■一同は話をしながら結果を待っていた。
「どうしたの?」
久遠が考えこんでいるようだったので、里奈が何を考えているのかを訊ねる。
「強制ログインゾーンを解除まで持っていったのはゲームがはじまって以来、僕たちが最初じゃないかって思うんだ」
危険だ危険だと言われるばかりで、そもそも夜に外出する機会そのものが少ないのだ。
「そうかもしれないけど」
となれば今回の件は快挙ということになるのだろうか。
「でもさ。久遠と里奈がいないと切り抜けられなかったと思うよ。だから、強制ログインゾーンの攻略を共有化できるかっていうと怪しいね」
これは明里の意見である。
「久遠はともかく私もですか?」
里奈は自分が必須だという事実に少し心が躍るのを感じる。
「スキル封印食らったらダメージ上限スキルも剥がされてただろ」
東京迷宮にはレベル上限もなければダメージ上限もない。そこでダメージを九九九九上限に抑えるスキルが存在する。
このスキルをすべての魔物が所持している。おかげでどれほど攻撃力をあげようともダメージ上限が九九九九になっていて、それ以上のダメージは与えられないことになっている。
「とりあえず強制ログインゾーンの攻略は誰でもできないことがわかったというのが収穫かな」
久遠が意見をまとめるように語る。瘴気への対策方法がなければ攻略は難しいということであった。
「そういえば行商人が出てきたんだけど――」
里奈はその時に行商人がしゃべった内容のログを久遠と共有する。
「三色烏か」
久遠の蒼烏に里奈の紅烏。他にもう一つ存在すると考えるのが筋だろうか。
「調べても行商人がそんなことを言ったって記録はないんだよ」
明里が攻略サイトなんかで行商人について調べたが、三色烏について言及した記録は一切なかった。
「フラグでも立ったかな……」
久遠はつぶやく。里奈にだけ聞こえる声でひっそりと。
会話がふと止み静けさが漂うようになる。そんな時だろうか。
晴が病室から出てきて、開口一番にこう言った。
「う、産まれた!」
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