■寒いながらも
『へぇ。久遠くん妹いたんだ』
真鈴は興味津々だった。
『甥っ子ができるって知ったらどうなるかな?』
「たぶん怒り狂うんじゃない」
里奈がこれまでの反応から類推する。
『その娘、可愛いの?』
「可愛いと思うわよ」
あんまり褒めすぎると自分が傷つくだけなので、このくらいで留めておく。
『会ってみたいなぁ』
きっと喧嘩になるだろうと里奈は思った。
『たしか他にも入ってきた子がいるのよね?』
「玲美と同じクランの男の子」
悠人の話は敢えてすまい。彼はあきらかに玲美に片想いをしている。それについて周囲は全面的に応援している。
それは玲美の久遠への依存度が高いせいで、とにかく久遠の近くにいることが多い。そのせいで久遠に近づきにくくなっている。もちろん半分はわざとだろう。
そこでさっさと男を作らせようとなっている。ところが、困ったことに悠人は良くも悪くもいい人である。しかし、だからこそ頑張ってほしいと思うのだ。
『里奈ちゃんも苦労しているんだ』
真鈴はおかしそうに笑う。
「あいつ、このままだと子供を何人作るかわかりませんから」
恨みがましく里奈は真鈴を睨む。それで気がついたのは真鈴のお腹である。本当に大きくなったと思う。
「もう七ヶ月だっけ?」
『そうよ』
「すっかり妊婦さんって感じね」
不思議な感覚だ。本当にこんな風に話せているのがである。里奈も当初はたしかに真鈴が鬱陶しい存在だと思うこともあった。
ところが、何度も話しているうちに悩みを打ち明けられるかけがえのない存在となっている。
いまでは真鈴のお腹から生まれるであろう久遠の子供を見るのが楽しみですらあった。
人間はこんな風にも感心することがあった。
「あ、そうだ。NPCがウチの寮に居候するようになったのよ」
時間が許す限り里奈は真鈴と話をしている。
そんな夜がもう少しだけ続くのであった。
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