環境に溶け込むこと。つまり、この場においては**『貴族として違和感のない装い』**をすることが、最も効率的なカモフラージュとなる」


「で、でも…」


「それに…」コウは視線を少し逸らし、早口で付け加えた。「その色は、魔力防御の術式を織り込みやすい。それに、派手すぎず落ち着いた色合いは、君の…その、本来の雰囲気を損なわない。つまり、機能的に最適だと言っている」


「コウさん…」


コウの不器用な言葉は、要するに**「君にはそれが一番似合う」**という意味だった。サラは頬を染め、小さく頷いた。


「わかりました。…着てみます。コウさんの、効率のために」


舞台は整った

翌晩。王城の大広間は、建国記念パーティーの熱気に包まれていた。


シャンデリアが輝く中、第二王子ヴィンセントは、令嬢リリアーナを伴って得意げにグラスを掲げていた。


「見たまえ、リリアーナ。我が国の経済は、私が主導した改革(実際はクランによる偽装工作)によって右肩上がりだ。あの地味な女を追放して正解だったろう?」


「ええ、さすがヴィンセント様ですわ! あの陰気な女がいなくなって、王宮も華やかになりましたもの」


一方、勇者ガゼルも、新しい治癒師フェリシアを連れて、貴族たちに自慢話をしていた。


「いやあ、最近のクエスト(実際は違法運搬)は順調でね! 魔術師の燃費の悪さが解消されて、俺の実力が完全に発揮できているよ!」


彼らは知らなかった。自分たちが語る成功が全て虚構であり、すぐ近くに破滅の足音が迫っていることを。


会場の入り口がざわめいた。 「おい、あのお二人はどこの貴族だ?」 「見たことがないが…なんて洗練された佇まいなんだ」


扉が開き、ドレスアップしたコウとサラが入場した。


コウは漆黒のスーツを隙なく着こなし、その冷徹な美貌を際立たせていた。そして、その隣を歩くサラは、ミッドナイトブルーのドレスに身を包み、控えめながらも凛とした、清楚な美しさを放っていた。


彼女の背筋は伸びていた。コウがくれた**「似合っている」という言葉と、「隣に立つ資格」**としての信頼が、彼女の地味な殻を破り、内側からの輝きを引き出していたのだ。


「行くぞ、サラ。ここからは敵地だ」


「はい。…コウさんのエスコートなら、怖くありません」


二人が歩を進めるたび、周囲の視線が吸い寄せられる。その中には、呆然と口を開けるヴィンセントとガゼルの姿もあった。


「な…なんだ、あれは…?」 「まさか…サラ、なのか…?」


かつて「地味」と捨てた女が、自分たちの隣にいる「華やか」なだけの女たちよりも、遥かに高潔で美しく見えたことに、彼らは動揺を隠せなかった。

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