彼は彼女に依頼をした
「僕には助けたい人がいる。それはここにいてはできないことなんだ」
自分を助けようともせずに他の誰かをなんて里奈は複雑な気分にさせられる。
「僕三月の戦士団を立ちあげたのは卒業式に出席したというだけで馬鹿にされて、どこのクランにも入れてもらえない。だったら自分で作れってやると思ったからだ」
最初は本当にそんな気分で作って、メンバーも集めたと翔は語った。
「僕はね。クランを運営しているとメンバーがいろんな悩みにぶつかるところを見てきた。それから少しずつ誰かの役に立ちたい、助けになりたいと思うようになった。でも、僕がやったのは卒業式に出たという子供たちをスカウトしてクランに入れるくらいさ」
それ以外は何もできなかったと語った。
「だから、僕は君にすべてを託したい。三月の戦士団の理念を君に引き継いでほしい」
里奈の手をなかば強引に取り、何かを握らせた。
「私にできるわけない」
「できるよ。君ならできる」
根拠などないはずなのに翔の言葉には確信が満ちていた。
「僕は君を助けるには力がない。だけど、君を助けて、君を必要とする人は必ずいる」
「やめてよ」
涙が里奈の視界を塞ぐ。
「君が東京を出るというなら僕は止めない。けど、君にはできれば東京に留まってほしい。それで一人でも多くの東京で困っている子供たちに手を差し伸べてあげてほしい」
翔は深々と頭を下げる。とてもではないが聞いていられなかった。
「もう、アンタの顔なんか見たくもない!」
里奈は立ちあがって、あらん限りの声で叫んだ。
「勝手なこと言わないでよ! 誰も私を助けてくれなかったくせに何で私が誰かを助けないといけないの! ふざけるなー!」
里奈は一通り叫んでから部屋を飛び出した。だが、翔は追わない。
かわりに彼がは里奈をクラン名簿から除名したのであった。
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